昭和生まれの平成懐古話第5回 「ラノベ事始」前編
さて。普通ならこの書き出しでラノベの歴史について語るところだと思いますが、懐古話シリーズはあくまで思い出話を綴る趣旨ですので、個人的なラノベとの出会いについて少し書かせていただきたいと思います。
今を去ること20と数年前。平成元年とか2年とか、それこそこれをご覧になっている方の中にはまだ生まれていないという方もおられるかも知れません。そんな頃です。
ちなみに私は当時中学生。
本シリーズ第3回で月刊コンプティークについて書きましたが、その誌上に掲載されていた富士見ファンタジア文庫の広告を見たのと、同じく月刊コンプティークつながりで水野良先生の『ロードス島戦記』を手に取ったのとが大体同じくらいでした。どちらが先かはよく覚えておりませんが、衝撃という点では富士見の広告のほうが、そしてその後長く縁が続くという意味では『ロードス島戦記』のほうが与えた影響は強烈でした。
ちなみに富士見の広告は『無責任艦長タイラー外伝1 銀河無責任時代』というタイトルがついておりました。当時既にクレイジーキャッツ(昭和のジャズ&お笑いグループ)が大好きだった私は、そのノリをSFに持ち込んだと思しきお話と、好みど真ん中である都築和彦先生のイラストに射抜かれて、近所の本屋へ突進して行ったのです。幸い、何軒めかで目指すものは手に入り、早く読みたいという気持ちから自転車をこぐのももどかしく焦って帰宅し、後はもう夢中になって読破しました。
この無責任艦長タイラーシリーズとの出会いで、私は「こんなおもしろい小説を自分でも書いてみたい!」と思い始め、以来ずーっと文章を書くことを趣味とし、だいぶ長い間小説家になりたいという夢を抱いて生きておりました。もちろん、今からでもなれるものならなってみたいという気持ちが心の中には隠しようもなく存在しておりますが。
タイラーシリーズを読んだ時の衝撃というのは、それほどまでに大きいものでした。それまで読んできた推理小説や歴史小説などとは明らかに違う、そしてまた漫画やアニメとも違う魅力が私を惹きつけてやまなかったのだと思います。
乏しい小遣いを割いて当時発売されていたタイラーシリーズを全巻そろえた上、ちょうどこの頃角川文庫から新たなレーベルとして独立した角川スニーカー文庫にも手を伸ばし、『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』『フォーチュンクエスト』『未来放浪ガルディーン』『聖エルザクルセイダーズ』等々、新刊本屋と古本屋とを行脚し倒してこれでもかこれでもかと買いあさったものです。
そのうち、好きなアニメのノベライズ(『ガンダム』のシリーズ各種、『機動警察パトレイバー』『天地無用』等々)にも飛びついたため私の部屋の本棚はどんどん大型化していきました。この頃の私は文字の暴飲暴食とでも言いましょうか、むさぼるように読んでおりました。
買って読んで買って読んでのコンボで蓄積されていく本の量はよくぞ床が抜けなかったものだと我が事ながら呆れるほどですが、それほどまでにのめり込んで楽しむことができた作品を送り出してくださった作家の諸先生方には感謝してもしきれないほどです。
と、記憶の湧き出るままに楽しく綴ってまいりましたが、以下は後編にて。
PR