台湾旅行記2010(オタ目線ver)2日目
疲れた胃には粥もあるし、しっかり食べたければベーコンやソーセージなどの肉類、洋風を楽しみたければパンも何種類か置いてある。
我々は飛ばしすぎないように最初粥から入って、徐々に胃が動いてきたところで大根餅等を追加し、最後やフルーツとヨーグルトにジャスミンティーでシメる。
さて。腹も満たしたところで、一路台北駅へ。今回は高鐵の終点までいくのが第1の目的。せっかくなのできっぷ購入は自動券売機にチャレンジしてみる。使うのは初めてだが、まぁ、この辺は私も長い事鉄オタをやっているのでなんとなく分かる。無事に8時54分発の速達型(停車駅の少ないほう)のきっぷが2枚買えた。
あまり時間がなかったので、飲み物だけ買ってホームへ。エスカレーターをおりた先にはお馴染み700T型が待っていた。
我々が乗って程なく列車は出発。隣の板橋までは地下だが、そこを過ぎてしばらくすると地上に上がる。そこから車窓に広がる緑と青の風景。これがたまらない。
いつもは台南までだったので各駅停車タイプしか乗った事が無かったのだが、今回初めて速達型ということで、駅を通過するところを初めて見ることができた。こういうのにワクワクするのは、もう病気なのでいくつになっても変わる事が無い。
ちなみにやってきた車内販売は、コーヒー紅茶にペットボトルのソフトドリンク各種、あとは台湾ビール2種にハイネケンという品揃え。個人的に面白かったのはアンパンが点心扱いでメニューに載っていた事。お値段は15元。
そんなわけであっという間の90分。定刻どおり列車は左営駅に到着した。ここからMRT橘線に乗って台鉄高雄駅を目指すわけだが、せっかくなので乗り換える前に駅構内を色々見て回る事にした。地元のお菓子屋さんがあるのはまだしも、改札内に電気屋?らしきものがあったのはちょっとギョッとした。
改札を抜けて外の景色を眺めてみると、小雨まじりの視界にPanasonicだの日立だの三越だのの看板が目立つのでどうしたもんかと思ってしまうが、やはりそれでも初めて見る街の景色はワクワクする。ついに「新幹線で来られる一番南」まで来たんだなぁ、と思うと感慨深い。
一旦構内に戻ってセブンイレブンで飲み物等を仕入れ、地下鉄紅線へと移動する。英語で「レッドライン」という名前らしいのだが、「くれないせん」って言う響きがカッコ良かったのでずっとそう呼び続ける。
台北の悠遊カードはここでは使えないので、自販機でトークンを買う。なにげにトークン初体験。日本の自動改札で言うところのICカードをあてる部分にトークンを近づけるとピッと音がして扉が開いた。
ケータイと近づけても大丈夫なのか?とか要らん心配をしつつ、ホームへ。夏休みなので混雑しているが、ラッシュというほどではない。台湾ではちょうど大学入試が終わった時期という事もあって、私にも覚えがある、あの独特の解放感に身をつつんだ若者も多く見られる。不要な情報をさらに詰め込んでおくと、車両はドイツのジーメンス社製。日本に居るとあまり乗る機会のない車両なのでその辺もちょっとワクワクだった。
そんな風に色々考えていたのでわずか5駅などあっという間で。高雄車站駅に到着。台鉄に乗り換えるべく地上へと上がる。
天候は今だ小雨。
とりあえずこれという目当ても無く来てしまったので、台鉄の高雄駅に向かう。「可能であれば行きたいが…」という希望がもしかしたら叶うかも知れないので、時刻表を見に行ったのである。「行けるね」「行けるな」10分ほどで次の列車があることを知り、それに乗る事を決定。
駅の売店でどーも君を売っている事にニヤニヤしながら階段を上がり、普通列車用のきっぷを買って改札を抜ける。
ホームには既に列車が止まっていた。売店で何か買うか車両の写真を撮るか、ちょっと悩んでから写真を撮りに行く。青の車体に白のラインがちょっとドラえもんを連想させるなぁ、とか思っていると、隣のホームには臨時列車の台湾一周号(仮)が入線してきた。これは朝早くに台北駅を出発し、そのまま南下。新竹、台中、嘉義、台南、そしてこの高雄と走破し、そのまま台東、花蓮、宜蘭と北上して台北に夜遅く戻ると言う、鉄オタ垂涎の台湾一周特急である。全席指定でジョイフルトレインっぽい車内には非常に惹かれるものがあるが、さすがに列車に一日乗って潰すプランには妻の許可が下りない。泣く泣く写真だけ撮って車内に戻った。
車内は涼しい。暑い国だけあって冷房にはこだわりがある模様で、我々はどれだけ暑くても上着が手放せない。
そんな話をしているうちに発車時刻はやって来た。ロングシートの座席から高雄の町なみが見える。パッと見の印象でしかないので恐縮だが、台北よりも南国度が高いように感じられた。
鳳山、後庄ときて、次はもう目的の九曲堂駅である。いかにも!というローカル線の駅であるが、特急停車駅なので駅前にはタクシーが止まっている。ガイドブックによると目指すものは徒歩圏内という事なのでとりあえず歩いてみる。わずかに小糠雨が降っていたが、この程度ならむしろ涼しくなって助かる。
地図どおり駅を出て右手に進む。車道の他にちゃんと整備された歩道があり、これは間違いないだろうし間違っていたとしても悪くないな、みたいな事を話しているうちに無事に目当てのものが見えてきた。
飯田豊二技師記念碑。
飯田豊二さんとはこの先にある高屏渓(下淡水渓ともいうらしい)という大きな河にかかる橋を設計・建築した人物で、この橋は鉄道遺産としては先日その役割を終えた餘部鉄橋と並ぶ存在であるという。
鉄オタで歴史オタでもある私にはぜひ一度見に行ってみたいと思っていたところだが、まさかこんな形でかなうとは思わなかった。
銅板の案内に導かれて近づいてみると、その右奥、線路のすぐ近くに記念碑はあった。思ったよりもずっと大きな碑で、しかも手前には繁体字、英語、日本語でそれぞれ書かれたこの記念碑の説明板もあった。さらには隣の小屋には列車の車窓からもこの記念碑が何か分かるように「飯田豊二記念碑」と壁に大きく書かれていた。
もっと地味な存在だとばかり思っていたので、正直な所意外であった。割とこの辺では大きな存在なのかも知れないな、と思いながら眺める。まだ見ぬ橋の存在感の証明であるようにも思えた。
存分に堪能したので、今度は橋そのものを見に行く事にした。地図で見ると割とすぐ近くに見えたが、実際に歩いてみるとそうでもなかった上に、空模様が急遽怪しくなってきたため急いで駅に戻る。
本当に台湾に来ると勘が冴えるようで、駅舎に着いて程なくスコールが降ってきた。音だけでその激しさが分かるほどの強烈な雨だった。残念だったが、今度はちゃんと橋の名前を調べてタクシーで行けばよい。そういう段取りがついただけでも大きな収穫だった。
というわけで我々は台南へと移動することにした。幸いここの駅には特急である自強号が停車する。日本で言うところのみどりの窓口で筆談を駆使して指定席を2枚確保し、後は駅のベンチでのんびりと列車がやってくるのを待つ。のはずだったが、途中、雨が小やみになってきたので駅舎の写真を撮りに行ったりと非常に落ち着きの無い事を始めたりする。
また、駅はローカルな感じだが路線は幹線なので案内表示は電光掲示であるのが面白いと思ってこれも撮影。そんなわけで、待ちくたびれるどころか「え?もう列車来るの?」とか思う次第。
再び強くなった雨の中、屋根に守られて隣のホームへと移動する。ちょうど一本前の呂光(ほんとうは呂に草冠がつきます)号がやってきたので、これも撮影。
せっかくだからと反対側のホームにやってきた普通列車の発車シーンも動画で撮影。
今思うと完全に鉄オタモードのスイッチが入ってしまった模様。
そしてやってきた自強号。細かく言うと12時43分九曲堂駅発、13時31分台南駅着の基隆行き自強号。
車内は5〜6割の着席率。広い座席間隔と深く倒れるリクライニングでリラックスできるのがありがたい。豪雨にけぶる車窓を眺めながら、わずか50分の小旅行を楽しむ。列車は15分ほどで高雄に到着。結構乗ってくる人が多かったのは、高雄と台南の間の移動ではまだまだ台鉄の方が有利だからか。
あと、考えてみれば高雄、結局乗り換えに使っただけでほとんど滞在しなかったので、次回こそちゃんと回りたいと思う。
列車は新幹線との乗換駅新左営すら通過し、台南までノンストップ。明らかに新幹線を意識したダイヤだなぁ、とかつらつら考えているうちに、名残惜しくも列車は台南駅に無事到着。豪雨の中でも時間どおり。偉い。
いつもなら立ち寄るはずの駅ナカの台湾角川直営本屋もスルーし、改札を抜ける。なぜなら、お腹がすいていたから。
こういうときは百貨店に限る、ということで駅から徒歩5分ほどのところにある新光三越台南中山店へ。
地下のフードコートへ行ってみたが、今イチこれ、というのが見当たらなかった。そこで今度は最上階のレストランへ行ってみる事にした。新葡苑という港式飲茶のお店があった。
飲茶と言いながらアワビのチャーハンがあったりアヒルのローストがあったりと、どう見てもメニューは本格中華。前々からアヒルのローストは食べてみたかったのでここに決定。
こちらが日本人だと分かると日本語の出来るウェイトレスさんが来てくれて、スムーズに注文できた。
メインは私がアワビのチャーハン、妻がカレービーフン。そして、青菜炒めやらアヒルのローストやら小龍包やら、腹が減っている上に安いものだからあれこれ頼んでします。
アワビチャーハンにしてもアヒルのローストにしても正直な感想は「すっげぇうまいけど、もっと若い頃ならもっとうまかっただろうなぁ」だった。おっさんくさい感想で申し訳ないが、こってりとしている旨味は20代のうちに味わっておくべきだとしみじみ思った。
どう考えても頼みすぎたと思いつつも、烏龍茶に助けられながら、なんとか完食。好き勝手頼んでしまったのでいくらだろうかと思ったら、1045元(2.8円換算で2926円)。
まぁ、昼飯としたら高いのかも知れないけれど、日本で食べたら一体いくらになるやら。
くちくなった腹を抱えて、今度はお茶を買いに行く。我々にとって台南でお茶と言ったら「おじいさんのお店」こと振發號茶荘である。
三越から南に進み、地図を頼りに歩いていく。若干の小雨も気にならず、どんどん歩いていく。何度も来ている割には毎回道に迷うのだが、今回その謎が解けた。私が持っているガイドブックの地図が間違っているのである。地図よりもうちょっと北寄りに実際の店舗がある事が今回確認できたのでもう次回からは迷わずに行けると思う。
というわけで、ちょっとだけ余計に歩いたが、無事に到着。
しかし、店に入ってみると中年女性が2人居るだけで、店主の老人が居ない。青ざめる我々。つい先日義父を亡くしたばかりなので、ちょっと悪い想像が脳裏をよぎった。
女性は外国語は英語が若干出来る程度とのことだったので、たどたどしく会話開始。もちろん、老人がどうしたのか、と言うことを聞く事など出来ない。とりあえずお茶の購入が先だ。
所謂青茶と称されるお茶を買いにきたのだがそれはブルーティでいいのかどうか悩んだりしているうちに、奥からいつもの老人が姿を現した。「すいません、昼寝をしていたもので」「こちらこそすいません、お昼寝中のところを」正直、ホッとした。そういえば最初に来た時以外は毎回お昼寝の邪魔をしていた。いつもは店先に安楽椅子を出して寝ておられるから、気配で気付いて声をかけてくださるのだが、今回は雨だったので奥の部屋で寝ていたようである。
流暢な日本語でお茶の説明をしてくださるのだが、どうも目が悪くなってしまったとのことで、若干やりにくそうだった。ちゃんとお茶の香りを嗅がせてくれて、「これでいいですか?」と確認してから購入決定。なんだかんだで1.2キロも買ってしまう。新婚旅行で買ったヤツもまだもったいなくて開けてないというのに…。ちなみにそのお茶もまだいい香りがする。いいお茶、というのはこういうことを言うんだろうなと思いつつ、お金を支払う。
「どちらから来られたんですか?」「京都です」「ここは初めてですか?」「いえ、いつも台南に来るとお世話になってます」「ああ、ああ、新婚旅行で来られた!目が悪くなったので思い出すのに時間がかかってしまって」「いえいえ、覚えてくださって嬉しいです」
帰り際、満面の笑みを浮かべる老人と握手をし「また来ます。お元気で」と挨拶をする。
店を出て、台南駅へ戻る。ここからは台鉄で台北まで戻ると時間がかかるので無料送迎バスで新幹線の台南駅まで移動。この市街地からの遠さがネックになっているが、ぼちぼち台鉄が接続するそうなので、次回来るときはそれを使う予定である。
無料送迎バスに揺られて30分ほど、駅に着くと早速窓口できっぷを購入。また筆談なので話が早い。ちなみに、台南から台北に戻るときはいつもグリーン車を使っている。最初は、疲れているから、とかそんな理由だったのだが、いつの間にか暗黙の了解になっている。
台湾新幹線のグリーン車は何がいいかと言って、飲み物とお菓子のサービスがある事だ。前回はコーヒーとナッツ小袋だったのだが、今回は飲み物はコーヒーか紅茶が選べるし、食べ物もナッツかカステラが選べた。飲み物は「そういえばここしばらくコーヒー飲んでないな」ということで2人ともコーヒー。食べ物は面白かったのでカステラを選択。
この2つが綺麗に無くなるころにはいつものとおり眠くなり、気がつくと板橋駅を過ぎているのがお約束。
今回忘れ物が続いているので、身の回りをよく確認してから下車。
台北駅には台鉄本舗と言う鉄道グッズ屋があるので、妻に頼んでよらせてもらう。台鉄の時刻表が無くなっていたのは残念だったが、鉄道情報という鉄道雑誌が買えたのは収穫だった。
そのまま、向かいにあるセブンイレブンで飲み物と夜食と、台湾版少年マガジンである新少年快報を購入。夕飯を食べる前から夜食を買う我々に死角は無い。
ちなみにこの時買った新少年快報に載っていたさよなら絶望先生が228話の「分母変」で、解説コーナーでは短冊でネタにされていた後藤沙緒里さんのラーメン二郎完食の件が解説されていて大いに笑った。ここの編集部にはいろはにほへとのリスナーでも居るのか。少なくともさおりんのブログをチェックしている事は分かった。
地下道を通ってホテルに戻り、荷物を置いて夕食の算段をする。「これがいい!」というのが無かったので、とりあえず台北駅の2階にある巨大フードコートに行ってみることにした。
階段横のいい位置をキープしている大戸屋には突っ込めばいいのかスルーすればいいのか。
他にも「横浜カレー」だの「柿安口福堂」だの「ピアードパパ」だの「ミスタードーナツ」だの「元気寿司」だのと豊富に揃うお馴染みの味。うどん屋で「御三家」という店も見かけたし、確か無印良品に東急ハンズもあった気がする。
牛肉麺だけでワンコーナー出来ていたり、夜市で人気のお店が出店していたりと、もう毎日ここでいいんじゃないかと思うほどのバリエーションが豊富。
とりあえず大戸屋はやめておくとして。
色々迷い抜いた末に選択したのは上海湯包館という小龍包の店。昼も中華で夜も中華。これぞ正しい台湾旅行のはずなのだが、よくよく考えてみるとこの組み合わせ初めてではないだろうか。
まぁ、とりあえず小龍包と台湾ビールで乾杯。東玻肉と青菜炒めと香腸という動物性タンパク質多めの内容も、年齢的にまだギリギリ楽しめる。ウエストは確実に太くなったとは思うが…。
ただし、調子に乗ってビールを2人で1本でいいところを1人1本ずつ頼んでしまい、最後はビールを飲み切る事だけで精一杯になってしまったのが我々のダメなところ。
でも悔いは無い。たとえこの後、とっととホテルに戻ってシャワーを浴びて寝る事しか出来なかったとしても。
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