オタ夫婦旅行記 弘前・函館編 2日目
酒は残っておらず、せっかくなので文章でも練ろうかと思ったのだが、買ってきた「燃えよ剣」がどうにも気になってしまい、読み始める。上下巻に分かれているだけあってボリュームがあり、一気に読み終える事は出来なかったが、読み疲れたら寝る→起きたらまた読む→読み疲れたら寝るを繰り返していたら、荒い運転もさほど気にならなくなり、思いのほか快適に過ごせた。
そんなわけで今回は、というか今回も寝台内で文章をまとめられなかった。
列車は定刻どおり弘前到着。弘前駅では、この「日本海」に乗り込もうという人が結構な数並んでいた。
改札を抜けてまず荷物をコインロッカーに預け、つづいて腹ごしらえに駅そばへ。私は名物津軽そばに天ぷらと卵を乗せ、そこに焼きみそのおにぎりまでつけてしまった。妻は山菜そば。
食べながら、やっぱりそばは東だなぁ、と思ってしまう。
食べ終わって、路線バスに乗って弘前公園へと移動。ここは弘前城趾でもあるので、公園の周囲は濠で囲まれているのだが、その外濠付近の桜は既に散り始めていたが、まだまだ十分見る価値を残していた。日当たりの良い外濠でこれだけ花が残っているのであれば、公園内はまだまだ大丈夫だろうと希望的観測をして中へ入った。
この希望的観測は幸いにして的中しており、ソメイヨシノは盛りこそ過ぎても魅力十分だったし、枝垂はまさに今が見頃だった。前回来たときの咲きたる花わずか一木だったのだが、それから比べると、今年は全く別のところに来たような印象すらあった。
とにかく数が多いので、全体的に華やかである。特に桜の花が頭上を覆い尽くさんばかりだった、西濠沿いにある通称桜のトンネルは見事としか言いようがなかった。その上、この日は散りはじめという事に加えてそこそこ風があったので桜吹雪も楽しめた。
私は城と桜と言う構図が大好きなので、天守閣が入るように色々試して撮影してみたが、どれも気に入ったものにならなかった。なにしろそのテーマでとるならベストポジションと思われる天守閣間近の橋の上がツアー客で満ち満ちており撮影どころか近づく事すら出来なかったのだから、これはもう仕方なかろう。かてて加えて私の撮影器材は携帯電話なのだから、むしろ気に入ったものが撮れるほうが不思議と言わざるを得ない。それでも結構ご機嫌で、メモリの容量ギリギリまでパシパシやっていたりした。
妻は妻でご自慢のフィルム式カメラを構えて縦横無尽に動き回っていた。何しろこの公園は敷地が広大であり、いかに人出が凄いと言っても園内全域がごった返しているわけではない。じっくり撮影しようとすればいくらでも場所はあった。しかも被写体は好素材が選び放題となれば、これはカメラ趣味の人間にとっては理想郷だろう。
昼前、さすがに妻のフィルムも尽きかけて、休憩という事になった。そこかしこに設営された露店を巡り、気に入った食べ物を片っ端から購入して回る。去年食べて印象に残っていた桜おでんはいのいちに購入。これは桜の花びらに型どられたコンニャクにミソがかかっているという代物なのだが、今年は若干マイナーチェンジと言うか進化を遂げており、ミソが桜色をしていた。味のほうは桜味という事もなく、普通のミソに若干ショウガが効かせてあるという程度。だが、この単純な味がことのほかうまくあっという間に食べ終わった。続いて黒石名物だというつゆ入り焼きそばにチャレンジした。
これは焼きそばがややあっさり目のラーメンスープに入っているものを想像していただけると概ね間違いないと思われる。
文章だけ読むとゲテモノのように思われるかも知れないが、先入観を捨てて「これはこういう食べ物」と思って食べるとなかなかイケる。焼きそばが食べたくて仕方のない時にこれを出されると「違う!」と言いたくなること請け合いだが、そうでもない時ならばおいしく食べられるのではなかろうか。
こんな調子でどんどん書いていくとキリがなくなるので略すが、めぼしいものをほぼ制覇すると、今度は露店ウォッチングを行う。何しろ広いので、露店の種類が大変多く、眺めているだけでも結構愉快なのである。ひもクジで当てる商品がwiiだったりPS3だったりするのは当然の時代の流れなのだが、ひもを引いて商品を当てると言う昔ながらのローテクなのに、商品が大変高度なテクノロジーで作られているそのギャップが大変ユーモラスだった。
そのほかプラスチックのお面とか綿菓子とかにはたいがい人気アニメのキャラクターが使われているものだが、この辺の変遷は記録していくと結構面白いと思った。そんなきっかけで興味をひかれて観察してみた。まじまじと見ると明らかに不審がられるのでちらちら見ただけだが、ドラえもんとプリキュアとピカチュウは確かあったはず。
「絶望先生のがあったら絶対買うのになー」
「それ持って函館まで行った挙げ句に飛行機乗るの?」
「お面はちょっとキツいが綿菓子なら食べたあと袋をたたんでしまえば問題ない」
とか年不相応な会話をたしなみつつぐるぐる回ったがやっぱり存在は確認できず、諦めて今度は公園内に併設されている植物園へ足を向けた。こちらでは撮影はほとんどせず、のんびりと歩いて回ってちょうど予定時間終了となった。
バスで弘前駅まで戻り、一休みしてからホームへ。ここから青森経由で函館を目指す。事前の予定では土産物の選定にもうちょっと時間を取っていたのだが、チェックしてみたところ指定席がほぼ全滅に近い状態なので、座席確保のためとっとと並ぶ事にした。
これが大正解で、発車30分前なのに既にホームには列が出来ており、私たちが並び始めて数分後にはこれが見事な長蛇の列になっていた。去年来たときは5分前でも悠々だったのだが、やはりこれも桜が咲いている効果なのか。
並んだ甲斐あって、無事に座席を確保。たった30分だが、寝台での移動をしてきた上に、調子に乗って歩き回った身体には貴重な休息時間だった。
青森駅では乗り換えまでの空き時間を青森の地元新聞二紙を購入するなどして有効に使い、函館行きの「白鳥」15号が入線して来る3番ホームに向かった。
行ってみると、ホームは移動するのもままならないほどに人の数。何事かと思ったら、2両分のスペースに学生服&セーラー服の学生さんたちがたむろしていた。
我々が乗ろうとしている「白鳥」の指定席が満席で、グリーン席も残りわずかだったのだが、これで謎が解けた。なるほど、修学旅行生が車両2つも占拠していたのでは席も足らなくなるわけだ。
二時間立ちっぱなしというわけにもいかないので今回グリーン席を購入する羽目になったのだが、あんまりありがたくない。この白鳥はなにしろ半室グリーン車というヤツで、8号車の半分が扉で仕切られていてそこだけグリーン車になっている構造。狭っ苦しくて好きではないが、この際背に腹は代えられない。
席に着いてやれやれと思ったら今度は『信号所で火災が発生しましたため発車できません』というアナウンスが。珍しい事もあるもんだが、火災となれば鎮火とそのあとの現場検証その他に時間がかかることは想像に難くない。宿に到着が遅れる旨の連絡をしなければと思って番号を調べ始めたところ、今度は『安全が確認されましたため発車いたします』というアナウンスが。
そんな簡単に事が納まるものなのか?と思ったが、実際に列車が走り出したのでそう言うものかと納得するしかなかった。
列車はそのあと特にトラブルもなく青函トンネルへともぐる。見学イベントの乗客回収で竜飛海底駅に止まったが、こちらは特に混乱もなくすぐに発車。そう言えば青函トンネルは何度も通ったが、まだここでおりた事がない。なんでも記念撮影用広場にドラえもんの看板があったりするらしいが、さすがにこの歳になるとそれを理由に函館までやってくるわけにもいかないので、今もって縁がない。
16時40分過ぎ、列車は青函トンネルを抜けて北海道に上陸した。うかつにも用を足しにいっていたので、トンネルを抜けるとき独特の開放感を味わえなかったのが残念だった。車窓から見えた北海道は空が広く、樹の生え方まで違って見える。この辺の感覚は車窓が楽しめる程度の速度で走る鉄道旅行ならで、飛行機ではこうはいかないだろう。
事のついでに車窓の話をするならば、北海道に入ってからは途中からひたすら海岸沿いを走るのが私好みでいつもこのルートを走るときの楽しみになっている。
また、私たちが乗り込んだ特急「白鳥」は先述の修学旅行生をおろすために上磯駅に臨時停車し、その臨時停車で乗り換えできなくなった人のために函館の1つ手前五稜郭駅で臨時停車するという細かい気の使い方をしてみせてくれた。
同じ列車に乗っていた人達の中には隣に停まっていた特急「北斗」札幌行きに乗り継ぐ人もいて、既に2時間以上移動してきてここからさらに最大3時間半の移動とは、そのタフさに感心するばかりだった。
改札を抜け、駅前のホテルルートインへ。チェックインをすませて部屋に入り、しばし休憩。1時間ほど休んで元気を取り戻してから夕飯を食べに外へ出た。今回は前回来た時に食べ損ねた函館屈指の名店五島軒を選択。この食べ損ねた事がだいぶ後々まで祟ったので、祟りの解消も兼ねている。
妻はこの店が初めてという事で豊富なメニュー群にだいぶ迷っていたが、「そんなにここが気に入ったんならまた今度連れてくるから」と約束して決断させた。私も10年振りくらいな上に前回は貧乏旅行だったのでカレーライスしか食べておらず、まったく偉そうな事は言えないのだが、せっかくの機会なのでカッコつけておいた。
そんなこんなでわいわい言いながら結構な時間をかけて選んだ料理は、私がカレーと明治の洋食セット、妻がオムライスと明治の洋食セット。品目がコロッケではなくクロケットだったりするのがこのセットのポイント。運ばれてきたものはどれも美味で、妻は大変ご満悦だった。当然私も同様。
宿に戻り、大浴場で旅の垢を落として眠りについた。駅前のホテルなのに最上階の大浴場は天然温泉で大変心地よかった。
PR