絶望先生SS 日塔奈美の日記 その6
「うん」
「大草さん同じ17歳なのに落ち着いてるし、何か違うなぁと思ったんだけど」
「そう?」
「すごいね。尊敬しちゃうよ」
「すごくないよ」
「だって、学校に通って、家の事もして、いやいや、そんな事より年上の男の人捕まえて結婚までしちゃうなんて、すごいよ!」
「学校はともかく、家の事はなれればみんなできると思うよ」
「そうかなぁ」
自分に置き換えてみたら、とてもできそうにない。そんな話を少ししてから、思い切って相談してみる事にした。
「そういえば、私の友達も年上の男の人と付き合ってるんだけど、なんか色々大変みたいで、悩みとか聞かされるんだけど、大草さんなら何か良いアドバイスできないかな?」
「私でよければ」
「なんかね、その子は学校の先生と付き合ってるんだって。で、やっぱり卒業までは隠さなきゃいけないから色々大変なんだって。その上、その先生が結構他の子にも人気があるから気が気じゃないんだって」
「そっか」
大草さん、ちょっと遠い目になった。
「うちのだんなも浮気性なんだ。だけどね、やっぱり好きだったら最後は自分のところに帰ってくるって信じて待つしかないないって思ってる」
「おとなだぁ」
「だからその子に言ってあげて。たとえ相手に何があっても、好きなら付いて行けば良いって」
こうやって文字にしちゃうとたったこれだけの言葉なのに、大草さんが言うと物凄い説得力があった。やっぱり結婚までした人は違うなぁ。
「結婚するまでも大変だけど、してからも大変だから。だから、頑張ってね、日塔さんも」
「え、いや、あたしは…」
「大変よねぇ。先生人気あるから」
超あせった。バレバレじゃん。
「でも、先生なら苦労のしがい、あると思うよ」
「ありがとう」
うつむいて小さな声でぼそぼそと言う事しかできなかった。これからも大草さんには何かあるたびに話を聞いてもらえる事になった。大草さん、昼休み疲れて寝てたり内職していたりするから、なるべく迷惑をかけないようにしなきゃって思うけど、身近に分かってくれる人がいる、話を聞いてもらえる人がいる、頼っていい人がいるのってすっごく心強かった。でも、まわりにバレないように気をつけなきゃ。特に、先生を狙っている人達には。
(第八集第七十四話「十七歳ね 自分のシワをつかんで見たくない?」より)
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