コミック乱 2012年九月号 感想
・こう暑いと、船で移動する小兵衛先生がうらやましくなる。
・「渡津海の 豊旗雲に入日さし 今宵の月夜 明けらけくこそ」万葉集所収の天智天皇の御製ですな。空の雲を見て、今夜の月は明るいだろうと思いを馳せるという実に格調の高い作品でございます。
・船から視線を陸に向ければ、諍いの真っ最中。すかさず船を寄せさせる小兵衛先生。さすがですわ。
・そして、小兵衛先生にかかればあっという間に片がつく。刀を抜くまでもなく。
・助けた女性はさして動じず。静かに去っていく…それがおはるにはお気に召さぬようで。あと、色気があるのもお気に召さぬよう。
・ウワサの料理茶屋、玉の尾。こういうお店が昔からあったんですよね、ええ。今で言う素人援交のための場所ですね。
・「ほほう… 面白そうじゃな、長次。」「まさか大先生……」「ばか、おはる一人をもてあましているというに……」生々しいですな小兵衛先生。
・その料理茶屋の入口前で、「どんな客が出て来るのかな……?」とはいつもの悪いクセですよ。
・出てきたのは、先日助けた女。後を追ってみると、やつれたひとりの浪人に絡まれる。
・「共に… 共に、」「死んでくれぬか…」迫る男に、冷たく突き放す女。
・「高瀬か…」「この痩せこけた浪人が高瀬照太郎なのか……」いつもながら顔の広い小兵衛先生。
・変わり果てる前はぽっちゃりだったのか高瀬。そりゃショックでしょうな小兵衛先生。
・今のようになった原因が、人妻に手を出した事か。しかも姦通現場見つかって、本来なら自分が斬られる立場なのに自分が斬っちゃった…。
・女に取りすがるだけでもかなり痛々しいのに、さらにそこから突き倒されちゃうとは。そりゃ腹も切りたくなるでしょうけど…。助けながら愚痴のような言葉を言い立てる小兵衛先生のツンデレっぷりが素敵。
・「腹を切らなくても二年はもたなかったとおもわれる。」切ねぇ…。
・「秋山先生!」「何故おたすけくだされたのでございます、あのまま放り捨てておいてくださればよかったのです。」尾羽根うち枯らし、素直に感謝が出来ない高瀬。
・二日後、ようやく謝罪の言葉が。
・「な… こうして死ぬるほうがあんなさびしい木立の中で、」「しかも独りきりで息を引き取るよりもずっとよいだろう。」
・「高瀬かまわぬぞ。わしを父親とおもいいくらでも甘えろ。」「よいか よいな……」これは泣く。
・三冬、すっかり家事もできるようになって…。
・急変する高瀬。そこへ折悪しく踏み込んでこようとする狼藉者。
・家事が出来るようになっても、剣の腕も落ちていない三冬。
・「高瀬照太郎、死ぬる間際におもいもかけぬ……」「しあわせを得ましてございます…」安らかに旅立つ。そのすぐ近くでは別の人間が断末魔をあげているという割と地獄絵図。
・片がついて、
・「女という生きものはな、むかしのことなぞ、すぐに忘れてしまうものさ。」「お前だってわしが死んだら一年も経たぬうちに若くて活のいい男をこしらえるにちがいないさ。」「あれ、なんてことをいいなさる… ばかなことをいうもんでねえよ。」今ならともかく、貞節を重視した江戸時代ですからねぇ。私のところも妻が5年近く年下なので、自分の方が先に逝ったら、とかは考えちゃいますけど。
・いたずらっぽい仇討ちに浮かぶ笑顔。
風雲児たち幕末編
・漫画で分かる早駕籠の仕組み。「最速の催促っ」どんな時でも、可能な限りギャグ入れてくるみなもと先生。
・江戸時代の交通機関って基本人力だから、死ぬよなぁ、うっかりすると。
・新幹線だって乗ってるだけでも割とダメージがあると言うのに、それが早駕籠だった日には…。まかり間違っても、乗ってるだけだから楽、とかではないですな。
・予備として中山道にも同じものを。中山道の早駕籠はきつそうだ。
・駕籠内の使者と襲撃班と、目が合うシーンは歴史の絶妙な綾。使者も目の前に居るのが主君の仇の片割れとは思うまいなぁ。
・二挺出す理由は「どちらか死んでもいいように」。ビジネスライクというか常在戦場というか。
・人の脚力だけを使って江戸から彦根まで3日。江戸時代ってすげぇ。
・息も絶え絶えになりながら、質問に答えるだけ答えたら、倒れる。武士の生き様。
・「直ちに東下して水戸を討つべしーっ」熱い血を持つ76歳。
・「この仇を討たずして井伊家家臣の面目が立つかーっ」「お取り潰しを恐れて赤備えの武勇を捨てるとは何事かーっ」「たとえお家は断絶しようとも水戸親子の首を刎ね」「直弼様の墓前に供える事こそ武士の本懐であるーっ」「そうだーっ」なんという武士の正論。
・1000名の出陣は確かに藩士の総数を考えれば少数派とも言えますが、治安維持という面で考えれば十分な脅威。
・「報告書は嘘のカタマリだ……」「死人に口なしっ」「自分たち重役には一切責任がありませんと言いたいだけの作文ではないかっ」まぁ、生き残った人間も生きていかないといけませんからなぁ…。
・「ま 俺が江戸にいても同じ事をするかな……」分かってるな。自己欺瞞しないだけマシか。
・大井川で一般人にナチュラルに迷惑かける1000人の彦根藩士。数が多いってのは大変なもんです。交通インフラの乏しい時代に、この人数の移動は負荷が高すぎます。
・ここでもすれ違い発生。一歩間違えば、河川敷が血で染まっていたのか。
・苦労の耐えない安藤さん。同情します。
・総登城の日に誰も出てこないとは、ある意味大老暗殺並の不祥事…小役人のハシクレとして、当時の小役人の諸氏に同情せずにはいられません。大変なんですよ、こういうのの後始末って。
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