絶望先生SS 日塔奈美の日記 その27(最終回)
先生との結婚が決まった。と言っても、私は1/12の存在だけど。年に1度、一ヶ月だけの夫婦だけれど。
それでも。
嬉しいと思った。
だから。
今のこの気持ちを日記に残しておこうと思う。これから、みんなと一緒に暮らす時間の中で、もしかしたら忘れてしまうかもしれないから。そうした時に、これを読むことで思い出せるかもしれないから。
みんなで先生と暮らす。もちろん、可符香ちゃんも一緒に。むしろ、この計画は可符香ちゃんが主役で、私達は脇役に過ぎないのかも知れない。
私だけでなく、まといちゃんも加賀ちゃんもあびるちゃんも藤吉さんもカエレちゃんも三珠ちゃんも千里ちゃんも霧ちゃんもマリアちゃんも芽留ちゃんも。みんな、主人公になれないまま生きていくのかも知れない。
それでも。
そうすることが、みんなで決めたことだから。
そうしたいと、みんなで願ったことだから。
糸色望という男性と、みんなで一緒に居る。みんなと一緒に生きる。
私達の幸せの形は、きっと不思議な十二角形をしているのだから。
だから。
明日、私達は船に乗ります。
何年かして、私が今のこの気持ちを忘れてしまったときに、これを読んで、思い出してくれることを願って。
このページは、日塔奈美から糸色奈美への、最初で最後の贈りものです。
(第三十集「一つの可能性としての第30X話」より)
原作の最終回を読んでから今までかかった時間は、みんなに隠れてふたりが付き合っているという本シリーズの設定を活かした最終回にしたいという思いを諦めるまでにかかった時間とニアリーイコールです。
あの衝撃のラストを私は結局自家薬籠中の物とすることが出来ず、ほぼ全面降伏に近い形でこのシリーズを終えることになったのは、SS書きとしては忸怩たるものがある一方で、久米田先生の偉大さを改めて思い知ることとなったのでファン心理としては喜びを覚えたりもしております。
ともあれ。みなさまから望外の閲覧とご支持をいただきまして、日塔奈美の日記シリーズをなんとか完走させることが出来ました。ありがとうございました。
ちなみに。
先日チョロッと書いた絶望仕事人シリーズは大まかなストーリーラインは出来上がったのですが、なぜだかシリアスになるばかりでギャグを入れる余地がないので書いては消し書いては消しの繰り返しです。殺しをさせるとどうしても殺伐としてしまうので、もっと別の形で『仕事』をさせられないかと検討する段階に巻き戻ってしまいました。楽しみにしてくださっている方には大変申し訳ないと思っておりますが、今しばらくの猶予をいただきたく存じます。
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