台湾旅行記2013 2日目
ただまぁ、こんな時間に目が覚めてもどこへ行く事も出来ないし、やる事と言えばネットなのだが。無線LANのおかげで寝ながらネットが出来るありがたい環境。
一応、本日の旅程にまつわる情報収集がメインなのだが、しばしば寄り道したりするのはネットサーフの常。
本日の第一目的は茶。
茶の買い付けと言えば例年台南まで長駆新幹線で買いにいき、振發茶行を訪れて店主の厳大人にお会いするのが旅の楽しみの大きなひとつではあったが、台南まで行くのがそろそろしんどくなってきているのもまた事実。下手をすると2日目は行って帰ってで終わりになってしまう危険性すらあるので、新規開拓の意味と合わせて今回は台北市内でアタックをかけてみようと思う。
既に台湾入りする前からあたりはつけていた。
峰圃茶荘。
1883年開業ということで、1860年創業の振發茶行には少し及ばないものの台湾においてはかなりの老舗である。
根城にしているシーザーパーク台北から十分徒歩圏内なのだが、逆に言うとタクシーを使えないので周囲の地理についてはしっかり押さえておかねばならない。店の住所とその近所の目印になりそうな建物について再確認。
そうこうしているうちにいい時間になったので妻が起きだしてきた。妻は普段朝ごはんを食べる習慣がないため意志確認をすると「食べる」とのことなので、連れだってホテルのバイキング会場へ向かう。
ここは和洋中がわりと満遍なく揃っているので目にも楽しい。この日はいつもスルーしてきた中華粥をメインとして、それにあうおかずを物色し、バランスを心がけて選択する。しかし、どちらかと言うと真打ちは食事の後のデザートだったりする。
日本の物より濃いめで美味なヨーグルトと地味豊かなフルーツ類を堪能して、締めにホット烏龍茶。これが最強。
愉快に腹を満たして、まずは今回の旅の主目的のひとつ、茶の買い入れに出発。ハンドタオルや扇子などの防暑用品を装備するなどして身支度を整え、先述の峰圃茶荘へと向かった。
店に入るなり店主の蒋老人に「日本の方ですか?」と日本語でたずねられ、そうですと答えると以後は日本語のみで応対を受けることとなった。
勧められて試飲用の応接セットに座ると、実に多種多様なお茶が提供されはじめる。
具体的な銘柄を挙げていくと、阿里山烏龍茶、一般的にはプアールとして知られる銀峰陳年老茶、東方美人烏龍茶などを試飲させていただいた。
特に東方美人烏龍茶は「蜂蜜を入れるとさらに美味しくなりますよ」という言葉とともに、ガラス瓶からスプーンで琥珀色の液体が注ぎ込まれる。途端に広がる芳醇な香り。今まで味わった事の無い新しい味覚を得ることができた。
これまで大量に台湾茶を飲んできたはずなのに、まだまだ知らない事がたくさんあったのだと改めて思い知った。
また、この店のお茶以外の名物として台湾島の形をしたパイナップルケーキとマイタケチップスなるものもお茶請けとして勧められる。
もはや試食試飲の域を超えて『歓待』だと思うのだが、店主の老人はニコニコとしているばかり。
この方も御多分にもれず日本好きということで、お茶やお菓子をいただきながら日本の話題で盛り上がるのだが、その会話の途中で店主の老人から
「どこかでお会いした事ありませんか?」
とたずねられた。が、残念ながらこのお店に来たのは初めてである。その旨を告げると、老人は少し残念そうな顔をしていた。
しかし。これを書いている今気がついたのだが、もしかしたら店主の老人が私の祖父と会ったことがあるのかも知れない。初日編でも書いたが私の祖父は台湾滞在歴があるので、その可能性はゼロでもない。もしそうだとすると実に不思議な縁である。
会話とともに味と香りとを存分に楽しませてもらい、レッツ買物タイム。
発注は数と品物の間違いが無いようにと作られたオール日本語な発注シートに必要数を書き込んでいくのだが、あれもこれもと欲張っていくうちにとんでもないことになった。
すなわち。
東方美人茶100gを1箱、同じくティーバッグ12バッグ入りを12袋、炭焼き阿里山高山烏龍茶100gを1箱、炭焼きでない阿里山高山烏龍茶100gを3箱、銀峰陳年老茶100gを4箱、ティーバッグの高山烏龍茶25バッグ入りを1箱、マイタケチップスを15袋、パイナップルケーキ8個入りを4箱。
自家消費分以外にも職場や友人たちへの土産があるので店の人が目を見張るような分量になってしまったが、これでも最低限どころか、やや不足気味である。
しかし、一度に運べる分量としてはほぼ限界に近いのでこの程度にしておく。おまけとしてマンゴーまでいただいて店を後にした。
大量に抱えた荷物を置くためにホテルに戻り、身軽になってから台湾のアキバこと光華デジタル新天地ビルへと向かう。
台北駅からは地下鉄で2つめの忠孝新生駅で下車。新生北路を北に向かって歩くのが本来の最短ルートなのだが、敢えて大回りになる金山北路ルートを取る。こっちから行くとアニメイト光華店があるので、まずここで台湾版漫画各種を仕入れておく腹づもりであった。あったのだが。
「ないな」
なくなっている。アニメイトとらしんばんが入っていたビルが『テナント募集中』になっていた。
思わぬ展開で予定が大いに狂ってしまったが、困惑しているのも勿体ない。気を取り直して光華デジタル新天地ビルへと向かった。
今回ここにやってきたのは、LANケーブルとノートパソコン用冷却ファンを購入したいというのがあった。どちらも何年か前に台湾で購入したものを愛用してきたのだが、さすがに経年劣化してきたので今回更新しにきたのである。
ビルは上から攻めるがモットーなので、まず最上階に上がり、そこからじわじわと降りていく。
しかし、ここで我々は思わぬ苦戦を強いられることとなった。LANケーブルと冷却ファンとを扱っている店が激減しているのである。
考えてみれば台北市内はwifiとタブレットが主流。そうなると私が求めている2つはどちらも時代遅れの代物である。これはうっかりしていた。
それでも、1つ2つくらいはあるだろうと高をくくって探索を続行する。
主目的のブツを探り当てるその前に漫画専門店を発見したので、アニメイトが無くなって買いそびれた分を補填すべくそちらに吶喊を掛ける。
今回のメインターゲットはなんと言っても台湾版『さよなら絶望先生』最終巻。コレクター的な意味もあったが、それより何よりあのアナグラム回を異なる言語でどう取り扱ったのかが知りたくてしょうがなかった。
大して広くもない店内に2メートル超の本棚がいくつも並び、その中にみっしりと詰まった大量の漫画がまるでモザイクタイルのようだ。これを丹念にチェックしていくと無事発見できた。30巻だけでなく29巻もあったので両方確保。
ちなみに。アナグラム回はあとでホテルに戻ってからチェックしてみたところ「日本語で並べ替えるとこうなります」的な注釈がついているだけという投げっ放しジャーマン仕様。察するに『お前ら、ここまでこの作品についてきたんだから大丈夫だろ?』というある意味よく分かった判断なのではなかろうか。
せっかくだし他にも何かないかと探していくと、あった。『孤独のグルメ』台湾版。今まで見つからなかったのが不思議なくらいのメジャータイトルである。翻訳出版されたのが奇跡のような『球場ラヴァーズ』よりも後に出会うことになろうとは。
あとで中を読んでみてその謎が氷解した。これ、出版されたのが数ヶ月前なのである。しかも、出版社は漫画を翻訳出版するのがこれが初めてらしい。何があったのかは不明だが、せっかくなのでここから漫画翻訳に本格進出していただきたいものである。
さて。本は買えたが、肝心なものを入手出来ていないので探索を続行する。6階から5階、4階、3階と降りて、結構な軒数を巡り巡ってようやく冷却ファンを多数置いている店を発見。
何種類か比較検討してから気に入ったものを選択する。レジに持っていくと、いきなり箱を開けられたので何事かと思ったら、そのまま冷却ファンにUSBケーブルを挿して動作チェックをし始めた。
若干大きめにカラカラと音がしたが、まぁお安いお値段だったのでこんな物だろうと思っていたら「これはダメだから交換します」と言い、別のを出してきてくれた。こちらも同様に動作確認が行なわれ、今度は格段に音が小さい。「これでどうですか?」とたずねられたので「是、是」とつたない台湾国語で答える。同じ店にLANケーブルも取扱いがあったので合わせて購入。
これで目的はほぼコンプリート。もし有れば、めでたくリージョンコードが日本と台湾で一緒になったブルーレイのソフトでも1つ2つ買っていきたかったが、探せども探せどもDVDしか見当たらないのでこれは断念(DVDはリージョンコードが日本と台湾で異なる)。
概ね満足出来る戦果を手にしたので、ビルを後にする。出てすぐのところに炭焼き香腸(台湾ソーセージ)の屋台があったので1つずつ購入。少し甘めの香りを楽しみながら思いきりかぶりつくと、溢れ出てくる肉汁が熱くてウマい。照りつける太陽もなんのその、あっという間に食べ尽くしてしまう。
小腹を満たしたこともあり、続いてもうちょっとこの辺を歩いてみようかと思ったが、どうにも空模様が怪しい。
どうしたものかと逡巡しているうちにポツポツと降り始めた。この時まだ傘を調達していなかったのでこのままではずぶ濡れ確実。慌てて地下鉄の駅に避難する。
ちょうどいいのでこのまま次の目的地へ移動する事にした。頂好というスーパーマーケットのグループが有るのだが、その中でもMRTの忠孝復興駅と忠孝敦化駅の間にある店が規模が大きく重宝している。
忠孝復興駅から忠孝敦化駅までの間には地下街が通っているので雨天でも問題なく歩いていける。しかも、ここの地下街にはテナントがあちこち入っているので、傘も買える。
ただ、この時は焦りもあって手近にあったセブンイレブンで買ってしまい、そこから少し行ったところに傘の専門店を発見してしまうコントを成立させてしまった。しかも、地下街から地上に上がった時には見事に雨は止んでいたのだから見事な二段オチ。
このコントにはちょっとしたおまけがあって。
さらなるうっかりとして地上に上がる出口を間違えてしまったのだが、上がった先に順成蛋糕というパン屋を見つけた。ここはパイナップルケーキコンテストで優勝したことが名前の由来になっている冠軍鳳梨酥が名物で、前から一度訪れてみたいと思っていた。間違いを奇貨として立ち寄り、くだんの冠軍鳳梨酥を6つほど購入。
これから買物をしようというのに、その前からどんどん買物を増やしているのは我々の台湾におけるスタンダードである。
さて。前振りが大変長くなってしまったが、ようやく頂好ストアに到着。
地下に広がる多種多様な売り場。果物、野菜、肉類などは魅力満点だが買って帰ってもどうしようもないのでパス。
メインは普段飲み用のティーバッグ烏龍茶、日本では見た事も無いものまでガッツリ揃っているドライフルーツ、中華菓子などである。
以前来た時はそのメインの売り場だけを重点的にチェックして終わったのだが、今回は比較的時間に余裕がある。だもので、メイン以外の売り場も丹念にチェックをかけてみたのである。
その甲斐あって掘り出し物があった。茶の名産地であるこの台湾だが、実はコーヒーも生産しているのである。ただ、生産量は茶に遠く及ばないため滅多に売っているところを見かけない。
その希少な台湾コーヒーがなぜかここで売っていたのだ。台湾8年目にして初の邂逅である。産地を見ると阿里山だった。茶の名産地である阿里山で作られたコーヒーにはどうしても期待をしてしまう。しかも、台湾で主流のインスタントではなくドリップ式だ。
このほか、メインの獲物であったドライメロン&ドライマンゴー、高山烏龍茶のティーバッグ、そして今年の正月に下関で紛失してしまった謎の日本メーカーが関わっているらしい烏龍茶エキス配合洗顔フォーム(ただし日本で売っているのを見た事は無い)、ペットボトル飲料各種などなど、カゴ一杯に買い込む。
いつもなら分量に比してお値段がリーズナブルなことを支払いの時実感するのだが、今回は阿里山コーヒーが存在感を発揮してそこそこの額に。
地下街へ降りて、とことこ歩いてMRT忠孝敦化駅へ。そこから板南線で台北駅に。
買物三昧だったこの日もようやくこれで終わろうとしていたのだが。というか、本来これ以上何かを買う気はなかったのだが。
台北駅にはアレがあった。
臺鐵夢工房。台湾国鉄直営のグッズ屋さんである。鉄道雑誌や写真集、鉄道模型などなどが所狭しと並んでいるのだが、台湾もすっかり日本に毒されてしまったため、こういうところでも萌え化グッズが陳列されていたりする。
しかもそれが1つ2つではないのが困りどころだったりする。売り場を何周もして、散々迷った挙句に台湾の国花である梅と美少女イラストが入ったマグカップを購入してしまう。
おまけのように鉄道雑誌も購入。萌えイラストコースターが4枚セットおまけについてくる仕様のマグカップもあったのだが、これはさすがに断念。
このような経緯で両手を荷物でいっぱいにして宿に戻る。何かこう、やりきったような清々しい疲労感が身体を満たしている。
部屋では買ってきたお茶とドライフルーツで一息入れてから荷物整理に取りかかる。この日だけでかなりの分量が増えた。入国時にはスカスカだった私のスーツケースが半分以上埋まる。
荷物が多かったので結構整理に手間取り、終わった時にはいざ夕飯という時間になっていた。本日は遠出ではなかったとは言えあちこちに出かけっぱなしだったので夕飯は近場で済まそうか、という提案であっさり決まり、台北駅の2階にある中華料理店、上海湯包館へと向かった。
欣葉とかAoBaとか大三元酒樓とか、割とお値段お高めの中華料理店も選択肢に無いではなかったが、何しろホテルのすぐ近くという気軽さと、ちゃんとそこそこ以上に美味しいという魅力には抗い難く。気づけば台湾に来るとかなりの高確率で夕飯がここになっている。毎年1回は必ず来ている計算になる。
ちなみに小龍包が名物ではあるが、私の一押しは上海菜飯。要はこれ、ベーコンとチンゲンサイのチャーハンなのだが、これがどうしたものか胸を打つうまさなのである。これを田鰻の炒め物と一緒に食べるのが私のジャスティス。
この文章を打っていると、口の中があの味の記憶でいっぱいになって実に困る。先ほど夕飯を食べ終え、そのあとデザートまでいただいたというのに奇妙な空腹を憶えてしまう。
そのくらいに魅力ある料理なので、他の料理の記憶があまり無い。そろそろ量をこなせなくなってきたので毎年頼んでいた白身魚の蒸し物を断念したとか、そもそもビールを頼まなかったとかそんなことばかりが蘇ってくる。
節制して我慢したはずなのに注文の際には店員さんに「この分量で本当に大丈夫ですか?」と確認されてしまうのはお約束。
懸念は半分的中し、後半はかなりの苦戦を強いられたものの無事完食する。帰りがけに小南門というデザート専門店で豆花という豆腐デザートをテイクアウトする余裕もあった。
買って帰ったデザートはホテルの部屋でやや行儀悪く堪能させていただいた。
斯くして、台湾2日目は豆腐と小豆の不思議な甘さを楽しみながら暮れていった。
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