台湾旅行記2016 初日
出発当日まではいつもどおり紆余曲折に満ちていたが、どうにかこうにか片付けて無事出発できる運びとなった。
フライトは関空発13時の便なので、諸々見込んで9時前に自宅を出発する。愛車のエンジンをかけると、この時カーステレオから『1/6の夢旅人2002』が流れるのは、すっかり儀式のようになっている。
道中はさしたるトラブルもなく、スッキリと晴れた青空のもと関空大橋を渡る。
駐車場からターミナルに移動し、いつもであればそのままチェックインカウンターへ行くところだが、今回はポケットwifiを借りる算段をしていたので、その受取場所へ先に行く。そこが我々の使う中華航空のチェックインカウンターと真逆の場所にあったので、混み合うターミナルを端から端まで延々移動する羽目になったりしたが、レンタル自体は無事に終わった。
時間に余裕があったので、普通であればどこかで一服するところなのだが。
wifiを借りるために1タミの4階を大横断をして、あちらこちらのチェックインカウンターに大量の団体客がひしめいていることを身にしみて実感したため、まだ混雑していないうちにとっとと保安検査を済ませてしまおうということになった。
ただ、保安検査場の向こうには一服できるような店が少なく、以前まであったネカフェもなくなってしまったので安住の地を確保できるかどうかがネックだったが、行き場がなくなるようであればこれを口実にクレカをゴールドにしてしまおうと思っていた。
さて。そんな事前の思惑をよそに、根城とするべき場所は意外とあっさり見つかったのだが、ここが別に喫茶店でもなんでもないところで単に座れるというだけの場所。なのでせめて飲み物くらいは調達してこようと売店に向かったところ、これがどの店も長蛇の列。やむなく自販機で緑茶を調達する。
借りたiPadminiの練習とばかりにTwitterでつぶやいたりしているとやはり小腹がすいてくる。妻に諮ると、とりたてて空腹ではないとのことなので私一人でさまようことになった。
さっき飲み物を求めてうろついた時には長蛇の列を形成していたプロントが一転すいていたためチャンスとばかりに並ぶ。妻へのお土産として十勝あんぱんやカットピザなどを購入しつつ、ビールとナポリタンでほぼ昼食に近いブランチとした。
午前中から飲むビールはなんとも爽快で、人をダメにする味がした。ナポリタンにしたのは、台湾にもイタ飯屋はそれなりにあるものの、ナポリタンだけはついぞ見たことがなかったからである。
そんなこんなで持て余すはずの時間はあっという間に過ぎ去り、搭乗ゲートに向かう頃合いとなったのでモノレール乗り場へ向かう。
41番搭乗口付近のソファは既に人で埋め尽くされていたので、おとなり40番側のソファに座って待つことしばし。予定時刻より少し遅れて案内が始まった。
機内がほぼ満席なのもいつもどおり。
機内食。妻がシーフード、私がチキン。シーフードはエビと魚のビスクにサフランライス。チキンは鶏肉とキノコの中華炒め。サラダのドレッシングはキューピーだったのはまだしも、マンゴーケーキが台湾のものでなく宮崎製であることが衝撃的だった。台湾名物のマンゴーを、なぜ…という疑問が自然と湧いてくる。
まぁ、考えても結論が出る話ではないし、とっとと平らげてしまうことにした。マンゴーケーキ自体は旅のおやつとしてとっておくことにする。
例年であれば機内食のあとはパソコンを取り出して文章を打つなりなんなりするのであるが、今年はポケットwi-fiのおまけで借りてきたiPad miniがあるので、慣らし運転がてらいじり倒す。
もともとmacを長く使ってきたので、感覚的に戸惑うところはさほどない。何を行うにもファイルではなくアプリで、というところだけが要注意だが。
機内wi-fi(有料)という誘惑にも打ち勝ち、ある程度習熟した頃合いに飛行機は着陸態勢となる。
台湾桃園空港着。
トラブルなく入国審査も荷物の回収も両替も終わり。まずは地下のフードコートへ向かう。タピオカミルクティーの春水堂で一服。
ここは激戦区なようで毎年少しずつ店が入れ替わっており、今年はヒゲ張のニックネームでお馴染みな魯肉飯屋さんを見つける。現在日本で唯一店舗がある金沢まで食べに行ったことがあるほどに好きなお店なので「ここで夕飯を済ませてしまおうか」という話にもなりかけたが、さすがに思いとどまった。

また、毎回ここのセブンイレブンでバス内で飲む用のお茶を購入しておくのだが、店内で売っているドーナツがミスドでちょっとびっくりする。日本でもやってほしいと思いつつ、夕飯が食べられなくなったら困るので購入は控える。
1階に戻ってバス乗り場へと向かう。
切符を購入して待っていると、韓国人と思しき女性から地図を片手に英語で話しかけられる。
ハングルと英語の書かれた地図にはホテルの名前と場所が書かれており、どうやらそこへ行くバスを探しているようである。
そのホテルはバスの路線から外れていたため、どうしたものかと悩みつつとりあえず「台北駅からタクシーに乗ったほうがいいのでは?」という結論に至る。
至ったのだが、それを伝える前にその女性の連れの男性が解決策を見出したようで、礼を言いながら去っていった。
まぁ、それはそれとして。
我々の乗るべきバスも間もなく発車時間になっていたため、エアコンの効いた室内に別れを告げ、乗り場へと向かう。
バス乗り場の係りのおっちゃんに切符を見せるとどこで降りるのかを聞かれたので「國聯大飯店、United Hotel」と答える。おっちゃんは二三度うなずいて並ぶ場所を示してくれたのだが、それに安心してバスに乗り込んだ時には「ニーハオ」しか言わなかった。
思えばそれが間違いだった。
我々が降りるべきバス停をスルーされてしまったのだ。やむなく終点の松山空港まで行ってタクシーにてホテルに向かったが、長年通っているからこそ油断せずちゃんと意思表明はせねばならないと痛感した。
そんなわけでちょいと時間もお金も予定よりかかったが、無事宿にチェックイン。
今回我々の根城となるのは801号室。ありがたいことに角部屋でちゃんと希望どおりのツインルーム。窓の外には台北101もしっかり見える。
我々をシーザーパークからここに移る決意をさせた寝心地の大変良いベッドにてしばし仮眠をとり、気力体力を回復させる。
「さて、どこへ行こうか」
初日の夜の過ごし方はこの旅行全体に影響を与えるため、必ず確認を取るのだが、まぁ答えは決まったようなもので。
最低限の荷物を持って饒河街夜市へ。ここの夜市の按摩店で足ツボをやってもらってから薬膳料理屋で夕飯というのがほぼ毎年おきまりのコースになっている。
MRT板南線國父紀念館駅からふた駅乗って忠孝復興駅で文湖線に乗り換え、次の南京復興駅でまた乗り換え。松山新店線で終点松山駅に出れば、階段を上った先はもう饒河街夜市である。乗り換え2回はいささか手間だが、タクシーで行くしかなかった頃を思えば便利になったものだ。
うっかり出口を間違えて按摩屋さんと逆方向に出てしまったので、混雑する夜市の人波をかき分けかき分け延々歩く。荷物を最低限にしてきて本当に良かった。
激戦区の夜市なので毎年微妙に店が入れ替わっている。その中で年々勢力を広げ、今や出店4つ分くらいのスペースを有するようになった胡椒餅屋はさすがというしかない。それでも捌ききれない長蛇の列に、毎年スルーを余儀なくされているのだが。
そしてこれも毎年のことだが、混雑している夜市ではひとの流れガン無視スマホぶんまわし勢に道を遮られることがしばしば。大抵日本人か大陸居民なので英語で注意すると割とすんなり道は開く。
コツは「Please clear my way!」と、流れるようにハッキリと、そしてにこやかな笑顔で言う事。
そうして5分歩いたか10分歩いたか。無事按摩店に到着。店内は繁盛していたが、運良く次の順番が取れた。我々よりも一足遅く到着したカップルは30分待ちと言われていたので本当にラッキー。
空いた椅子に座り、先に足湯をしてもらう。程よい湯加減にほぐれていくと、既にもう眠気がやってくる。さすがにこれはどうかと思って、肘掛に据え付けられたテレビをつけてみる。3ケタに届こうかという多チャンネルなので一周全部チェックするだけでも結構手間取る。ファミリー向け、子供向け、ニュース番組といろいろある中で、台湾プロ野球の中継があったのでこれに決めた。
ただまぁ、結局足湯の心地よさに負けて寝てしまったのではあるが。
按摩師のおっちゃんに起こされ、挨拶もそこそこに施術を開始してもらうが、やっぱり寝てしまう。どれだけ眠かったのか自分。普通は足ツボマッサージを受けると痛い痛いを連呼してのたうちまわるイメージが一般的かもしれないが、ここの店ではそういうこともなく、毎回気持ちよさに寝てしまっている。
そんなわけで「オワリマシタ」の声で目覚めるまでの記憶はほぼない。しかし、施術の効き目は靴を履くときにすぐわかる。足がすっと入っていくのだ。寝こけていた時の疲労感は何処へやら。心身ともにスッキリするとともに、食欲も湧いてきた。
足取りも軽く薬膳の店『圍爐』へ。ここのメニューはシンプルに薬膳排骨(スペアリブ)、薬膳羊肉、魯肉飯のみ。このほかに飲み物もあるので、「せっかくだから」と調子に乗ってビールを注文。
昔から「良薬口に苦し」と言われるように、身体にいいものは受けつけ難い味がするとイメージされがちだが、ここのは旨い。肉本来の旨味が滋養となって体内に元気を届けてくれる。さらにこの店オリジナルの辛味噌と合わせるとどれだけ食べても飽きが来ず、しかもビールにもぴったりの味となる。

酒にそれほど強くない私でもさすがにビール1杯をふたりで分け合ったので酔いがまわることもなく、完食して上機嫌で地下鉄の駅に向かった。
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