ここだけの話 第58話 私の話 感想
・「俺に一晩ちょうだい?さわちゃん」桜井なる人物的にはキメゼリフなんでしょうけど全然決まってないんだよなぁ‥‥。青年は仕掛けが遅く、桜井なる人物は早すぎる。どっちも相手が見えてないという残念な共通点がありますな。やはりオルタなのか。
・「なーんて」「もし言われてたらどうするつもりだったの?」表情見て咄嗟に退いたのだと私は捉えましたが。さて実態は彼のみぞ知る。もしそれが当たっていたとしたら私が思っていたよりは考えなしではなさそうですね。それでも挽回不可能レベルの致命傷なんですけど。
・ノンアルだったのはお酒飲むとそのうちまともに話ができなくなる上に内容全部忘れちゃうからなんですが、そんなことはつゆとも知らずに的外れなことを。
・「そんな怯えないで」怯えてるのは君が手を離さないからじゃないかな。
・「今日に今日どうこうするつもりはないよ」今日は退きますと言えるだけマシだと思ってしまうのは大学と大学院でもっとひどいものを多々見てきたからでしょうか。
・「君の彼氏がどう教えてくれたか知らないけど」「知り合って間もない男と二人きりで酒飲みに出かけるなんて不用心すぎるんじゃない?」お説ごもっともなれど、これ言っちゃうとあなた二度とさわちゃん先輩と二人っきりで飲む機会がなくなると思いますけど。こっから逆転する算段がある?それとも自分に靡かない相手に対する嫌味?
・桜井なる人物、言ってることは概ね間違ってないんですが。言動にコイツここまでの人生顔と押しの強さで全部乗り切ってきたんだなっていう臭いが強くてですね。
・走りながら巡る記憶と想いと。
・『ひとりになった途端こんな油断して』まぁ、油断ですわな。青年が余計なお世話レベルで心配していたことが全部正解だったと証明してしまいましたね。
・お酒にのめり込んでいく過去回想が辛すぎる。そもそもはお酒を飲むと忘れちゃうんじゃなくて、お酒を飲んで忘れたいことがあったから回数を重ねるうちに飲めば自然と忘れてしまうようになったんですね。辛い。辛くて悲しくて言葉を失います。
・『私の思いつきをバカ正直に鵜呑みにして』『わがままを受け止めてくれる人が現れて』『あまつさえそのやさしい人が私のことを好きだなんて』『そんな都合のいいことってありますか?』あるよ。人生に1回歩かないかだけど、ある。それが恋の季節ってやつです。
・『こんなこと考えちゃうのは』『アルコール入れなかったからかな』『でもこのかなしいようなうれしいような苦しい気持ちを』『飲んで忘れてはいけないような気がするのです』それを忘れるときは青年への気持ちごと忘れるときですねきっと。訪れる夜が来ないことを切に願います。
・ここまで読んできてずっと疑問だったさわちゃん先輩の不思議なほどの自信のなさ、行き過ぎとも思えた自虐的発想、好意的発言を向けられて優しく困っている表情などの謎が一気に解けました。
・人は誰しもそれぞれに挫折を経験し、そこから立ち直る道筋があったものと思いますが。さわちゃん先輩は立ち直りきれていなかったのですね。完治しない傷を抱えながら流れる血をそのままに痛み止めを打ち続けてなんとか歩き続けていたのですね。
・応援したくなるヒロインには数多出会いましたが「どうか応援させてください!」って言いたくなったのは初めてかも知れません。訳知り顔で安易に「あなたの痛みが私にはわかります」などと言う男ではなく、その来し方を全ては知らなくとも今のありのままを分かったうえで「あなたが好きです」と言えた青年とどうか結ばれてほしいですね。本当に、そうあって欲しいです。
・以上、一読者からのわがままな願いでした。
・以下、考察もどきを少しばかり。
・桜井なる人物がこの時さわちゃん先輩を見逃したのは例えそうしても最後には自分の手元に戻ってくるという自信があるからか。それとも、自らの流儀への強いこだわりか。彼は彼でまた別ベクトルにめんどくさいものを内にかかえていそうなのがなんとも。
・まあ、そもそもとして無理矢理どうこうするようなタイプには見えないんですよね。かなりの自信家で、すべては自らの望むとおりに収束すると考えていそうで。一緒にいる時間が長くなればなるほど自ずと青年より自分に惹かれていくだろうくらいの算段でしょうか。
・今気づきましたが、そもそも桜井なる人物は青年が散々苦労する羽目になった酔っ払いモードのさわちゃん先輩を知らないわけでして。あれ見たら興醒めしてあっさり手を引くんでしょうか。それとも余計ムキになって「欠点のない人間などいない」とか言い出すんでしょうか。
・何にしても恋愛ゲームには詳しくても人間については詳しくないタイプと見ましたね。彼は彼で何らかの事情を抱えているのかも知れませんが残念ながらここまで読んできて同情の余地を感じることはできませんでした。
・欲しいものを欲しいとキチンと言える人間であることは評価しますが、そこまでですね。
作者ご本人のあとがきはこちらからどうぞ。
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