リイドコミック乱3月号 感想
一十郎とお蘭さま
いい話で終わりました。ずいぶんラストをかえてしまったので賛否両論あるところとは思いますが、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。原作がどぎついお話ですので、このくらい薄めてちょうどいいくらいではないかと。単なる「身分制度厳しき時代に咲いた身分違いの恋」というありがちな話にはなっていないと思いますよ。あの骨カリカリシーンのおかげで。
風雲児たち
巨星墜つ。
あり得たかも知れない未来を思うと、その死を惜しまずにはいられません。合掌。
幻の十日間が遺したものは良くも悪くも大きかったようで。安政の大獄後半部分はこのとき井伊直弼が味わった恐怖の反作用なのかとすら思ってしまいます。
しかし、斉彬侯、日本を変える前に親父さんからなんとかしなきゃいけなかったですね。てーかまだ生きてたんですねあの人。すっかり忘れてましたが。
その一方で今回は蔵六さんの名言がありました。「現場主義も結構だがそれなら天文学は宇宙へ行かねば分からないという事になる」「美しい宇宙の法則も紙の上に再現できるから私は萌えるのです」お見事です。現場主義だけでも机上の空論でもダメ。現実と理論がかみ合うから「萌え」なわけですな。文系人間の私にもちょっとしみました。
料理屋花善物語
「この器がはっきり申しております」いいなあ親方。これ読んで思わずこの日の夕飯は妻に任せず私が作ってしまいました。三十路になっても漫画に影響されやすい生き物です。
娯楽の少ない時代であればこそ、そして飢饉という言葉が肌に迫る恐怖であった時代であればこそ、食べる楽しみという言葉には、想像もできない重みがあった事と思います。
人斬りの走馬灯
司馬遼版人斬り以蔵とはまたひと味違う悲哀のこもったお話でした。貧窮問答歌そのまんまの苦境が支配階級であるはずの武士の家で起こっていたという事実は他国では理解されないでしょうねぇ。ドイツなんかだと郷紳と呼ばれる階級は結構貧しかったそうですし、そうでもないのかな?
それにしても「一つぐらい…人間らしい事を…」という思いが結果として師匠を売る形になったのは歴史の皮肉でしょうなあ。
でんぢらう日記
親孝行は難しい。特に性別が違う方の親に対しては。あと、嫁孝行も難しい。身につまされました今回の話。
剣客商売
グロいお話でした今回。いろんな意味できつかったです。これはこれで楽しめたのですが。己の面が原因で家督も継げず、17歳にして流人同然の身の上。これだけでも醜男の私には結構きつかったんですが、その歪みが生んだ技のキレと性的志向。きっついなあ。
最後、名人上手の手にかかって生涯を終える事ができたのがせめてもの慰めでしょうか。剣の道を知らぬ私には想像もできぬ事ですが、そんな事を思いました。
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