楽園 Le Paradis 2 感想
・シギサワ先生独特の『屈折』が1枚のイラストに凝縮されてます。雨降りしきる海辺でビニール傘をさし、岩の上に膝立ちで乗って、画面外から伸びてくる手の親指を噛んでいる女性。意味するところは各自で考えましょう、という感じの人を引きつける表紙ですね。
・あと、「女の子なんて、天使だ。」というフレーズは二宮ひかる先生が『恋人の条件』という短編集の中書きでお書きになっておられますな。
・帯に『オール読みきり&描きおろし』って書いてますけど、明らかに続きモノになってるお話がいくつか。
ディアティア
・毎回色んなものの感想を書いていて思うのが「ああ、もっと語彙力があれば。表現力があれば。このものの持つ良さがしっかり伝えられるのに」ということなんですが、このシリーズについては特にそう思いますね。前回この作品の感想がなかったのは要はそういうことです。今回だって納得している訳ではないですが、どうしても書きたくなってしまったので、恥を忍んで無理矢理にまとめました。
・高校時代、本作品の展開と似たような経験をお持ちの方も多いのではないかと思われますが、幸か不幸か私もです。
・至らない自分を抱えきれなくなって、でも生きていかなくてはいけなくて。毎日毎日襲いかかってくる現実に小さな傷をいくつも負わされながら、なんとかその日1日をやりすごして。愛する人に受け入れてもらえない現実と、愛してくれる人を受け入れられない現実とに苦しんで。嗚呼、大人になって良かったなぁ、大人になれて良かったなぁってしみじみ思います。あの状態のまま一生生きていくんだったら、きっと耐えられない。
・でも読まずにはいられないんだよなぁ、この漫画。
かまくりあん
・えすえふってこういうことを言うんだよなぁ、ってな作品でした。宇宙やワープ航法が出てくるだけがえすえふではないことをとうの昔に知っていたはずの私ですが、沙村先生の作品を読むたびに、その理解がいかに薄っぺらなものかが身に染みます。
・6ページでこういう世界を構築できるのってやはり才能だと思います。
・「男は火鉢、女はかまくら」ですか。伝統的な価値観だとむしろ逆っぽいですけども、敢えてこう書いたんでしょうね。沙村節と言っていいのかどうかは不明ですが、そんな印象を受けました。
・うちの妻はこともあろうに『ちゃんと載ってる!編集部すげぇ』とか抜かしやがりました。ついさきほどそれが我が家の統一見解になりましたが。
GAME OVER
・手玉に取るってのはこういうことなんでしょうなぁ。
・取られる側も不愉快でない。そこがこの作品の読後感を良くしている所以だと思います。
・赤面する女性ってのは可愛いと思いますが、本作品の場合は一入でしたなぁ。
レセプタクル
・やや下品で、それだけに欲望にストレートな女子2人組のお話。しかもおまけつき。
・私会話劇大好きなのでこれのシリーズ化を希望します。
・黒咲先生すげぇなぁ。生々しい。
・おまけのほうが暴走しててとんでもないことに。もっとやってください。
・腐女子は欲望に忠実な事が多いですが、作中のこの人は駄々漏れ過ぎです。いいぞ、もっとやれ!
木曜日のサバラン
・こういうお店がウチの近所にも無いかなぁ。おいしいケーキと鉄道模型いいなぁ。
・踏み込まれたくないなぁ。この現場は。
・「やましいこと無いんだったら隠す事ないでしょ!?」ってのはオトコゴコロをご理解いただけてない感じですな。そう言いたくなる女性側の心理は理解しているつもりですが。
・そして夫婦は1つ、理解を深めあう。
誰にも言えない
・シギサワ先生、今回もナイスヒット。刺さる刺さる。
・人に惹かれることは恐ろしいことだということを思い出させてくれました。
・「あるべき位置へ」という言葉が妙に刺さりました。どうしてシギサワ先生は何気ない言葉を矢に変えることが出来るのだろうか…。
・「本当はずっと」黙っていなくてはいけないこと。でも、黙っていられなかったこと。身体が求める以上に心が求めるから、止まらない。
・そして、言ってしまった一言。
・その一言を境に『同現実と折り合いをつけていくかの算段』から『どうやって破滅と向き合うか』に切り替わるところなんぞはもう絶品でした。たまりません。
ひたひた
・題字が二宮ひかる先生でした。交流がおありだったとは知りませんでした。
・火持ちの悪い服って…。
・相変わらず脱がすのがお好きですな。
・〆の一言でニヤッと出来たら、あなたは私の同志です。
オンリーワン
・ワンコイン話、再び。所謂同工異曲というヤツですな。
・「あたしなんかとヤってくれる人なんかそーそーはいないさ」を初めとして色々なエッセンスが『シュガーはお年頃』から流れ込んできてますね。それらの要素が34ページで綺麗にまとまってます。
・千々に乱されるオトコゴコロ。でも、オンナゴコロはもっと乱れていたかも知れない。それを確かめる勇気と行動力が無い限り、知ることは出来ない。
・実はこの話、二宮版ハルヒなんじゃないかなぁ、なんて勝手に1人で思ってみたりします。もし読んでみて同意不同意ご意見おありの方はコメントや拍手のほうで書いていただけると幸です。
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