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ふさ千明のおたネタ日記

漫画、アニメその他諸々の感想がメインのブログです。現在は「ここだけの話」シリーズについての感想を中心に運営しております。毎日15時の更新は終了し、現在は再び不定期更新に戻っております。

アニメ「かくしごと」第2話 感想

過去に書いた漫画版の感想と一部かぶるところがあるとは思いますが、どうかご容赦ください。


Aパート「ビーサンとB4」
・出だしが順番入れ替わっていきなりスタジオの様子から入ったり、時計がデジタルからアナログになっていたり、十丸院がいなかったり。色々変更点がありますね。こういう差異を楽しむのもアニメ化ならではですが、違い探しが楽しくなって感想を書くのがどんどん遅くなります。
・「原稿?なにそれ」酸素欠乏症っぽいこの言い方。
・「そんなの原稿終わってからでも」「出来るだろう!」でも包むまではしないと原稿はなぜか進まないのだ。なぜか。
・「餃子作ったから間に合ったんだろうが」「このドシロウトが!」改めて全面的に支持します。
・そして。
 こういう事を書くとイメージがかぶらないように演じておられる声優さんには非常に失礼かも知れませんが、神谷浩史さんと佐倉綾音さんという久米田作品TVアニメ二大主人公の中の人が共演するというのは絶望先生アニメ化のニュースに驚愕していた人間からすると非常に感慨深いです。


・ニコニコ動画で「文化的すぎる」と大絶賛のオープニング。全く百見様の多いアニメだ(おまいう


・「今、私たちは臨海学校に来ています」臨海学校、地引網…うっ頭が。翔んで埼玉で千葉の地引網シーンを見て『みんなネタだと思ってるだろうけど臨海学校で地引網を実際やるからな』と内心微苦笑していたのは私です。
・「お父さんのカレー、甘くておいしいね」何度でも言おう。甘くて美味しいカレーが理解できない。
・何度見てもキャンプファイヤーのシーンで『かってに改蔵』を思い出さざるを得ない。
・「そして」「さびしい」くそうカワイイな。ここは中年男性を可愛く演じさせるならやっぱり神谷浩史だな、と思わせる名演。
・アシじゃなくて先生が運転しているところに違和感があったりなかったり。多分免許持ってるのが先生だけだったりとか、そもそも後藤先生自分の車を他人に運転させるの嫌がりそうだなとか、色々想像が広がります。
・「鎌倉病のおかげだ」「今日行くのは千葉だけどな」拙ブログで過去に書いたかも知れませんがもう一度。千葉の御宿とメキシコのアカプルコは姉妹都市ですが、リゾート感でいうと絶望的に鎌倉の圧勝。
・「遠すぎてアシスタントがこない!」これは今だとリモートワークで解決しそうですね。昭和は遠くなりにけり、という話なのか。
・「暗くなるから漫画の話禁止だって」なぜか『野球の話禁止』に聴こえてしまった私。飢えているのか疲れているのか。
・坂降りるシーンの疾走感を見て思ったんですが、この作品で一番アクションシーン多いのは後藤先生。
・「不審者!」「後藤先生何やってるんですか」ホントにな。
・「照れるー」この言われ慣れてない感!素晴らしい。
・千葉でヘラクレスオオカブトが見つかっても『ああ、飼われてたヤツが逃げんたんだろう』でおしまいだろうとかそういう冷静な思考を求めてはいけない。父親というのは娘が絡むと判断力が豆柴並みになるそうで。
・「ナーニ ワタシの息子 キンタマシマシのファンよ」黒歴史にしている割には色々活用しているな。そしてワールドワイドな人気のきんたましまし。
・「もしかして後藤先生私の事…」「でもダメよ一子 生徒の父親じゃない」これに『被愛妄想』という秀逸なコメが付いていた事をご報告させていただきます。こういうセンスの人がSZBHでレジー賞もらったりするんでしょうねぇ。
・「ママに教わらなかったの?」ここから一子先生のターン。それまでのポケポケイメージから一転教師の顔になるのが秀逸。
・「子供は子供なりに」「現実逃避しているのかもしれない」いじめられる等辛い事が多いと上手くなりますよ現実逃避。それをプラスにするかマイナスにするかは本人次第。
・アシの愚痴が追加されているのは生々しくて良いですな。
・「部屋で水着着るのやめてもらえますか?」直視できてないのが実に良いです。
・「現代の若者は物が無いと時間も潰せないのか」ここだけ聞くとおっさんの昔語りですが、この後の内容が時代無関係のヤバいやつという…。
・紙と鉛筆があったら即席でボードゲーム作れるだろうとか考えてしまう私。
・「漫画描いてるんだよ」「オレにも描かせろ!」現実逃避でやるのが一番楽しいんだよ。何事も。
・「カレーって」「何味?」こども哲学。


Bパート「おかない かかない しあげない」
・クッションネタオールカットという大胆な手法。でも知らないひとは気づかないくらい違和感なく仕上がってますね。お見事。
・ここの火災警報器の音かっこいいなぁ。
・「まんが臭を消せ!」まんが臭とは一体。ホワイトの臭いとかですかね。デジタル化で失われた文化のひとつなんでしょうか。
・姫ちゃんのモノマネする筧さんが後で後藤先生に怒られるシーンは毎回脳内補完しています。作中だと絵だけに突っ込まれてますが、きっと演技にも不満だったに違いない、と。
・「ヘンタイ」娘にデレる父親は変態では無いと思います。
・「出張中で北海道にいるんです」編集者、出張、北海道で『ああ、荒川先生か島本先生絡みか』と即座に回る私の脳。
・解説シーンの『昔は風俗のチラシや看板などによく見られた』は当然オールカットされております。円盤で足してくるような事はたぶんあの会社ではないのでやらないと思います。
・それにしてもお面、わたがし、射的とグッズが制覇してたらピカチュウ並みですな。
・警報器再び。訓練は実戦のごとく、実戦は訓練のごとく。
・羅砂はサービスシーン担当だなぁとつくづく。
・「公安警察です」これ実際のエピソードが元だそうですが、顔も似せたんでしょうか。
・「ビニール袋に入った白い粉は!」「わたがしです」上手いよねこのつなげ方。
・「誤解される恐れがあります」描き方、だからセーフ。
・「こんな漫画家の仕事場があると思うか」「です…よね」営業成績ではなく読者の人気投票順位グラフが貼り出されていた仕事場は見た事があります。ライバル漫画家さんと比較になっていて抜いた週は赤丸が付いていたり。
・「こんなものが」ここで一番ツボなのは女性がいるのに女性用タイツが問題視された事ですかね。
・藤田先生ネタはオールカット。他の漫画家の仕事場ネタも。楽しみにしていたのに!
・「うそつけ!証明できるものはあるのか」「まぁ私物ですけど」これが本当の証明写真。
・「全裸写真は見逃してくれたんだ」「そもそも出版してるし」出版当時セーフだったものが今はアウトというものもあります。何とは言いませんが。
・ここから先をグダグダ書くのは無粋というもの。ギャグパートの直後にしんみりする話持ってくると涙腺に効く。

エンディング
・普通に見た後、目を閉じて本編を脳内再生しながらもう一度聴きなおすとまた違った味が出てきました。

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アニメ「かくしごと」第1話感想

アニメ化を祝して、久々に積もり積もった埃を払って一時的にブログを再開いたします。


オープニングがオサレで下ネタ漫画家が主人公のアニメだとはとても思えない。

Aパート
・あら。お母さん能登さん?
・「エッチなやつだ!」『下ネタ』をえっちと呼ぶのは未だに違和感がある45歳児です。
・「姫に知られたらどうする!」死んだらどうする!とは又違う良き叫び、いただきました。
・全裸は『ユルい格好』なのか、という問題。
・「人のパパやママの仕事聞いちゃいけない」「個人情報で職業差別につながるから」色んな意味で『人には言えない職業』が存在しますからね。昨今だと医療従事者だと知られると色々面倒なようで。
・「私はワンピースやアンパンマンを描いてるんじゃありません」後者を描いていた方はもう鬼籍に…。
・「きんたましまし読んでました」「二度とその言葉は言わないでください」『読んでました』を喜べない悲しみ。
・「ポリキュア、描いてやってくれる?」アンパンマンやワンピースはそのままなのにこっちは『ポリキュア』なのは原作どおりです。
・「描くんだ!」「しかも上手いし!」場数を踏むので…。
・十丸院の声優さんすごいなぁ。イメージしていた以上にダメ人間ボイスしてる。
・「パワハラー!」ここは特に聴きどころ。
・「司会者ですか?」すいませんここだけわかりませんでした。伊東四朗でもタモリでも関口宏でもないですよねぇ…誰だろう。
・「プライドないんすか!」ないのではなく発現場所が一般的なケースと異なるのです。
・〆の会話、何度も繰り返して聴きたくなりますな。
・というところでAパート終了。ところどころカットされてますが、概ね違和感なく見られています。


Bパート
・「名乗る程の者ではありません」ペンネームって大事だなと思います。実は私もうっかり本名で二次エロ小説書いてしまったことが…。
・「漫画家で偉いと言ったら」「売れてる人でしょう」「だよなぁ」落ち込みからの裏拳ではなく裏拳からの落ち込みでしたか。こういう楽しみ方もアニメ化のメリットですね。
・「ダークファンタジーとか描いちゃうぞ」これ、久米田先生の作品として真面目に読みたいんですけど、無理ですかねぇ。……どうしてもこらえきれずにギャグとか入っちゃいますかね。
・「漫豪です」こういう独特の造語を個人的に『久米田語』と呼んでいます。
・「売れてなくても大物感ある人」実名は差し控えますが結構いますね。
・そして漫豪登場。いやぁ、なんでしょうね。この先を知っているのにワクワクする。
・「だーって感じに描いて」来た!期待以上の動き。モデルの方もリアルでこんな感じなのは久米田先生の過去作でもお馴染み。
・「描きたいものを」「描かせないのが僕の仕事です!」ダメな方向には頼もしいという正統派ダメ人間。
・この「めぐろ川たんていじむしょ」の面々を見ているとなぜかじんわり瞳が潤むんですが歳のせいでしょうか。
・おしゃPのくだりは都市伝説の形成過程として非常に秀逸。
・動きも声も魔物感あるなぁ…。
・個人的には「漫画の置いてない本屋」っておしゃれではなく神保町の稀覯本専門店なイメージなんですが。太陽の塔の近くにあるカフェ併設の本屋にも漫画置いてましたし。東京は違うんでしょうか。
・魔女汁って声で聴くと一際来るものがありますな。
・この〆の会話が沁みるようになるとおっさん度数もだいぶ高いんだろうなぁと自覚します。


エンディングもやっぱり「きんたましまし」とか連呼される作品のものとは思えないオサレ度合い。てか聞いたことあるなぁと思ったら大瀧詠一か!ちなみに歌と作曲のところで表記が違いますが同一人物です。歌手としては大滝表記なのです。さらにちなみにもう故人で、この曲自体も40年近く前の曲です。
この歌、若い方にはどう聞こえるんでしょうか。やっぱり『古い』んでしょうか。

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ズイパラ旅行案内

もうすっかり周回遅れの記事になってしまった感はありますが、まだ終わった話でもありませんので八景島シーパラダイスにて第三次瑞雲祭りにお出かけの皆様にいささかのご案内をさせていただこうと思います。

 以下に記すものは私個人の情報や知見経験に基づくものであり、状況の変化等により全く役に立たないということもありえますのでその点をご了承いただいた上でご参考ください。


  前泊の方へ
 開園時間の朝9時(土休日。平日は10時)から動くことをお考え場合、近県以外の方には前泊をお勧めします。
 最寄り中の最寄りはもちろん八景島シーパラダイス内にあるホテルな訳ですが。これは確保するのがかなり難しいと思われます。
 となると近辺に宿を取ることになりますが、この時の着目点としてはどうやって八景島シーパラダイスに移動するか、ということになると思います。
 基本的には京急金沢八景駅かJR新杉田駅からシーサイドライナーで八景島へ移動となります。つまり、この両駅に1本で行けるところに宿を取ると便利、ということになります。
 宿泊地に関しては距離的な近さもあり横須賀をお考えの方も多いのではないかと思いますが、こちらはあまりお勧めはいたしません。
 なぜかと言いますとこのあたりはホテル数があまりないのです。そこへ持ってきて艦これイベント目当ての場合考えることは皆同じ、というわけで横須賀に固執するくらいでしたら近隣の逗子、鎌倉、大船、横浜まで網を広げて探す方をお勧めします。このくらいの距離でしたら横須賀で無理なくディナーを楽しむことができます。
 なお、横浜~横須賀間はJRで小1時間かかりますが京浜急行(以下京急)ですと快速特急を使えば30分程度です。
 ちなみにコラボ実施中のローソン横須賀店最寄りである汐入駅は京急の駅です。

 なお、横須賀ディナーはなくても構わないという方は川崎や蒲田も十分な圏内に入りますので申し添えます(Twitterでウズメさんにご指摘いただきました。ありがとうございました)

 宿の取り方に注意点があるとすれば、あまり旅行をしたことがないという方の場合、多少お値段が高くても駅に近い宿を取ることをお勧めします。土地勘のない場所でスマホなりなんなりの地図を頼りに宿までたどり着くのは結構大変ですし、翌朝またそこから駅に辿り着かなければならないのも労力を要します。
 10連休中は宿が空いていない場合も多いと思いますが、条件を変えて探すと思わぬところに空きを見つけられることもありますので諦めずに探していただくことをお勧めします。


 夜行バスの方へ
 移動と宿泊を兼ねられる手段としては非常にお得感が高いですが、疲労という点ではそれなりのものがありますので広大な敷地をスタンプラリーで周り、また今回は体力を要するアトラクションがあることを考えると正直お勧めは致しかねます。
 バスの到着地としては横浜、川崎、鎌倉、藤沢等があります。これらが取れない場合でも、東京都区内に7時台に到着する便でしたらでも開園時間には間に合う、もしくは開園直後くらいには到着できます。
 到着地からの移動方法はここにつらつらと書くよりもその場にてスマホで検索していただくのが手っ取り早いと思います。
 横浜着が7時頃の場合は一旦横須賀に出てからでも9時までに八景島シーパラダイス入りが可能です。時間的に開いていないお店も多いですが、ヴェルニー公園の記念碑等を見て回ることはできると思いますし、停泊する軍艦を眺めることも可能です。


 サンライズ瀬戸/出雲をご利用の方へ
 サンライズ瀬戸/出雲は寝台特急電車です。夜行バスの鉄道版とお考えいただくとわかりやすいかと思います。
 香川県高松駅もしくは島根県出雲市駅を出発し、岡山、姫路、三ノ宮、大阪等に停車し夜通し走り続けて東京に早朝到着します。途中、横浜駅にも停車しますのでそこから京急及び根岸線経由で八景島駅に移動可能です。
 利用には乗車券の他に特急券、寝台券もしくは指定席券が必要で夜行バスよりも高額ですが夜行バスと違って完全に横になれますし足も伸ばせます。カードを買えればシャワーも浴びられます。個人差はありますが疲労度は大きく違うと思いますので可能であれば多少の値段差はありますがその後の祭りのことを考えますと私としてはこちらのご利用をお勧めします。
 運良く寝台券もしくは指定席券が取れた方は6時45分に横浜駅で下車したあとは上述のとおり早朝の横須賀を少し巡ってからでも十分開園時間に八景島入りすることが可能です。
 ただし、1日1本しか走っていない上に人気があるので本当に運が良くなければ乗れない列車ですが。

 当日移動の方へ
 羽田空港経由の方は京急利用で金沢八景駅へ出てシーサイドライナーで八景島駅へ。

 JR東日本の各新幹線をご利用の方は東京から横須賀線経由で横浜駅にて根岸線に乗り換えて新杉田からシーサイドライナーで八景島駅へ。

 東海道新幹線をご利用の方は新横浜から横浜線に乗り換えて桜木町行きに乗ってください。東神奈川行きですと乗り換えがいささか面倒になります。桜木町では同一ホームでの乗り換えで大船行きに乗り(磯子行きはスルーしてください)、新杉田からシーサイドライナーで八景島駅へ。

 というのが標準的な移動になると思いますが、列車のトラブル等によりその時々で最適ルートは変わることもあります。ご利用時には最新の情報に基づいていただくようにお願いいたします。

 それでは皆様、どうか良き旅路、良き祭りを。

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新婚のいろはさん 感想

先日『三年差』の感想を書いてみて思いの外楽しかったのと最近ぱったり小説が書けなくなってしまったのでならば封印することもないかと思い、ちょこちょこ感想をアップしていくことにしました。
 などと言いつつごく短いながら『三年差』の二次創作小説をpixivにアップしたりもしているので今後については何のお約束もできない状態ですが。

 しょうもない前置きはこのくらいにして。
 OYSTER先生作の『新婚のいろはさん』は幼なじみである始くんと彩葉さんの、からっぽの部屋から始まる新婚生活を描いた漫画です。これを書いている現在、『月刊まんがタウン』誌にて連載中で単行本は2巻まで刊行されております。
 本作はふたりが結婚して新居を構えるところから始まります。ベッドと机と卓上灯しかないところから「初めての共同作業」を無事こなし、ふたりが家を築いていく過程を楽しんでいくのが本作の醍醐味だと思っています。
 喜びあり不安ありいちゃつきあり。幼なじみでありながらも空白期間があるゆえのギャップもあり。
 その合間合間に姉さん女房の彩葉さんが色々なイタズラや仕掛けを繰り出すアクセントがあって。自分で仕掛けておいて怒ったり照れたりする彩葉さんがとにかく可愛いです。
 彩葉さんは「やっぱりほおっておけない」とか「私くらいさびしがれ!!」とか名言も多くて実に私好みです。

 また、身一つで知らない土地に嫁いできたところなど我が家との類似点なんかも結構あったりして、その辺も個人的に引き込まれた理由の一つであるかも知れません。
 
 そして。4コマ漫画を愛する哲学少女早倉さん、女子力が高い漫画家仲間の花飾先生、格言ラーメンの謎めいた女性店主と脇を固める面々も皆一癖あって愉快です。
 脇キャラで私の一番のお気に入りは冷静ようでいて好きなことにはしっかり熱くなり、時に暴走までする早倉さんです。暴走した後の打ちひしがれる姿まで大好きです。水泳部なのでキュートな水着姿もおがめます。

 脇キャラといえば始くんの育ての親っぽい春江おばさんの登場予定はあるのか、それとも刑事コロンボシリーズにおける『うちのカミさん』ポジ(もしくはスレイヤーズシリーズにおける『故郷の姉ちゃん』ポジ)で登場しないのか。出てきたら最終回っぽいような気もするので見てみたいような見てみたくないようなアンビバレンスがあります。

 最後に。漫画家の始くんこと軒並ライジ先生作品として作中に掲載されている4コマ漫画も個人的にツボです。一番好きなネタは今のところ「そうめん世界一」です。これは確かに早倉さんもファンになるな、と納得の出来でした。

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三年差 感想

島崎無印先生の「三年差」(ガンガンコミックスpixiv)を読んで、どうしても衝動が抑えきれず久しぶりにブログで感想を書いてみようと思います。当然のことながら大量にネタバレを含んでおりますので未読の方はまずご一読いただいてから以下をご覧いただければと思います。
 また。久しぶりにもほどがあるというくらいブランクが空いているのでどのくらい頑張れたかわかりませんが精一杯書かせていただきました。
 そして当然のことながらこの文章は私の個人的な感想であり、作者である島崎無印先生の意図するところとは全く無関係であることを先に明記させていただきます。
 
 さてさて。長ったらしい前置きはこのくらいにして。
 私は小さい頃から割とたくさんの漫画や小説を読んできましたが、その中でも恋愛物に関しては一つの不満がありました。
 多くの場合「紆余曲折を経てふたりは晴れて恋人同士になりました。めでたしめでたし」で終わってしまって、どういう風に幸せになったのかが描かれることがほとんどなかったのです。
 物語としては山谷のない場面は特に盛り上がるわけでもないのでやりづらいのかも知れませんが、私は「苦労した先にある幸せ」を求める子供でした。
 そして本作は私の子供の頃からの強い渇望を満たしてくれるものだったのです。

 三年差、距離の隔たり、そして何より異性として見られていないという最大のハンディを乗り越えて見事『追いついた』瑞希ちゃんの、その後の幸せっぷりはブラックコーヒーを善哉に変えるくらいに甘く暖かなものでした。

 小さな頃からずっと想い続けていたのに、当の本人はどこ吹く風の知らん顔。妹扱いどころか一時は弟みたいな扱いだったり。そういう態度に接するたびに瑞希ちゃんの心は傷ついてきたんだろうと思います。
 だからこそ、結婚してから『今までやりたくてもできなかったこと』にチャレンジしてみたりお姉さんぶったりしたがるんだろうなと。
 そして。そんな今までの負け戦を取り返すべく色々仕掛けているようなのですが。惚れた弱みというかなんというか。
 いってらっしゃいのチューにしても「そういうとこだぞ和くん!」「好き」にしてもあんまり勝ててないなぁという印象です。
 ただ、今までと違って結婚後の『負け戦』の味は苦みや痛みを伴うものではなく、非常に甘い甘いものだと思われますのでそういう意味では報われて良かったなぁ、と。

 そして。和くんはそんな瑞希ちゃんの想いの気づいていなかったのか、気づかないようにしてきたのか。作中、中2の瑞希ちゃんに「ドキドキした」という“自白”があるわけですが。
 それを手掛かりにして読み解くとやっぱりそれなりに瑞希ちゃんのことを意識はしていたようですが、それを敢えて封じていたのだろうなと思います。それが意識してのことなのか無意識なのかはまだ推測するだけのエピソードがありませんが、個人的な経験則では大体男子というのは無意識下で好意を持った女子に嫌われるようなことを避けているものです。
 私が和くんの立場だとしたら迂闊に瑞希ちゃんに好意を示して嫌われたり気持ち悪がられたり遠ざかられたりするくらいならば、いっそ現状維持に努めようとするでしょう。懐いてくれている幼なじみという貴重な存在を失う事を考えたらその先にどんな幸せが待っているかも知れなくとも、次の一歩は踏み出しにくいものです。

 こういう表現が正しいかはわかりませんが、人生において恋人や彼女は作れたとしても幼なじみは二度と作れないのです。
 自分の小さい頃からの失敗も成功も、笑顔も泣き顔もその全てを知ってくれている幼なじみは何にも代えがたいものだと感じればこそ、おいそれと恋愛感情を抱いたりできなかったのではないかと思うのです。
 男というのはちょっと優しくされただけで相手が自分のことを好きなんじゃないかと思ってしまうくらいに勘違いの名人であると同時に、その勘違いの名人であることを自覚している生き物でもあります。
 自分の気持ち及び瑞希ちゃんの気持ちに勘違いがあった場合に取り返しがつかなくなったらと思うとそれを押し殺してしまおうとすることは無理もないのかも知れません。 
 だからと言って勇気を振り絞って東京まで追いかけてきた瑞希ちゃんの決意に気づけなかったのは流石にどうかと言わざるを得ませんが。


 最後に今後読んでみたいネタを羅列して締めたいと思います。

・呼び方が「和兄」から「和くん」に変わった瞬間
 これは期待というよりもほぼ確信に近いものがあります。島崎無印先生のことですから私がこんなところであれこれと気を揉むまでもなく素晴らしい作品に仕上げてくださるものと信じております。

・ちゃんと彼氏彼女になってからの初デート
 やっぱり渋谷なのかそれとも別の場所なのか。「帰りたくないなぁ」と駄々をこねる瑞希ちゃんを新幹線に無理やり押し込んだりするのか。興味は尽きません。

・3人で車に乗っている時に自分がトイレに行きたいのに尚人くんをダシにしようとする瑞希ちゃん
 「尚人、トイレ行きたくない?」と聞かれた時に賢くしかも気配りの出来る尚人くんはどうするのか、非常に興味があります。トイレに行きたくなくても(ああ、ママがトイレに行きたいんだな)と察して「パパー、トイレに行きたい」と言うのか、それとも「パパー、ママがトイレに行きたいって」と真実を告げてしまうのか。


 という感じで、感想とも分析ともつかない内容になってしまいましたが、以上です。何年かぶりにこういうものを書いたので非常に拙い文章ですが、拙いと自覚しつつもそれでも書かずにはいられなかった、というところに私の思いを感じていただければ幸いです。そして出来うるならばこの素晴らしい作品が一人でも多くの方に読まれるようになれば幸甚です。

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台湾旅行記2018(6日目)

泣いても笑っても今日が帰国日である。今日は行くことを決めている場所が1ヶ所だけあった。
 二二八和平紀念公園である。
 二二八とは何かと言えば。1947年2月28日に国民党政府の政策に反対する人々が蜂起し武力鎮圧された事件のことを指す。その後台湾は戒厳令が布かれ国民党政府による恐怖政治に長く苦しむこととなった。
 戒厳令は1987年まで続き、最終的に言論の自由が保障されるようになるまでには李登輝総統時代の1992年までかかった。
 その二二八事件の犠牲者を悼み、またその悲惨な後世に記録を残すために作られたこの公園と二二八事件で弾圧者の立場にあった蒋介石を称える中正紀念堂がともにあるところに台湾の複雑さが表れている。
 今まで訪れたことのなかったこの公園に、今回は足を向けた。
 一般的な公園としての機能ももちろんあるので、太極拳らしきなにかをやっている一団に遭遇したりもする。
 紀念鐘や平和のモニュメントに祈りを捧げ、事件の記録が残された追思廊へとたどり着いた。ここには事件の経緯が展示されているほか、亡くなった人の顔写真も掲示されている。その掲示の前にお供え物として持ってきた日本酒を置き、手を合わせる。
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 公園内には事件に関する資料館もあるのだが、時間が早いのでまだ開いていない。
 実になんとも中途半端ではあるが、大事をとって早めに出発するのでやむを得ない。今回は光華商場にも行っていないし、色々と不完全燃焼気味のところはあるが一時は旅行そのものを断念しなければならないかも知れなかったので来られただけでも良しとしたい。

 ホテルに戻ってチェックアウトし、徒歩でMRT桃園線の台北駅へ。ここでインタウンチェックインして荷物を預ける。機械のトラブルで若干時間は取られたものの買い込んだあれこれですっかり重たくなったスーツケースは無事運ばれていった。
 この便利さを覚えてしまうと、もう元のやり方には戻れない。
 あとは残った自由時間をどう使うかなのだが、迷った挙句に昨日のドーナツ屋へと向かった。どうにもこうにもあのドーナツの味が忘れられず、炎天下にもかかわらず8つも買い込んでしまう。
 その場で食べたほかは機内や帰宅後にも食べてみたが、冷めてもしっとり食感で十分に楽しませてもらった。

 結局その後は寄り道せず、早めに空港入り。一直線に保安検査場を通過したその先にあるフードコートで昼食をとる。帰国時はここにある台湾料理の青葉で名残の台湾ご飯を食べるのが私の習慣となっている。
 今年は豚足づいていて、これで3回目か4回目になる。豚足という言葉から連想される脂っこさはなく、スイスイと入っていくので見かけるたびについつい頼んでしまうのである。
 
 食べ終えて一休みしてから免税店へ。ブランド品とか宝飾品とかそういうものには皆目興味がない我々のお目当てはKAVALANウィスキーである。
 免税とはいえ流石に最高級のものは買えないのだが、今年はちょっと頑張って2番目に安いものにした。最近日本でも出回るようになったとはいえ、おいそれと買える値段ではないのでこうして入手したものを大事に大事に飲むのである。
 他には特に欲しいものもなかったのだが、通りすがった免税のおもちゃ売り場に任天堂Switchが売っているのはともかく、ファミコンミニことニンテンドークラシックミニまで置いてあったのはどうしたものか。かくいう私もつい先日1年半も待たされてようやく入手したばかりなのだが、まさかここで遭遇するとは思わなかった。
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 毎年帰国時に桃園空港で色々なものに遭遇してきたが、衝撃度で言えば今年が一番かも知れない。それこそKAVALAN入手の喜びもどこかへ行ってしまいそうだった。
 買い物が済んでしまえばあとは帰国便の出発を待つばかり。例年帰国便は遅れるのが通例になっていたのだが、今年は幸か不幸かオンタイムであった。

 関空着陸時も、飛行機を降りてからも待たされることなく、過去にないほど実にスムーズだった。
 おかげで時間に余裕ができて、どこかの温泉に寄り道をすることも十分可能だったが、まっすぐ家に帰ろうとことで意見が一致した。それこそ風呂や夜食どころかコーヒーの1杯も飲まずに家路に着いた。

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台湾旅行記2018(5日目)

明日は帰国日であり、フルに使えるのは今日が最後。
 ではあるが、本日の予定は完全白紙。昨日を休養日にあてたことで気力体力ともに十分ではあるもののそれをどう使っていいのかわからない。ちなみに先般地震の被害があった花蓮を訪れるという計画は列車の切符が取れないことであっさりと頓挫している。
 この日はあまり天気が良くなさそうであり、屋外系のネタは避けようということになった。
 ならばということで今日は台湾のローカル線に乗ることにした。

 ローカル線と一口に言っても六家線や集集線や内湾線、深澳線に平渓線とある(沙崙線は乗車済み)。
 時刻表を見つつ「一番近いところにしとこうか」という無難な結論に至る。というわけで今回は平渓線完乗の旅に決定。余力があれば深澳線もついでに乗っておくし、余力がなくとも帰りには侯[石同]で下車して猫村に立ち寄ることも合わせて決定した。

 台北駅で平渓線深澳線の1日乗車券を購入。これが80元で、瑞芳までの乗車券を別途購入。こっちは區間車料金で49元。
 
 台北駅を9時25分に発車した列車はのんびり走って乗換駅の瑞芳には10時23分着。平渓線直通の菁桐行きは11時2分発なのでちょっと駅前をブラブラする。
 
 ほんのちょっと歩いただけなのだが、駅前に猫を何匹か見かける。猫村の侯[石同]ほどではないがここも猫に染まり始めているのだろうが。

 駅に戻るとホームにずらり並んだ人の列に出くわす。こういう時は端っこに行くのが良い。その甲斐あって無事座れた。三貂嶺から線路は分かれていよいよ平渓線に入っていく。
 入っていくというか、宜蘭線はここまで寄り添ってきた基隆河と分かれていくのに対し平渓線は並走を続けるのでここだけを見ていると平渓線のほうが本線であるかのような錯覚に陥る。
 山道を分け入っていく旅人のような足取りで列車は平渓線最初の駅である大華のホームにたどり着く。ここには「十分瀑布(滝)に行く人は線路を歩かないで!」という注意書きがあった。
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 車窓から見える道が不安をそそる細道ばかりなので気持ちはわかるが線路を歩く行為は大変危険である。
 大華駅を出て数分、右手に遊歩道が見えてくる。十分風景区と呼ばれる景勝地に入ったようだ。そのまま十分老街の町並みを突っ切って十分駅に到着する。ここで行き違いを兼ねてしばし停車。
 空が雨模様でなければせっかくのフリーきっぷを駆使して改札を抜け、何か買ってこようかとも思ったのだが。列車が平渓線に入った頃から降り出した雨は分け入るほどにその強さを増していく。停車しているホームが改札から離れていることもあって、下車することがどうにもためらわれた。
 多くの人はそんな雨など物ともせずにどんどん降りて行ったのだが。この空模様ではランタンも打ち上げられないだろうし滝に行くのも一苦労ではあろうがそれはそれで旅の思い出になるのだろう。

 というわけで、乗客の多くが下車したおかげで乗客全員が着席してなお空席ができる程度の乗車率になる。
 十分を出てしまうと、再び人跡乏しい山際を張り付くように走る。四国の予土線を思い出すような河と緑の車窓が続く。元々この路線は台湾屈指の菁桐炭鉱から石炭を運ぶ運炭線だったそうだが、確かにここには石炭貨車が似合いそうだ。
 並走する車道にも自動車の姿をあまり見ない。実に長閑な平渓線であるが、空だけがどうにもあまり長閑ではない。
 雨粒に妨げられてあまり景色を楽しめないまま終点菁桐に到着する。これでとりあえず平渓線は完乗となった。
IMG_2865

 折り返しの列車が出るまで15分しかないため昼食をとるというわけにもいかず。せめて駅のスタンプでも押して帰ろうとしたが見当たらない。駅の隣にある土産物屋に何やらたくさん置いてあったが、残念ながら菁桐車站と書かれたものはなく、押さずに車両に戻った。
 深澳線直通八斗子行きと変わった車両は小止みになってきた雨の中12時15分定刻どおりに発車する。
 山中をゆったりと駆け戻り、侯[石同]駅で下車。ここは今やGoogleMapにも載るようになった猫が主役の村である。
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 思う存分猫を愛でるその前に駅前食堂で昼食をとる。陽春麺なる見慣れぬ名前の料理がメニューに載っていたので頼んでみると、これがシンプルな味わいながら実に美味い。あまりに美味いので他でも食べられないものかと調べてみると割と有名な料理らしく、これまで12年何を見てきたのだろうかと少しばかりショックを受ける。
 それはさておき猫である。幸い雨も止み、かと言ってギラつく暑さでもなく。のんびり猫を求めてさまよい歩くのには最適な日和となった。
 木陰、植木鉢の隙間、歩道の脇、土産物屋の台の上、段ボールの中、草むら。そこにもここにも猫がいる。寝ているもの、座っているもの、くつろいでいるもの、散歩しているもの。あるがままのその姿を見ているだけでしあわせになれる。やはり猫は素晴らしい。

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 村の中を端々までひたすら猫を求めて丹念に歩き回り、だいぶ汗をかいたので猫のいる喫茶店で一休み。ここでも店の看板猫がテーブルの上に乗ってくださるという熱烈歓迎を受けた。テーブルに乗るだけでこちらに媚を売ったりせず気ままに過ごすところがまた良いのである。
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 濃密な猫成分を充填して台北に戻る。
 いざ夕飯というその前に。今回の旅の前に脆皮鮮[女乃]甜甜圏なる店のドーナツが良いという情報を得ていたのだがここまで買う機会を得ずに最終日になってしまっていた。このままでは結局最後まで行かずに終わるだろうと判断し、思い切って先に買いにいくことにした。
 小さい店らしく、わかりにくそうだということで結構な覚悟を固めての出発だったが台北駅の地下街から北側に向かって歩いていくと割とすぐ近くのところに店は見つかった。
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 長くはないものの列ができており、客は皆結構な量を買い込んでいく。そんなに美味いのならば我々も大量買いしてみようかと思ったが夕飯が食べられなくなってしまうのでグッとこらえて4つで我慢。せっかく揚げたてだったので通りの脇で食べてみる。サクサクではなくもちもちの食感。軽い甘さは後を引く。小さいながらも行列店なのが頷ける味だった。
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 もう一度並んでこれを夕食代わりにしてもいいのではないかと真剣に話し合ったが、明日帰国途中にもう一度買いに来るということでなんとか踏みとどまった。

 では肝心の夕食は何にするのか。
 今回の旅では台湾料理は結構食べたし、かと言って和食に飢えるというほどでもない。フレンチやイタリアンも美味い店が増えたらしいが、あまり惹かれない。
 こういう時はフードコートで目に付いたものをパッと食べてしまおうといつもの台北駅2階へ向かった。
 日本でもおなじみ鶏三和の親子丼がちょっと気になったが、何かが違う。うろうろしているうちに「これだ!」となったのが海南鶏飯。
 今年の台湾最後の夕食はまさかのシンガポール料理となった。2人前セットで300元は実にお値打ちである。
 これが安かろう悪かろうならば悲しいオチになるのだが、本場物を何度となく食べてきた家人が太鼓判を押すハイレベルな味だった。シンプルな蒸し鶏にチリとジンジャーの2種類のソースが組み合わさって舌を飽きさせない。
 鉄道、猫、美食と実に言うことのない幸せな1日はこうして締めくくられた。

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台湾旅行記2018(4日目)

前日が思いの外盛り沢山なお買い物デーだったので本日は本格的に休養日とすることに決めていた。
 ドアノブにDon’t disturbをぶら下げ買い込んでいたパンや果物で朝食とし、まったりと過ごす。
 食べ終えると、家人は洗濯をしたいということで荷物を抱えてコインランドリーへと向かっていった。ならばということで私もお土産用のパイナップルケーキを買い出しに行くことにした。
 というわけで。何度目かの移転により台北駅の西側に置かれることになった高速バスターミナルから基隆行きに乗る。
 30分程の乗車で港町基隆に到着した。
 港前の広場で毎年恒例の1枚を撮影してから、強い日差しを帽子で誤魔化しつつ目当ての李鵠餅店へと向かう。
 いつもの身振り手振りにてパイナップルケーキと、ここでしか見たことがないストロベリーケーキを30ずつ購入。毎年買っているおかげでおなじみになったピンクの大袋に詰めてもらってバス乗り場へと引き返す。
 部屋に戻ると先に家人は戻っていて、もう昼だが食事をどうするかという話になった。

 シーザーパークのレストランで食べてもいいし、どこか外へ食べに行ってもいい。「何が食べたい?」という話になって我々の脳裏に浮かんだのは台北駅にあった姫路駅の駅弁屋『まねき』だった。
 駅弁を買ってきて部屋で食べるのもいいのだが。どうせならやはり列車内で食べたい。
 「じゃあ折角だから」ということで出かけることにした。
 どこへ行くのか。あんまり近すぎても弁当を食べるのには向かない。
 在来線なら新竹、新幹線なら台中が良いだろうということになったが、在来線は直近の特急も急行も満席。
 じゃあ台中まで行ってデザートに現地の美味しいものを食べて帰ってこようという結論に至った。
 とはいうものの。台中はまだ行ったことがなかった。厳密に言うと通過のみで降りたことがなかった。なので土地勘がほぼない。
 ガイドブックをめくって調べてみると宮原眼科という店が目に止まった。ここはもともと眼科だった建物をリノベーションしたアイス屋さん。
 ネットの情報ではどうにもやたら並ぶらしいということだが、その場合は第四信用合作社という系列店(ここも信用金庫をリノベした店)に行くことで決定。
 売り場に行くと長蛇の列が作られていたが、券売機ではスムーズに買えた。ただし、直近の列車は指定席が満席だったのでグリーン車で行くことになってしまったが。
 待ち時間が短いので取り急ぎまねきの店舗に行くと岡山名物豚肉蒲焼便當(弁当)なるものが目立つところに置かれていた。お値段は1つ160元。
 不意打ちに弱い我々は1も2もなくこれに決定。
 13時11分、列車が台北を発車すると早速フタを開けてちょっと遅めの昼食を開始した。程よい濃さのタレに肉もご飯もどんどん進む。付け合わせの卵焼き、インゲン、ジャガイモ、紅ショウガと組み合わせて食べるとさらに良い。列車が桃園に着くまでには弁当は綺麗さっぱりカラになっていた。
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 グリーン車のサービスでもらったコーヒーを飲んで食後のシメとした。
 14時15分、定刻どおり高鉄台中駅着。
 ここから台鉄新烏日駅へは徒歩移動。20分の待ち合わせで新竹行き區間車(各駅停車)に乗る。
 日曜日とはいえ結構な混み具合。14時45分、台鉄台中駅着。

 いつの間にか人口で台湾第二の都市になっていた台中(それまでは高雄)に12年目にして初の訪問。
 ちなみに現在の高架化された台中駅舎は3代目で先代の駅舎は大正6年完成の赤レンガ造り。現在は国定古跡にしていされているため取り壊されることなく3代目の横に変わらず鎮座している。
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 その2代目台中駅から歩いて5分ほど行くとこれまたレンガ造りの大きな建物が見えて来る。これが宮原眼科。
 思っていたより遥かに大きい。個人経営の病院というイメージからはかけ離れた規模である。店内はイートインと物販に分かれており、物販はまだしもイートインは事前情報どおりの大行列。店の外に延々と伸びていた。
 ということでこちらも事前の計画どおりさらに5分ほど歩いた先にある第四信用合作社に移動する。
 こちらにも行列ができていたが、宮原眼科よりは遥かに短く冷房の効いた店内に並べたのでならばいいかということになった。
 並んでいる最中に店員さんが注文を取りに来る。我々が言語不如意の日本人と知ると日本語がわかる方に交代してくれて、無事注文完了。
 非常に凝ったトッピングなので注文してからも列の進みは遅い。しかし多彩なアイスの種類を見ているだけで結構飽きがこない。

 ようやく我々の番が回ってきたのでアイスを受け取り席についた。
 それにしてもでかいアイスだ。もちろん単に大きいだけでなく味も実に良かった。グドくない爽やかな甘さは長蛇の列にも納得できるレベルだ。
 その上トッピング各種もワッフルコーンもカサ増しの賑やかしではなく単体で食べても十分美味い。
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 ただ、美味いのはいいのだが冷たいものを涼しい店内で食べているとあちこちやられそうになる。こうなることを予期して注文しておいたホットの紅茶が胃に嬉しい。

 せっかく来たのだから他にも1カ所2カ所廻ってから帰っても良かったのだが。
 この日だけなのかいつもそうなのかはわからなかったが台中市街地はどこもかしこも賑わっていて、うろつくにもちょっとためらわれるレベルの混雑ぶり。
 無計画に来たこともあって疲労が蓄積する前に帰ることにした。
 帰りは台鉄でそのまま台北まで乗って帰ろうと目論んだものの、狙った列車がことごとく満席。彰化から海線経由で、というルートまで試したもののこれすらいっぱいという。自願無座(立席乗車)という裏技にチャレンジしようかとも思ったが、2時間半の立ち詰めは流石にきつい。
 仕方ないので来た時と同じ新烏日からの高鉄ルートで戻ることにする。
 台中から乗った區間車は積み残しが出る混雑っぷりで車内はラッシュ並みの押し合いへし合いだったが、乗車時間10分なので致命的なダメージにはならずに済んだ。

 高鉄台中駅で券売機をあたってみると来た時同様指定席が満席であり、帰りもグリーン車をおさえる羽目になった。これで「贅沢にも往復グリーン車で台北から台中までアイスを食べに来ただけ」ということになった。
 ひたすら混雑混雑だった台中が別次元の出来事であるかのようにゆったりした空間でうたた寝などしつつ17時54分、台北駅着。
 時間帯的には夕食の頃合いである。なんだか食べてばかりだが一旦ホテルに戻ると出るのが面倒になるのでこのまま食べてしまえということになった。
 少しでも空腹になるように地下街をうろついてから台北駅2階のフードコートへ。
 私はここで待望の虱目魚定食に豚足を追加して注文。
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 台北市内には虱目魚を食べられる店はあちこちにあるのだが、ワサビ醤油でいただけるとなると私はここと饒河街夜市入口にある海鮮料理店くらいしか知らない。
 脂ののった白身にワサビ醤油を合わせ、白飯の上にのっけて食べるのは至福の一語だった。

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台湾旅行記2018(3日目)

この日は休養日にしようとおもっていたのだが、寝て起きたら期待以上に体力が回復していた。
 ならば農市へ行こう。
 拙ブログを長年お読みいただいている方にはおなじみの存在であるこの農市。わかりやすく言えば産直市場である。台北市内では主に土日に開かれているのだが、台湾各地から割と出物が集まってくる。特に烏龍茶と珈琲は試飲をしてから買えることが多く、我々の楽しみのひとつである。
 
 まずは遠い方の花博農民市集へと向かった。MRT淡水信義線圓山駅で下車すると、改札を抜けてすぐのところに会場がある。というか、駅に近づくと車窓からでっかい看板が見える。
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 ここで目に付いたものを次々と購入していくとキリがないので必ず先に全ての売り場をチェックする事にしている。
 この時買いたくても買えないものとしては持って帰れない上に量の多すぎるものと冷凍のもの。例えばここで売っている台湾バナナは大抵一房にみっしり10本以上付いていて、滞在期間中に食べきれないほどの量なのだが、もしこれを日本に持ってかえろうとすれば検疫を受けなければならない。非常に手間である。
 そこで自然とターゲットは烏龍茶と珈琲になる。何軒か出店がある中で今回は台南の南山茶園というところで試飲させてもらう事にした。味が良いのは勿論のこと、澄んだ空気に育った茶葉の香りに魅了された。
 お互いにあまり得意でない(控えめな表現)英語を駆使して精一杯の意思疎通を行った結果、黄金桂花茶を1缶と3種の茶葉をブレンドしたもの150g入りを3袋購入。各々の茶葉だけならば同等のものはそれなりに出回っているのかもしれないが、オリジナルブレンドとなると今この場で買うことしかできない。本来であればもっと買いたかったくらいである。
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 この後、阿里山珈琲のドリップパックセットも購入。これも試飲させてもらって気に入ったものだ。
 
 そして。台湾南部の名産地玉井のマンゴーがワゴンいっぱいに並んで売られている。マンゴー自体は台北市内のスーパーでもお手頃価格にて入手可能なのだが、玉井からの産直である。これは欲しい。
 それこそこれが日本まで持って帰れるのであれば10でも20でも購入するのだが、あいにくと先述のとおり果物は要検疫物品なので台湾で食べてしまうしかない。
 となれば。他にもいろいろ買って食べることを考慮して1つだけ購入。この夜早速食べてみて「どうして2つにしておかなかったのか」と後悔したほどにはうまかった。
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 これで手仕舞いにしようと思っていたところ、落花生をその場で煎って売っているところに通りがかり香ばしい匂いに誘われて購入。その場で一口入れてみると素朴で軽い味わいだった。

 以上で撤収し、戦利品をホテルに置きに戻る。
 ここで疲労困憊していたら本日ここまでにするつもりだったがまだまだ活動可能なので続いてもう一つの農市、希望廣場(広場)へと向かう。
 こちらは暑くさえなければ徒歩圏内の近さなのだが、台北市内のこの日の最高気温は33度と日本ほどではないにしてもやはり要警戒。
 おかしな事を書いている自覚はあるが、私の住んでいる地域より3~5度も低いのでこう書かざるを得ないのである。
 MRT板南線で一駅隣の善道寺にて下車。記憶では1番出口が最寄りだったが、6番出口に「希望廣場農夫市集」と貼り付けた後もわかりやすく追加された表記があったのでここから上がってみる。
 結果、やはり1番出口が最寄りだった。
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 それはさておき。
 花博よりこちらのほうが会場が広い。おまけにミニフードコートみたいなものもある。条件としては良いのだが、しかし残念ながら烏龍茶はあまり扱いがない。こちらで多いのは果物と野菜。
 野菜はもうさすがにどうしようもない。まさかホテルの厨房を借りるわけにもいかないだろう。もしかしたら市中には持ち込んだものを調理してくれる店もあるかも知れないが、それを探したり頼んだりする語学力もない。「お前は大学で何をやっていたのか」という声が聞こえてきそうだが、17年も使わなければこんなものである。
 ここの場合、果物もマンゴー、グァバ、ドラゴンフルーツといった南国系のものばかりでなく桃やブドウ、梨という日本でもおなじみのものが目につく。
 その中でも特にブドウには惹かれたものの、やはり一房が大きすぎて食べきる自信がないのでその場で絞っていると思しきジュースを購入。
 暑さと疲労のせいもあっただろうが、爽やかな甘さのおかげで一気に飲みきった。
 
 結局ここで購入したのは竹山台灣珈琲(本当は台湾では王偏ではなく口偏表記)のドリップバッグのみ。ちなみに10袋入って400元。安い値段ではないが、味と希少性を考えれば高くもない。

 ちょうど昼飯時だったので併設されたミニフードコートでいただくことにする。葱餅(葱の揚げパイ)、四神湯(薬膳スープ)、肉圓(台灣風肉まん)等々。ちなみに秋刀魚の塩焼きも売っていたのだが、流石にここでそれを食べる気にはならなかった。

 荷物を部屋に置いて一息つくと、今度は疲労抜きも兼ねていつもの温泉へ行こうということになった。
 目指すは台北駅から一番近い行義路温泉。MRT淡水信義線石牌駅からバスで10分ほどの行義路三バス停で下車。
 降りてびっくり。いつも通っていた道が工事中で通れない。道路工事というレベルではなく、舗装を引っぺがして1からやり直している。なんたることだ。
 張り紙を読んでみると行義路二か行義路四のバス停から歩いていけるようなのでとりあえず四のほうに向かった。
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 これがまた結構な急坂である。山道と言っても過言ではない。その上狭い。車が行き交うたびに立ち止まって安全を確保しなければならない。
 ようやく登り切って、今度は脇の小道を下りる。すこしは楽ができるかと思ったが、日陰がないのであまり変わらない。本当にこっちであっているのかという不安に駆られながらも地図を頼りに歩いて歩いてようやく川湯温泉に到着した。

 こんな状況であるにもかかわらず風呂は混雑していた。入湯料200元というのは台湾の物価からすると決して安くないのであるが、泉質が非常に濃厚でその価値を地元でも認められているということだろう。
 歩いてにじみ出た汗をさっと流して湯につかると、打撲の傷にじんわりと沁みていくのがわかる。
 メインの浴槽は湯温が高いのでほどほどであがり、ぬる湯でクールダウン。あつ湯ぬる湯を交互に楽しむことしばし。今回飲み物を持参し忘れたので無理せず限界一歩手前くらいで撤収。
 上がってからしばらくしてもなお、拭いても拭いても汗が出る状態。川を渡ってくる風を浴びて茹だった身体を冷まさないと服も着られない。

 ようやく落ち着いたのはどれほど経ってからだったか。出入口の前にあるベンチで家人と合流して帰り道の相談をする。
 正直言って来た道を戻るのは避けたかったが、かと言って行義路二のバス停へ行くルートがそれよりマシという保証もない。
 スマホを駆使して地図を見てみるが決定打になり得る情報は出てこなかった。

 結局ダメならダメでいいからという結論になって地図にある温泉歩道とやらへ向かう。結論から言えば、これが当たりだった。細道ながらも整備された歩道は歩きやすく、眺めも良かった。

 バス停に着いて程なくやってきたバスで石牌駅まで戻り、あとはMRTに乗って台北駅経由でホテルの部屋へ。

 温泉の効果か体力気力もすっかり回復したので、この際買い出し出来るものは今日のうちに全部買っておこうということになり今度は歩いて老舗茶葉店の峰圃茶荘へ向かった。
 今回、毎年流暢な日本語で我々を迎えてくれた老人の姿はなく、別の方に説明されながら試飲する。この時「あの、いつものあの老人は?」とは怖くて聞けなかった。
 味と香りがいつも通りだったことに安心しつつ、凍頂やら阿里山やらの茶葉を大量に買い込み、さらにはここのオリジナル商品まいたけチップスも大量買い。

 続いて乾物や漢方薬の問屋街である迪化街にも向かった。明日は定休日で営業していないとの情報を得て、最後の気力を振り絞ることにしたのである。少し前までは結構不便なエリアだったのだが、今では台北地下街経由で行くと地上を歩くのが1キロ程度で済むので負担も軽くなった。
 ここにある黄永生及び六安堂という店が我々のお気に入りで、ドライマンゴーやパイン、そしてストロベリーは必ず購入するものリストに入っている。
 また。毎年乾物のおまけとしてここで喉アメをもらっていたのだが、これが滅法効くのでどこかで売っていないか探していたところ、そもそもの供給元である六安堂で袋詰めされて乾物と一緒に売っていた。なんという灯台下暗し。

 時はちょうど夕暮れ時。夕飯にしようということで次なる目的地は寧夏路夜市となった。

 その途上に足ツボマッサージのお店があり、足だけなら大丈夫だろうということで入ってみたのだが。
 しかし。足湯中にサービスで首、肩、背中をマッサージされた。首や肩はまだしも背中は押されると肋骨に響くので事前に丁重にお断りした。したのだが、うまく伝わっておらず遠慮したと思われたのか背中をグイグイ押されて痛みが走る。
 痛がる私を見て、施術者がようやく手を止めた。
 ちょっとしたアクシデントはあったもののやはり技術は本物で、終了後に靴を履くとその効果のほどが実感できる。靴ひもをギュッと締め直さないと脱げてしまいそうになる程、むくみが取れている。

 しかしこのアバラの状態では狭い通路を押し合いへし合いしつつ店を選ぶのはやはり無理であり。
 物珍しいガチョウ料理を食べただけで夜市のメインストリートからは撤収。その代わりに夜市エリア内にある鬍鬚張魯肉飯へ入店した。ここは台湾庶民の味魯肉飯をメインにしたチェーンの定食屋である。日本で言えばやよい軒かまいどおおきに食堂と言ったところだろうか。ちなみにやよい軒もまいどおおきに食堂も台湾に出店してたりする。
 
 チェーン店ではあるものの、その味は決して悪いものではない。ふたり揃って豚足定食を食べてご満悦で店を出る。

 歩いて雙連駅まで行き、MRTで台北駅に戻る。2階でKAVALANウィスキーの小瓶を買って部屋で飲む。今年は茶よりもマンゴーよりも楽しみになっていたKAVALANウィスキー。開封して香りを嗅ぐだけで心が弾んだ。
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 つまみは金門島で買い込んだビーフジャーキー。強い味付けが実にいい仕事をしてくれて、小瓶はあっという間に空になってしまった。

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台湾旅行記2018(2日目)

朝、ホテルの前に停まっていたタクシーを拾って台北松山空港へと向かう。日本人客ということで国際線ターミナルで降ろされてしまったが、国内線ターミナルとさほど離れているわけでもないので苦もなく歩く。

 今回ここにいるのは他でもない。念願叶って金門島へと行けることになったためだ。利用するのは華信(マンダリン)航空という中華航空の子会社。
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 便利なものでチケットは日本にいる間にネット予約で簡単に抑えることができた。新婚旅行の時、まだ新幹線が開通していなかったので台北から台南に行くのに飛行機を使ったのだが、台湾の国内線を予約するのにどこでどうしたらいいかわからず大変苦労したものだ。
 それを思うと隔世の感がある。

 ただ。機材が小型機なので実にどうにも生々しい。窓からチラリと下を覗くと、久々にゾッとした。うっかり先日遊園地で窓のない遊具にて上空高くまで上げられるなどという体験をしてしまったためか。あの生々しい感覚が蘇ってきてどうにも座りが悪かった。
 それでも蒼海に浮かぶ澎湖島などを見ていると次第に心が落ち着いていく。着陸する頃には心のざわつきもすっかりおさまってくれた。

 金門島初上陸。台湾は現在でも正式には中華民国といい、その実効支配する領土は台湾省と福建省とに分けられる。ここ金門島は福建省に属するし福建省政府も置かれている(ただし現在省としての機能は凍結中)。自動車のナンバープレートにも福建省と書かれている。
 中華人民共和国の廈門市や泉州市とは2~3キロしか離れておらず、国共内戦台湾ラウンドにおいては最前線となった島でもある。
 今回はその攻防戦の跡地を中心に巡る旅となる。
 バスの本数や行きたい場所の問題を検討して出た結論としてはタクシーをチャーターするしかないのだがその交渉をタクシーとまともにできるだけの語学力がない。
 観光案内所に行って相談してみたものの、直接交渉してくれとのこと。

 仕方なく当たって砕けろとばかり作成したメモを見せながらたどたどしくお願いしてみたところ「3小時(3時間)1200元」との答えが返ってきた。
 勿論異論のあろうはずもなく。まずは八二三戦史館へと向かってもらったのだが、タクシーの運転手さんは我々がそういうものに興味関心を持つと知った為か、その前に途上にある成功坑道を案内してくれた。以前巡ったことのある足尾銅山や生野銀山よりも余程狭苦しい洞窟陣地の中を慎重に歩く。
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 実際に使用されたものと思しき大砲や機関銃、戦車なども兵士の銅像付きで展示されている。単なる過去の遺物としてではなく、ここに配備された一兵士の気分で銃眼から外を眺めると、長閑なはずの砂浜も敵の上陸地点として映り、グッと身の引き締まる思いがした。 
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 外に出ると眼下に広がるのは長閑な砂浜と穏やかな海。勿論そこには身を切るような緊張感など欠片もない。
 戦時中の空気がそのままパッケージ保存されたかのような光景に触れると、今現在車窓から見えている観光地化した姿の方に違和感を覚えてしまう。
 湖畔にたたずむ平和そのもののリゾートホテルの横を抜けて行くと八二三戦史館に到着する。
 しかし。あのホテルこそは戦いがすでに過去のものとなったことを何よりも雄弁に示しているだろう。おそらく、敵として戦っていた中華人民共和国の人々も宿泊するはずだ。それが平和というものなのだろう。
 閑話休題。
 さて。そもそもこの「八二三」とは何かとというところからお話しさせていただきたい。正確には八二三砲戦といい、1958年8月23日、中国人民解放軍がここ金門島及び隣の小金門島に対して行った砲撃を端緒とする一連の戦いのことを指す。
 全島で総計47万発の砲弾が撃ち込まれたものの台湾軍の粘り強い反撃により金門島は守り抜かれた。
 八二三砲戦に付随する戦いとして九二海戦(もしくは料羅湾海戦)という海上戦闘があるのだが、この時旧大日本帝國海軍所属の駆逐艦雪風改め中華民国海軍所属駆逐艦丹陽が活躍している。
 日本の元号で言えば昭和33年。東京タワーが竣工した年であり、もっと言えばプロ野球では長嶋茂雄が、鉄道界ではブルートレインあさかぜ号がデビューするなど太平洋戦争の傷跡もようやく癒えて新時代が幕を開けようとしていた頃。この島では全てが紅蓮と化しながらも戦っていたのである。
 その事実いうものをどう受け止めるべきなのか。
 その答えの一端なりとも見つかるだろうかと思い、また先述の丹陽の足跡に少しでも触れられればという気持ちから今回訪れてみたのだが。
 まず。九二海戦について触れている展示こそあったものの残念ながら丹陽に関する展示は一切なかった。この辺りは陸と海のセクショナリズムが関係しているのかいないのか。
 その分、という表現が正しいのかはわからないが、他の展示は充実していた。定番の年表や現場写真から始まって、宣伝のために大陸に投下されたビラや物品というちょっとニヤリとできるものから、島のどの地区に何発の砲弾が撃ち込まれたかを示した地図というゾッとするものまで幅広く揃っている。
 全てを見ての感想としては、たとえ泳いで渡れそうな距離しか離れていなかったとしても、陸続きでないことがこの島の命運を分けたと感じた。海というのは実に偉大だ。
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 続いてテキ山坑道という洞窟陣地へと行ってもらう。ここは八二三砲戦のあとに掘られた隠し水路で、小型の舟艇がそのまま海へと出撃できるような構造になっているとのこと。能天気で大変申し訳ないが画像を一目見たときからその秘密基地感に惹かれてしまい、どうにも行ってみたくてたまらなかったのである。
 途中、免税店や高粱酒の工場などの前を通るたび立ち寄るかどうかを確認されるが、今回は時間的にも体力的にも余裕が非常に限られた旅なのでパスせざるを得ない。次の機会があれば度数58という匂いを嗅ぐだけで酔っ払ってしまいそうな高粱酒にも触れてみたいとは思う。

 車は30分ほど走っただろうか。島を一気に横断して目指す坑道に到着した。
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 駐車場からちょっと歩くだけでも汗が噴き出すので、売店で水分補給をしてから中へと入る。今度はタクシーの運転手さんも一緒についてきた。
 固い岩盤の下り坂をゆっくり進んでいくとそこには確かに『秘密基地』があった。わずかな照明に照らされた水路の脇にある側道を慎重に歩く。
 「すごい」「すごいな」しか言葉が出ない。なにをどう言っても上手く表現できないような気がする。
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 幸か不幸かこの坑道が実戦で使われたことはないようだが、これが作られる必要性はこれまでに十分すぎるほど見てきたので大げさだか無用の長物だとかは微塵も思わない。

 地上に戻ってくると、タイムスリップでもしたかのような錯覚に陥る。芝生の広場には高射砲や上陸用舟艇等が展示されているが、露天展示の割には保存状態は悪くなくこの島を守った一員として大事にされていることが伝わってきた。
 さて。2カ所まわってみて台北へ帰る飛行機の時間までまだまだ時間はあるものの昼ごはんがまだということもあって、とりあえずフェリー乗り場である水頭碼頭で降ろしてもらう。
 ここからは隣の小金門島へと向かうフェリーと、「小三通」政策によって就航した中国大陸の廈門行きフェリーが発着している。我々はこのあと小金門島に渡るのでまず小さい方の乗り場へ向かい、時刻表を確認してから併設された食堂で遅めの昼食をとることにした。

 ここ金門島は石垣島と同じく離島ながら牛肉の産地。お土産売り場にもビーフジャーキーがずらりと並ぶほど。
 というわけで私は牛肉定食に台湾ソーセージ追加、家人はさっぱりとしたものを求めて牡蠣ラーメンを注文。
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 金門牛はいわゆる和牛的な箸で切れる脂身な美味さではなく赤身のしっかりした美味さだった。途中から薬味を足すなどして結構ボリューミーな分量を飽きずに完食できた。

 さて。食事と休憩が済んだところでいざ小金門島へ。ひとり60元の乗船料を払って乗り込む。
 20分ほどの短い船旅だが、見るべきものは多い。進行方向右手に見えるのが中国大陸。本当に近い。何しろ金門島と廈門市は最短で2キロ程度しか離れていない。この水道は日本の明石海峡よりもなお1キロ以上も狭い。

 日本で言えば石垣島と竹富島の関係に近いのだろうか。
 もちろんここにも金門島のような洞窟陣地や戦史館もあるのだが、フェリー乗り場から一番近い九宮坑道だけを覗いてトンボ帰りする。レンタサイクルで島一周とか出来ればよかったのだが、もはやそんな体力もない。
 坑道の一部がビジターセンターとして活用されているところなどは実にいい使われ方だと思った。
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 乗り場に戻って帰りのフェリーを待っている間、タクシーをチャーターして島を一周しないかとしつこく誘ってくる老婆がいたので暑さを我慢して外で待つことにした。にじみ出る汗を海風が荒っぽく乾かしていく。
 待つというほどのこともなく、船は入港してきた。スクーターが元気良く飛び出していき、そのあとから人波がどっと押し寄せる。
 その全てが帰りの船中でも景色を堪能するつもりだったが疲れから寝こけてしまい、気付くともう入港寸前だった。
 金門島に再上陸して時計を見ると残り時間が実に微妙。当初の予定では金門島の中心街金城鎮に立ち寄って買い物の一つでもと思っていたのだが、これだと立ち寄るだけになりかねない。ならばもう立ち寄らず空港に戻ろうということになった。
 港からはバスでも空港には戻れるのだが、面倒になってタクシーを拾う。道に広がる大陸からの観光客に行く手を阻まれながらも、それ以外は渋滞もなく快適なドライブで無事空港着。
 国内線でも飛行機に乗るのだからと早めに戻ってきたわけだが、チェックイン時に見事1時間のディレイを告げられる。

 ならばと土産物売り場でのんびりお買い物。貢糖というおこしのような菓子がある。これは台北でも買えるのだが、ここが本場なので1瓶買っておく。昼食で食べた肉の味が気に入ったのでビーフジャーキーも1袋購入。
 そして。ここではこの島に撃ち込まれた砲弾を材料に作られた包丁も売っていた。「毛沢東からの贈り物」とも称されるこの砲弾包丁は材料が材料だけに切れ味抜群と聞いており、私の好事家魂も騒ぐのだが日本には銃刀法というものがあり刃渡りの長いものは帰国時に没収される。
 一番小さい「フルーツナイフ」と書かれていたものでも悠々アウトな長さであり、断腸の思いで諦めることとなる。
 あとは地元紙の金門日報を観光案内所で無料配布していたのでもらって読んでみる。記事も広告も地元密着ばかりかと思えば米中(こちらの表記では美中)貿易戦争の記事が出ていたりもする。地理的に国際情勢に敏感にならざるを得ないのは国境の島ならではだろう。

 そんな感じで楽しく時間は過ぎていき、ちょっと早めくらいのタイミングで保安検査場を通過する。何しろ小さな空港なので立て込むと厄介そうだったので。

 搭乗口付近でベンチの空きを見つけ夕飯の算段などをしていると、華信航空から遅延のお詫びとしてお弁当とジュースが配布された。
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 良くも悪くもこれで夕飯については決まってしまった。
 他の乗客たちはその場で早速封を切り食べ始めていたが、我々はどうにも落ち着かないのでホテルに戻ってから食べることにした。

 遅延以外はトラブルもなく、無事飛行機は台北松山空港に戻ってきた。タクシー乗り場も空いていたので空腹を抱えて暑い中列に並ぶということもせずに済んだ。
 ホテルの部屋で開封した弁当はまだほのかに温かかった。

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