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ふさ千明のおたネタ日記

漫画、アニメその他諸々の感想がメインのブログです。現在は「ここだけの話」シリーズについての感想を中心に運営しております。毎日15時の更新は終了し、現在は再び不定期更新に戻っております。

恋愛の才能

 「這いよれ!ニャル子さんW」の第4話が「恋愛の才能」というタイトルでした。

 昔々のその昔。1992〜1993年に製作されたオリジナルビデオアニメ作品「天地無用!魎皇鬼」の第1期エンディングテーマが同タイトルだったりいたします。
 ですので、同作品に思い入れのある私は大変懐かしくなりまして。

 リハビリ代わりにちょこっと書かせていただきます。

 という書き出しでしたら普通は「天地無用!魎皇鬼」という作品の思い出についての文章になるんでしょうが。今回は歌についてのお話です。

 『恋愛の才能』という歌は作詞枯堂夏子、作曲松宮恭子、編曲藤原いくろう、歌横山智佐という豪華ラインナップにより構成されております。私と同世代のオタ諸氏にはまぁまずお馴染みであろうという名前がずらり、でございます。

 以下にその歌詞の一部を引用させていただきます。

  「好きだよ」と言わないで つまらない台詞よ
  知らんぷり できるのが
  恋愛の才能

  ねえ また いまも 目が合ったよ
  ね
  目をそらす 瞬間が AH 好きよ

  わかってるの キミの気持ち
  わたしだって 同じだけど
  「恋人」と呼ばれたとき
  もう それは 恋じゃないのよ

  だから 確かめたりしないで
  どうぞ このままで

  (CD「漫謡集〜枯堂夏子作詞集〜抹茶」パイオニアLDC発売 より引用)

 いやぁ。もう、ね。ええ。これはもう、ご存じない方にはどうかぜひ実際に聞いていただきたい。

 

 枯堂さんの持論に「恋愛とは関係ではなく状態のことだ」というものがあるそうですが、まさにこの歌詞はその持論をとことん突き詰め煮詰めそのエッセンスを抽出した結晶だと思います。
 人間、そんな不安定に長く耐えられるものではありません。先へ先へと無我夢中で突っ走るのが常です。相手を大切に思えば、愛おしく感ずれば、失いたくないと求めれば自然とそうなるものです。

 脆く、危うく、壊れやすく、儚く。だからこそ恋愛は追わずにいられない永遠の夢なのだと思います。

 「這いよれ!ニャル子さん」シリーズにおいてこのタイトルが使われた理由がどの辺にあるのか明確には不明ですが、珠緒のお当番回にふさわしいチョイスだったのではないかと思う次第です。

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SAN値!ピンチ!SAN値!ピンチ!が

さんじゅうひち!さんじゅうひち!に聞こえてしまう私のSAN値もそろそろピンチ。

原因は、現在職場が絶賛修羅場中のためです。いかに年度当初とは言え、ここまで追いつめられたのは初めてかも。
そんな訳で書く時間もそうですが、気力がそもそも湧いてきません。おそらく連休まではこんな感じっぽいです。

というか、今日もお仕事です。代休はありません。帰って来るのは早くて明日の朝です。

皆様もどうかご自愛くだされませ。

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兵庫県立美術館『超・大河原邦男展』観覧レポート

 年度末年度初めと多忙で小説どころか文章そのものを書く余裕も無かったので、感覚を失わないためにちょっと書いてみました。そのため大変つたない内容ですが、ご容赦いただければ幸いです。


  ◇


 この日、まずは愛車の6ヶ月点検のために朝イチでディーラーさんのところへ行き、点検終了後にそのまま車を神戸まで転がして兵庫県立美術館まで。

 到着すると美術館の駐車場は既に満車だったので、近くの有料駐車場へ停めてそこから歩いて向かっていくと、建物の外観からして既に大河原邦男展仕様になっていたのでついつい撮影する。



 で、中へ入ろうと思うと今度はジオニックトヨタの広告が目に飛び込んでくる。



 展示を見る前から既に先制攻撃を受けたような気分。

 チケットを購入すべくエントランスホールへ向かうと、吊り下げられたスクリーンで大河原さんゆかりのアニメのオープニングアニメが延々上映されていた。『機動戦士ガンダム』『科学忍者隊ガッチャマン』『ヤッターマン』等々、懐かしいものが続けざまに流れるのでどうにも立ち去りがたかったが、いつまでもエントランスホールにとどまっているのも間抜けな話なのでチケットを購入して3階の企画展示室へと向かった。
 途中、コンクリートの壁一面に描かれた線画のシャアザクが迎えてくれたので思わず撮影する。壁画なのにちゃんとマルC創通・サンライズと入っているのに敬服しつつ、何枚も撮影。展示にたどりつく前にまさかこんなにネタが転がっていると思わなかったのでデジカメを持ってこなかったのだが、事ここに至って大いに後悔した。



 音声ガイドの担当が銀河万丈さんと伊藤静さんだったので、普段こういうものに手を出さない私も思わず突き動かされて借り出した。



 展示はロボットアニメのルーツということから鉄腕アトムと鉄人28号から始まり、宇宙エース、科学忍者隊ガッチャマンと続く。さすがに白黒時代の宇宙エースは記憶にないが、ガッチャマンは再放送組ながら幼少期大いに慣れ親しんだ作品だったので脳汁全開で展示にかぶりつく。どれがどうとは明確には覚えていないものの、記憶の奥底を揺さぶるメカの存在感には30年以上前へとタイムスリップさせてもらった。壁の反対側にはガッチャマン2の展示もあり、自然と脳裏ではオープニングソングが流れ出す。

 破裏拳ポリマー、宇宙の騎士テッカマン、ゴワッパー5ゴーダムと私が生まれた前後の作品が続くが、このあたりになると知名度が高いので記憶ではなく知識として知っている。特にゴワッパー5ゴーダムはタツノコアニメで例外的に女の子が主人公側のリーダーという画期的作品なので、後追い組ながら感慨深く展示を観る。

 いきなりガンダムやタイムボカンではなくこういうところからしっかり押さえてくるあたりに企画の本腰っぷりがビシビシと伝わってきた。

 隣の部屋に移ると、無敵鋼人ダイターン3、無敵ロボトライダーG7、最強ロボダイオージャとスーパーロボット3連続。ダイオージャは胸に燦然と輝く葵の御紋を模したマークがいつ観ても素晴らしい。
 トライダーG7は映像資料としてモニターで上映されていたため、ひととおり堪能するが、児童公園の地面が2つに割れてロボットが発進するシーンはいつ観ても笑ってしまう。そして、「某作品と違って全員が退避してから発進するのが偉い」といつも思う。

 この3連発を通過すると、いよいよ真打ち登場。機動戦士ガンダムの展示である。音声ガイドでは銀河万丈さんがギレン・ザビモードで名演説を再現してくれたため、もうこのあたりからはアドレナリン大量放出状態に。今から見るとあまりの違いに驚くしかないガンダムの原案や、ガンキャノン原案の安彦良和さんバージョンと大河原さんバージョンとの対比があったり、フリーダム・フォートレスという名前のホワイトベース最初期設定が展示されているなど、言及し始めればキリがない楽園のような空間。

 豊富な展示に多幸状態となりつつ、次の展示へ。太陽の牙ダグラムや装甲騎兵ダグラムは申し訳ないがあまり良く知らないので、実に新鮮な気持ちで眺める。よく知らない作品ではあったが、1/1スコープドックの展示には度胆を抜かれざるを得ない。美術館で本気の展示をするということはこういうことなのか、と感心する。
 続いては、私にとっては大河原メカとしてガンダムと双璧のタイムボカンシリーズの展示に突入する。
 これはもう、待ってました!なのだが、テレビシリーズだけで8作品(怪盗きらめきマン含む)あるので、すべてを濃密に展示するとそれだけで面積がいくらあっても足らないのだろう、ある程度の厳選を経たものになっていたが、シリーズでも傑作の呼び声高いタイムパトロール隊オタスケマンに関して言及すらなかったのはおそらく色々あるのだろう。悪玉トリオが使用した初期の戦闘用メカである顔メカ(人間の顔にキャタピラをつけた外観のメカ)などは今考えるとあちこちに許可を得るのに苦労しそうであるし。

 また、展示のチョイスという点では新機動戦記ガンダムWをこよなく愛する妻が、WではなくGガンダムが展示されていたことに苦笑していた。ガンダムよりタイムボカンシリーズが似合いそうなネーデルガンダム(風車状態)や魚に食われたのかと錯覚させられたマーメイドガンダム、そして絶句するしかなかったマンダラガンダムがずらりと並ぶと、絵面のインパクトが強烈すぎて何も言えない。

 インパクトに酔いしれていると、まさかの未来警察ウラシマンにアレッと思う。この作品、タツノコアニメではあるものの、ロボットが出てくるアニメではないからだ。展示されていたのは、作中に出てくるパトカーや主人公たちが本拠地とする機動メカ分署38のデザインだった。当然これらもメカであり、展示されていて何の不思議もないのだが、ここまでロボットの連続だったのでうっかり忘れていた。
 ちなみに。未来警察ウラシマンはつい先日までサンテレビで30年の時を超えて再放送されており、ここに来る直前に最終回の録画を見終えたところだったので、懐かしいようでいて、そうでないような、なんとも不思議な気持ちになった。

 そのあとは銀河漂流バイファム、蒼き流星SPTレイズナー、機甲戦記ドラグナー、希望戦士ガンダムF91、超時空要塞マクロス、聖戦士ダンバイン、重戦機エルガイムとリアルロボット路線作品が続く。時代の流れだなー、と思っていると、所謂勇者シリーズのエクスカイザーやマイトガインなどが出てきて巨大ロボットならではの存在感をアピールしていた。
 そして機動戦士ガンダムSEEDへと続き、ラストは稲城市のイメージキャラクター稲城なしのすけで締めとなる。
 一部端折ったりもしたが、展示は概ねこんな感じで、観終えた後にはひと山登りきったような満足感があった。

 特設の専用ミュージアムショップでは図録や今回の展覧会特別仕様ガンダムのプラモ、ポストカードや手ぬぐい、果てはガンダム名言Tシャツなどなど、幅広いお土産品が販売されていた。これを買う買わないで検討し終えるのがこれまた労力を要したが、どうにか図録と特別仕様プラモだけでとどめておいた。






 大変満足したので、昼食をとるべく美術館を後にしようとしたが、エントランスホールまで戻った時に、チケット売り場横の美術情報センターに『関連書籍コーナー』なるものがあることを発見してしまった。まぁ、ちょっと軽く覗き見するかくらいの気持ちで入ったところ、今は亡きアニメ誌『アニメック』のガンダムムック本やガンダムのフィルムブックなど、どうやって入手したのか分からないような実に貴重な書籍が多々。ここでまた時間とエネルギーを大量に費やし、うっかり昼食を取り損ねる羽目になったが、当然後悔はしていない。

 このあと、夕食をちょっと早めにして某所の中華バイキングで食べたのだが、デザートにと取った桃饅頭が大河原メカっぽく見えてしまったのは明らかに後遺症と呼べるものだと思っている。





  ◇

 以上、なんとも取り留めないレポートで申し訳ないですが、この展覧会の魅力が少しでも伝われば幸いこの上ありません。

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先日ふと浮かんで頭から離れなくなった

 猫物語(黒)の第一巻はコメンタリーが八九寺真宵と神原駿河、そして第二巻は影縫余弦と斧乃木余接となっておりますが。

 どうにも先日から「阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎコンビによる2本連続オーディオコメンタリーで阿良々木暦生き地獄」というネタが頭から離れません。さぞや愉しいことになること請け合い。いや、さすがに二次創作する余裕とか自信とかは皆無ですけど、ガハラさん今回出番無かった分コメンタリーで無双していただきたかったな、と。ただそれだけです。

「吸血鬼の治癒力を以てしても回復が間に合わない早さで胃に穴が!」
「穴が開くのは胃だけでいいのかしら?」

こんな感じで。


……どうしても我慢できなくなったら書くかも知れませんが、以前真似してみてどれほどハードな作業か心底思い知りましたので多分やらないと思います。

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絶望先生SS 日塔奈美の日記 その27(最終回)

○月○日
先生との結婚が決まった。と言っても、私は1/12の存在だけど。年に1度、一ヶ月だけの夫婦だけれど。

それでも。

嬉しいと思った。
だから。
今のこの気持ちを日記に残しておこうと思う。これから、みんなと一緒に暮らす時間の中で、もしかしたら忘れてしまうかもしれないから。そうした時に、これを読むことで思い出せるかもしれないから。

みんなで先生と暮らす。もちろん、可符香ちゃんも一緒に。むしろ、この計画は可符香ちゃんが主役で、私達は脇役に過ぎないのかも知れない。
私だけでなく、まといちゃんも加賀ちゃんもあびるちゃんも藤吉さんもカエレちゃんも三珠ちゃんも千里ちゃんも霧ちゃんもマリアちゃんも芽留ちゃんも。みんな、主人公になれないまま生きていくのかも知れない。

それでも。
そうすることが、みんなで決めたことだから。
そうしたいと、みんなで願ったことだから。
糸色望という男性と、みんなで一緒に居る。みんなと一緒に生きる。

私達の幸せの形は、きっと不思議な十二角形をしているのだから。

だから。

明日、私達は船に乗ります。

何年かして、私が今のこの気持ちを忘れてしまったときに、これを読んで、思い出してくれることを願って。


このページは、日塔奈美から糸色奈美への、最初で最後の贈りものです。


(第三十集「一つの可能性としての第30X話」より)

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二次創作関係のお知らせ

 何をどうトチ狂ったのか、ふとした思いつきから書きあがってしまった文章をpixivにアップしました。タイトルは「忍ラブリー」です。アニメ版偽物語のSS(二次創作)となっております。毎度お馴染み18禁な文章なのでレギュレーションの問題からこちらにはアップ出来ませんので、もうひとつのほうのブログにパスワードをかけてアップしてみました。もし読んでみたいと思われた方はこちらへお願いします。
 ログインを行なう際はニックネームのところに何でもいいので適宜文字を入れていただき、パスワードはhusachiakiと入れていただければご覧いただけるようになっております。

 お手数をお掛けする程の文章ではないのですが、現在万人に公開出来て私が自由に編集出来る場所というのが限られておりますゆえの措置ということでご寛恕いただければ幸いです。

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二次創作関係のお知らせ

 個人的に大変強い思い入れがある「GS美神極楽大作戦」の二次創作最新作を現在作成しておりまして、出だしの部分までをZEROSIGHT様の掲示板に投稿させていただきましたのでこちらでお知らせさせていただきます。個人的にずっと追いかけ続けてきた横島とおキヌのカップリングのラストエピソードとして位置づけたお話です。

 一応全体のスジは出来上がっているのであとは書くだけなのですが、それだといつ完成までこぎつけられるのか分からないので、順次キリのいいところまで書きあがったら先方掲示板へ投稿させていただきたいと思います。

 また。内容はR−18となっておりますのでご注意ください。

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お知らせ

 pixivに18禁男性向け小説の物凄く短い奴をアップしましたのでお知らせさせていただきます(私のpixivページにはブログに貼ったリンクをクリックしていただければ飛べます)。ド直球な内容のためここにアップするのがいささかためらわれますので……。

 pixivのアカウントをお持ちでない方で、読んでみたいと思ってくださる方のためにも何らかの方法をとりたいと思いますが、うっかりと睡眠時間をごりごり削ってしまったのでしばしお待ちください。

 にしても、タグやらタイトルやらにRー18って入れるだけでこんなに閲覧数が増えるとは。やはり大事なのはエロスですかそうですか。ちなみに、習作をステップにして書いているのもやっぱりRー18ネタですので多分ここにはアップ出来ないモノになると思います。



 一応、これでも最終着陸目標は一般向けなんですけども。
(追記:追加でもうちょっと長いヤツも別にアップしました。同じくご覧いただけましたら幸いです)

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落語「メイド寿司屋」

 以前、じょしらじの感想でちょろっと書きました「メイド寿司屋を舞台にした落語」が完成しましたのでこちらにアップいたします。

 もしかしたら似たようなお話が存在するかも知れませんが、一応オリジナルです。経緯を少しばかりお話させていただきますと、この噺は最初じょしらじの『おーぷにんぐこばなし』投稿用で書いていましたが、聞いているうちに「これは有名な噺をパロった内容の方が良いんだな」と感じ、それまで書いていたものを一旦止め、改めてその方向性で探ったものの形になる前にじょしらじが終了してしまいまして。

 まぁ、せっかく手を付けたんだから書き上げてしまおうと思い直して最初に思いついたメイド寿司屋の噺に再び取りかかり、なんとか完成にこぎ着けました。

 現在創作リハビリ中の身、大変つたない内容ではございますが、御笑読いただけましたら幸いでございます。


   メイド寿司屋

一席、おつきあいをお願い申し上げます。
えー、今や世の中にすっかり「メイド」というものが定着してございまして。初めはメイド喫茶くらいだったものがメイドマッサージやメイド耳かき、挙句はメイドトレインなんてものも実在するようになりまして、存在しないものをでっち上げようという者にはなんとも油断のならぬご時世でございます。

また、このメイド産業、アキバくらいだったものが、大阪ニッポンバシ、名古屋は大須、博多は天神と日本各地で見られるようになりまして…。みなさまも気がつくとご自宅のほど近くにそんなお店が出来ていたりする、そんな油断も隙もないご時世となっております。



ドンドン。
「おう、オタ吉、いるかい?」
「オタ五郎かい。知ってるだろう。俺が部屋に居ないのはトイレに行く時だけだよ」
「そう言うなよ。せっかく飯でも食いに行こうと声をかけに来たんだぜ」
「飯?飯ならさっき密林から届いたコロッケソバがあるからそれでパパッと済ませるつもりだった」
「おめぇのこったからそんなことだろうと思ったぜ。コイツを見な」
「なんだい、このいかにもなちらしは…メイド寿司?」
「そうよ。この街にもできたらしくってな。これなら普段引きこもりっぱなしのおめぇも外に出る気になるんじゃねーのかい?」
「おごりかい?」
「あたぼうよ!と言いたいところだが、まわらねぇ寿司だからなぁ」
「ちょっと待っててくれ。おっかさんにこづかいねだってくらぁ」
「お、行っちまいやがった。…なんだかあいつをダシにして俺がタカッてるみたいでどうにもかっこわりいな」
「おっかさん、外に飯食いに行くっつったら涙流して喜んで小遣いくれた」
「おめぇの普段が忍ばれるねぇ……さ、行こうか」
「おう」
というわけでオタ吉とオタ五郎、連れ立ってメイド寿司屋へと参ります。
「お、ここだここだ。思いっきり『メイド寿司』って看板が出てるな」
「というか、まんまなんだな店名」
「中へ入ろうぜ」
がらりと戸を開けますと、中はごくありふれた、回らない方の寿司屋の内装ですが、そこに立っている店員は全員が全員エプロンドレスを身にまとったメイドさんという、どうにも摩訶不思議な光景。
「おかえりなさいませー」「おかえりなさいませー」「おかえりなさいませー」
「2人だけど、いいかい?」
「どうぞこちらへ」
「お、おれ、回らない寿司もメイドさんの居るお店も初めてだ」
「そのふたつが並列ってのもどうなんだ」
「お茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「何になさいますか?」
「そうだなぁ……」とふたりが壁にかけられた品書きをサッと眺めますと、どうにも見たことの無い名前ばかり。いえ、正確にはオタ吉もオタ五郎も、その名前そのものを見たことはございますが、寿司屋ではついぞ見かけぬ名前ばかり。
「あのー、あそこの『若本』って言うのは?」
「はい。所謂アナゴのことでございますご主人様」
「……………ああ」
「そういうことか」
「お分かりかも知れませんが、ご説明させていただきますと、普通にメイドが寿司を握るだけではいささかインパクトに欠けると思いまして、お出しするネタ全部をその方面の名前で置き換えさせていただきました」
「……オタ五郎、どうする?なんだかちょっと思ってたのと違うよ?」
「どうもこうもあるかい。俺もお前もイッパシのオタクなんだから、こういう趣向はおあつらえ向きじゃねえか。楽しませてもらうとしようぜ。おう、せっかくだ。その、若本の握りを2貫頼むぜ」
「かしこまりましたご主人様」
「大丈夫かな?」
「まずかったら適当に頼んでとっとと引き上げてそれこそコロッケソバでもたぐりゃいいさ」
「お待たせいたしました。若本2貫でございます」
「おお、回転寿司と違ってちゃんと煮ツメが塗ってあるな。どれどれ」
「んぐんぐんぐ……これ、うまいよオタ五郎」
「こいつぁ驚いた。久しく食べたことがねぇ」
「お次は何になさいますかご主人様」
「そうだな。握り寿司と言えばマグロが定番だが、このメニュー表だとどれになるんだ?」
「オタ五郎、分かるかい?」
「おめぇもちっとは考えろ」
「あの『豊作』ってのは違うかい?」
「豊作?ほうさく…あれか、サーモン豊作か!」
「はい、ご名答でございますご主人様」
「なんだか正解しても負けた気がするが、せっかくだ。マグロの前にサーモンも行っとくか。豊作2貫!」
「かしこまりましたご主人様」
「あそこの、『チエちゃんの友達』ってのはなんだろうね」
「そりゃお前、ヒラメだろ」
「『三平』はカッパだね」
「これはサービス問題だな」
とまぁ、あれこれ類推していると、次から次からそのネタが「お待たせしましたご主人様」と、彼らの前に置かれます。
「注文してないけど、返すのも悪いしなぁ」
と、ふたりが食べていると、あれよあれよという間に腹一杯になってしまいました。
「ああ、もう限界だ。これ以上は食えねぇ」
「えい、降参だ。メイドさん、マグロは結局どれだったんだい?」
「あちらのモザイクがかかった札(ふだ)がマグロでございます、ご主人様」
「なんだってモザイクなんかかけてるんだ?」
「ネタも値段も大人向けですので」
おあとがよろしいようで。

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