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『♪いつもどおりのある日の事~ 君は突然立ち上がり言った~』
漫研の夏恒例行事、視聴覚室を占領してのアニメ鑑賞マラソンは間もなく『化物語』の第十二話が終わろうとしていた。この日はコミケ終了の翌々日ということもあってか、事前に参加表明をしていた何名かの姿がない。
『♪いつからだろう~ 君の事を~』
「いい最終回だったな~」
「もうええっちゅうの。何度めだよそのボケは。これ見るたびに言ってんじゃん」
凸凹コンビな細身と太身のやりとりは、いつ見ても漫才師のようだ、と東瀬(あずせ)幸彦は思った。あいつらは漫画研究会じゃなくて漫才研究会だ、と評した者が居るのもむべなるかな。
 この2人、成本誠と河本明は高校の入学式で出会って意気投合して以来のコンビなので結成から半年も経っていないはずなのだが、とてもそうは思えない。ちなみに大きい方が明で小さい方が誠である。
「あなたたち、余韻台無し」
と、冷たく静かに、だがしっかりと響く声がした。
『♪どうかお願い~驚かないで~聞いてよ~』
「あ、すんません部長。あと3回分ありますけどキリがいいからここで休憩にしていいですか?」
『火憐だぜ!』『月火だよ!』
「そうね、一旦止めて頂戴」
部長こと早川美都(みさと)が眼鏡位置を直しながらそう言うと、すばやく動いてリモコンを構える幸彦。
『予告編クイズ!』しかし、まだ止めない。タイミングを見計らうように画面を見据えている。
「にしても、あっちぃなぁ~」
「しょうがねーじゃん。節電節電」
凸凹コンビ、成本誠と河本明はそう言いながら扇子を動かす手を休めない。
『次回!つばさキャット 其ノ参!』『其ノ参とそもさんって似てる』ここで一時停止ボタンを押す。凸凹コンビによって手早くカーテンが開けられ、光とともにわずかだが室内に風が通った。臨海部特有の、潮の匂いを含んだ風だ。
「部長がいなかったら今年はこうやって視聴覚室を使わせてもらえなかったかも知れなかったんだから、感謝し」
「宝物、かぁ」
それまで沈黙を保っていた茜浜和美が、急に口を開いて幸彦の話をぶった切った。しかし、切れ長の眼に宿る強い光を見ると抗議をする気にはなれない。
「見せてあげたい宝物…ねぇ」
おもむろに美都の方を向くなり
「部長はそういうのってなんかありますか?」
とたずねる。
「そうね。相手がドン引きしないって誓約するなら見せてあげてもいい秘蔵のハードBLコレクションとかはあるけど」
「やめてください。てかそういうことじゃなくって」
心底げんなりした顔ですがるように。おそらく、内容を想像してしまったのだろう。
「分かってるわ」
聞くんじゃなかった、と小さく口の中だけでつぶやく。
「そういうお前はどうなんだ?茜浜」
「あたし、あるわよ」
幸彦の問いに、即答が返ってきた。正直なところ想定外だったので、せっかく放られたうまくボールを投げ返す事が出来ない。
「へぇ」
と言うのが精一杯だった。
「……何よ」
「いや、茜浜が、ねぇ…」
「あたしがそういうロマンチシズムとは無縁だと?」
口の端だけで笑う仕草が良くない予兆であることは、この1年半弱で存分に思い知っているため、素直に引くことにする。
「すまん。失言だった」
「見たい?」
しかし、和美はそれ以上深追いしてこなかった。
「へ?」
その反応と言葉の内容とに、二重に意表をつかれ、思わずほうけた顔になる。
「見てみたいかって聞いてるの」
「……正直興味は、あるな」
「ほほぅ」
ニヤニヤという音が聞こえて来そうないたずらっぽい笑顔に心底を見透かされたようでうっかり目をそらしてしまう。
 それが和美のニヤニヤを余計に助長することになるのだが。
「茜浜さん、私も見せてもらってもいいかしら?」
「もちろんです」
「で、あんたたちはどうする?」
この場にいる残りの2人にも声を掛ける。
「あ。俺、この後はバイトッス」
「同じく」
オタクをするにも金がかかるから。そう言って彼等は勤労青少年の顔つきになる。
「じゃあ2人だけね」
「いや、俺まだ行くかどうか答えてないけど」
「行くんでしょ?」
「はい、行きます」
我ながら無駄な抵抗だったな、と苦笑する。
「今が2時半で…あと3話ね。ちょうどいいわ。化を全部見たら行きましょう」
「じゃ、休憩は終わりってことで続きに行きましょうか。東瀬くん、お願い」
「はいはい。了解です」
幸彦は手元のリモコンを再度構えた。


   ☆


「ここって、野球場じゃないか!」
「そうよ。海風と鴎のスタジアム」
このあたりは埋め立て地であるためか、他ではあまり見られなくなりつつある震災の爪痕を歩道のあちこちに残しており、さらには夕暮れ時ということもあって若干歩きづらい。
「ここに、あたしの宝物があるの」
「へぇ~」
感心するようなそうでないような、曖昧な感嘆。
「嫌なら別にいいのよ?」
「別に嫌じゃない。野球自体は、昔割と見てたし。せっかく来たんだから、久々に見てみたい」
素っ気なく言われてしまうと、幸彦は自分でもビックリするくらい早口で返した。
「部長はどうしますか?」
「私も別に異存はないわ」
「じゃあ3枚用意してきますから、ここで待っててください」
言うなり、肩まである髪をゆらして駆け出して行く和美。混雑しているのに、巧みにすり抜けていくからかそのスピードはほとんど落ちない。
「なんか、意外ですね」
「あら、そう?」
「部長は意外じゃないんですか?」
「だって、どこかなんて想像もできなかったんだもの。どこだって予想外になるから、意外という言葉には当たらないわ」
「ああ、なるほど」
静かにそう言われてしまうと、どう言葉を継いでいいのか分からず、幸彦はやや気まずく沈黙する。
 美都はそれを見ると、カバンから本を取り出して、ページをめくる。
 手持ち無沙汰な幸彦は特にすることも無いので、何とはなしに周囲を見渡してみると、自分の知っている球場の光景とはだいぶ異なることに気がついた。屋台だか出店だかがたくさん出ているのはまぁいいとして。関係者入口みたいなところの真ん前にはなぜか舞台がしつらえられていて、その上で歌ったり踊ったりしている一団がいる。右手には2階建てとおぼしき建物があって、どうやらグッズショップらしいのだがなぜか『ミュージアム』と書いてあるのが謎だった。
「そう言や、野球場に来るのなんて、何年ぶりだろう」
誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやく。思い返せば、昔はそこそこ見ていた方だったはずだ。ただ、徐々に興味が漫画やアニメにシフトして行き、そちらに意識が向かなくなったというだけのことで、それはある種自然なことだと思っていた。
「宝物、ねぇ…」
今ひとつ意味を掴みかね、口の中だけでそっと言葉にしたとき、和美が切符売り場から駆けて来るのが見えた。
「お待たせ!」
美都は素早く本をしまい
「お疲れさま。茜浜さん、いくらなの?」
とたずねる。
「いいんです。これ、実はタダ券使ったんです」
言いながら、内野自由席のチケットを見せる。
「お父さんがファンクラブに入ってて、特典でもらえるんです。でもお父さんは『俺は内野じゃ見ないから』ってあたしにくれて。で、もらったものの、あたしもずっと使う機会がなくて財布の中でほったらかしにしてたんです。だから気にしないでください」
「でも、それに甘えるのも悪いから、なんかおごるよ」
「言ったね?」
和美の瞳がキラリと光ったような気がした。


  ☆


 階段を昇って昇って、一番上まで。ようやくたどり着いた席からは、スコアボードがちょうど真っ正面に見えた。ライトスタンドやその近くの内野席はみっちりと満員だったが、この辺は若干ゆとりがある。3人分くらいの空きはすぐに見つかり、腰をおろすことができた。
 美都、和美の順に座り、両手に食べ物を大量に抱えた幸彦が通路側に陣取った。ここに上がって来るまで、和美は3つの店で買い物をした挙句「野球観戦って、お腹が空くのよねぇ」と言っていたので追加のご用命がくだることに備えた為だ。
 まずは袋からあれこれと取り出して各人希望のものを配る。
「あ。あたしそのカツサンドね」
「はいはい。部長はどれでしたっけ?」
「コーヒーとパエリアを」
幸彦は2人に手渡した後、自分のカレーライスを取り出す。
 ひととおり行き渡ると、改めて眼下に広がる光景を見渡す余裕ができる。緑色のグラウンドでは、ホームチームの選手達が練習をしている。それがサークルライン照明によって浮かび上がると、日常から切り離された空間のようで幻想的ですらある。
「確かにいい眺めではあるな」
「そうね。ちょっと新鮮」
2人がそういうと、和美はやや照れくさそうに
「別に、そんなに熱心なファンって訳じゃないの。受験の年にちょうどチーム自体もごたごたしちゃってたりしてて、今はちょっと離れてる感じかな」
と言い、少しの間を空けてから言葉を継いだ。
「でも、今日あのシーンを見て思い出したの」
「知ってる?このチーム、何年か前に無くなりかけたことがあるの」
「えーと。アレか。合併騒動だかなにか」
小学生の頃の話なので、幸彦は若干あやふやな記憶を掘り起こすことになった。
「そう。うちはお父さんが熱心なファンでね。小さい頃からここによく連れてこられたの。あのニュースが流れた時は、もう大変だったわ。お父さんが家で大騒ぎしちゃって」
和美が若干目を細めた。
「あの時は、最初関西のチーム同士が合併するって話だったのに、そのあとチーム数がどうとかで、このチームが九州のチームと合併して移転だとか、1リーグ制に変更とか、言葉の意味はその時のあたしにはよく分からなかったんだけど、私、そのとき生まれて初めて見たの。お父さんが、と言うより、大の大人が大声で泣くところを」
そう言う和美の瞳も若干潤んでいたように、幸彦には見えた。
「あたしはそのとき、お父さん泣かないでって一生懸命に言う事しかできなかったんだけど、色々あって結局ここのチームは残ったの」
「残って、その次の年にチームが優勝してね。どうやってチケットをとったのか日本シリーズにも家族みんなでここに来て、そのときに、和美、お前のおかげだって、お父さんが言ったの。おかしいよね。あたし、別に何にもしてないのにね」
「でも、この場所でお父さんに肩車されながらそう言われたら、なんだかこの眺めがとっても大切なものに思えて来て」
「以来、この場所とこの景色はあたしの宝物なのだ」

   ☆


 帰り道。球場前の歩道橋を越えると、ようやく人ごみもまばらになってきた。3人は長蛇の列になっていたバスをあきらめて、駅を目指して歩いている。
「どうだった?」
「いや、面白かったよ。ホントに」
幸彦が珍しく大真面目な顔で言うものだから、和美は思わず噴き出しかけた。
「そうね。今度はもっと近くで見てみようかしら」
「え?部長、野球に興味が?」
「野球に、というか、あの選手達。ああいう動きと肉体を脳裏に刻んでおくことは創作活動にきっとプラスになるわ」
若干、げんなりした顔になる幸彦と和美と。特に『肉体』というフレーズで何かを悟ってしまったために。
「まぁ、そういうジャンルで描いてる人達もいるみたいですけどねぇ」
ちょうど終わったばかりのコミケのカタログに、そんなジャンルのページがあったことを思い出してしまう。つくづく、人間はいらない記憶を選択して消去できない不便な生き物である。
「特に、私達の席から一番遠くに居た選手、あの人面白かったわ。まるでそこにボールが来るのが分かってるみたいに走り出して、当たり前みたいにジャンプしてボールを掴むところ、それこそまるでアニメか特撮みたいだった」
言いつつ、眼鏡をクイッと直す。
「ピッチャーでもなくバッターでもなく外野手が一番インパクトがあったってのもあの席ならではだったかもな」
「プレーそのものだったらまだいいのだけど、『応援が一番面白かった』なんて言われることだって珍しくないから」
「ま、確かにアレはインパクトあったな」
人の声が100メートル以上離れたところから押し寄せてきたことは強烈な印象として刻まれていた。耳に残るというより、脳に残る光景だった。
 2つめの歩道橋を過ぎると、鉄道の高架橋が見えてくる。
「そうそう。東瀬くん?」
「ん?なんだ?」
「あなたの宝物、もし良かったら教えてくれる?」
「……俺は至ってつまらん人間なので特に何もないんだけど」
一旦言葉を切って、空を見上げる。
「そうだな。今日のことが、きっと何年かしたら宝物になってるような気がするよ」


                             終わり

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 というわけで、急遽設定をでっち上げて書いてみました。まだこれから手直しする余地はたくさんあるとは思いますが、とりあえず一段落ついたので区切りとしてアップさせていただきました。

 にしてもおかしいなぁ、今資料をかき集めているのは中華ファンタジー用と16世紀ヨーロッパ用だったはずなのに。どうしてこうなってしまったんでしょうか。

 まぁ、みっともなかろうがなんだろうが、自分の願望をある程度盛り込んだ方が文章は書けるということが、コレを書いた事で再確認できたので今後の創作活動にも生かしていきたいと思います。

 この漫研の連中は結構書いてて面白かったのでまたこいつらを使って何か書きたい気はしています。


最後に、今回の反省点
・食べ物がうまいという描写ができなかった
・化の感想を球場への道中で言わせられなかった
・部長の描写がそもそもほとんど出来てない。というか総じて全体的に描写不足
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今さらですが非公開に変更
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読書、創作活動(文章のみ)、野球観戦、旅行、食べ歩き
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三十路オタです。そろそろ三十路の残りのほうが少なくなってきました。そんな年齢なので言う事やる事古くさくてすいません。

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