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「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
東瀬幸彦が漫研部室の扉を開けると、見慣れない装いをした茜浜和美が居た。しかも、たったひとりで。視界に入ったその姿を一目見てアゴが落ちなかったのは幸運だったと、心底思った。
「お前はなんでメイド服なんか着てるんだよ?」
見た目はそれなりによろしい和美なので、魅力が無いわけではない。むしろ、十分にグッと来るレベルである。
 しかし。実際にこうやって向き合ってみるとそういったことよりもむしろ妙なひるみを感じてしまう。メイド服は背の低い女性が着る分には保護欲をそそったりなんだりの効果があるのだが、自分より身長の高い女子が着ていると無性に圧迫感がある。
 なんだか、かいがいしく世話を焼いてくれる存在ではなく、怖い怖い教育係をイメージさせるのだ。子供の頃に見た何かのアニメの影響っぽいのだが、具体的な作品名が思い出せない。
「まぁいいからいいから。はい、これ。あんたの分」
「はぁぁ?」
状況の説明が一切無いままに衣装一式を手渡され、思わず声のトーンが上がる。
「あんたがメイド服着た画像を極秘ルートから入手したの。で、これはやはり直に勝負して思い知らせてやらないと!と思ったわけ」
鼻を鳴らして指を突きつける。
 その左手に握られている画像はどうやら幸彦が先日しでかしてしまった失態をおさめたブツらしい。極秘ルートってったって、どうせ部長だろ…。
「いやいやいやいや。おかしいだろそれ。勝負って何の勝負だよ?というかどんな勝負だろうと俺の負けでいいから勘弁してくれ」
「不戦勝なんて認めない!というかあたしにもちゃんと生で見せなさい!」
「本音いただきましたー!ていうかやめろー脱がそうとすなー!」
ズボンのベルトに手を伸ばしてきた和美を必死でかわす。
「イヤならとっとと着なさいっ。いや、やっぱり抵抗しなさい。こういうのも悪くないから」
「もうさっきから本音が止まらないな。ああもう分かったよ」
観念した幸彦はげんなりしながらも、和美の要求を受け入れる。
 それでも、無条件降伏という訳にはいかない。護るべきものは護らねばならない。
「ただし!女物の下着は穿かないからな!!」
「な~んだ。用意したのに」
「オイ!」
ポケットから取り出した何だか小さな布切れっぽい何かは、きっと普段なら男の夢の結晶なのだが、今この時だけは災厄を呼ぶ物騒な爆弾にしか見えない。
 というかそもそもとして同じ歳の女子が女性用下着を握りしめる光景に一向にときめかないしドキドキしないことに心底がっかりし終えると、ひったくるようにメイド服を受け取ってから本棚の影に移動する。
「覗いてもいい?」
「いい訳あるか!」
ボタンを外す手を止めて言い返す。
「というか出来れば部屋の外に出ててくれないか?着替え終わったら呼ぶから」
「えぇ~~~」
そこは抗議するところじゃないだろ、と、これは口に出さず。代わりにため息を人つつくだけに留めておいて着替えを再開する。
 外に出る気配が欠片もしない状況下で手早くボタンを外し、着替えを済ましにかかる。ブレザーの上着を脱ぎ、ネクタイを外し、シャツを脱ぐ。脱いだ衣類はさっと本棚に引っ掛け、問題のブツを広げる。
 上着が半袖なのはまぁいいとして。
「何でミニスカなんだよ!」
「何か問題が?」
「メイドさんは本来ミニスカとかありえねぇだろ。原点の時代背景的に」
「そっちか。そっちの抗議なんだ」
余裕あるじゃない、と笑う和美。
「まぁ、俺のスネ毛があらわになるのはむしろ見る方のダメージになるだけだからいいとして」
「えぇ~~~~。処理してないの~~?」
「なんでデフォで処理していると思う!」
己が風呂場でスネ毛をしょりしょりしているところを想像してしまって心理的ダメージを食う幸彦。できるならその場でのたうち回りたいくらいだったが、さすがに下着姿でそれをやったらそのまま通報されて入院させられかねないので、最後の最後で自制した。
「じゃ、これ穿いて」
そんな幸彦の苦悩も知らず、棚の向こう側から黒い塊が放り投げられた。
「なんだ、これ?」
塊をほどいてみる。
 それは2枚1組のやたらと細長い靴下だった。
「何かと思えばニーハイかよ!」
「それ穿けば誤摩化せるでしょ」
「ぐぬぬ」
用意周到にも程がある。猟師の熊罠でももうちょっとかわいげがある。
「あんまり時間かかってると他の人来ちゃうかもよー」
「あー。はいはい。分かった分かった」
一度着た事があるためか、着替えそのものはスムーズである。ただし、やはりズボンを脱いでスカートに穿きかえる事には心理的抵抗が伴わずにはいられない。
 しかし、モタモタすればちぐはぐで間抜けな状態の姿でいる時間がそれだけ長くなる。意を決してニーハイに足をつっこむ。
「しっかし、いつの間に俺のサイズを把握してるんだよ」
あつらえられたように身体にフィットするのだが、1個も嬉しくない。
「聞きたい?知りたい?」
「……やっぱりいいです」
うっかり聞いてトラウマになったり登校拒否になったりしても困るので丁重にお断りする。
 男の身でミニスカートを穿くのは余り気分のいいモノではない。そこから伸びる足にスネ毛が満ちていると特に。
 姿見は無いものの、我が目で十分違和感を味わう事が出来るその光景には言葉も出ない。
 それが、黒のニーハイソックスを履くと不思議な事になる。スネ毛を隠しても、所謂絶対領域が綺麗な状態ではないのでようやく見られるレベルという程度だが、最悪の事態だけは避けられている。少なくとも親に勘当されるようなことには…。
「なってるな。これで十分に」
自分で自分を騙しそうになったが、最後の最後で騙しきれなかった。
「これは…これはないよな」
何の罰ゲームなのか。一体なんで自分は人生で二度も女装させられているのか。本棚を隔てたホンのわずか向こうに、憎からず思っている女子が居るというのに。
 まぁそもそもその女子が元凶なのだが…。
「さっきから一個も嬉しくねぇ」
「マダー?」
「ああもう。もうちょっと待ってろ!」
穿きなれない物を穿くのは手間がかかるんだから、と言いながら、実はもう着替え終えている。
 人生初ミニスカなのだ。穿き終えても出て行くのにかなり勇気がいる。人生で何度もは発揮したくないタイプの勇気が。
「なんというか、俺がこの道に引き入れたようなもんだけど、どんどん茜浜に追い越されてるよ」
「早く来ないとこっちから」
「行くから!行くから待ってろ!」
脅迫めいた言葉に意を決して、恥をさらしに出る。
「どうだ!これで満足か!」
魔改造ビフォーアフター。そんな言葉が脳裏を巡って巡って止まらない。
 紺色の半袖メイド服。しかもフレンチメイド仕様、プラス、ニーハイソックス。頭にはホワイトブリム。そして顔はもちろん、化粧っけも何もないためにコラージュ画像のようにすら見える、いつもの幸彦の顔である。
「あはははははははは!」
「わ、笑いやがった!自分でやらせておいて!」
何この地獄絵図。
「あはははははははははははははははは!」
「あーくそう!」
怒り心頭し、髪飾りのホワイトトリムをむしり取って床に叩き付ける幸彦。
「やれって言っておいてこの仕打ちか!この仕打ちなのか!」
吼えるように熱を込めて抗議するものの、笑いの渦の中心にその心身を取り込まれてしまった和美には何を言おうが届かなかった。
「苦しい…」
そして呼吸困難の域に到達する。
 圧倒的な笑いの渦にただただ為すすべも無く呆然と立ち尽くす幸彦。己がサラシモノになっているという現実。さらにそれは、自分自身の姿を省みることで余計に虚しさが増していく。
「も、いい。好きにしてくれ」
がっくりとうなだれて椅子に座る。
「し、し、しゃ、写メるから…」
ようやく笑いがおさまりだし、携帯電話を構えるが、狙いが定まらない和美。
「やめろよ!こんな姿を残してどうする気だ!」
「まぁまぁ。あたしのも写メっていいから」
ようやく笑いがおさまり、撮影を終えると、くるっとその場で一回転する和美。その姿に、反射的に携帯を構えて1枚撮ってしまう幸彦。してやったり。
「折角だから、ツーショット撮る?」
「…じゃあ、まぁ、折角だから」
誘われると、ついつい乗ってしまう自分にあきれたり悲しく思ったりしながらも、和美の左隣に移動し、右側に和美、左側に幸彦の立ち位置で互いに携帯を構える。
「ほら、ポーズ!笑顔笑顔!!」
近い位置からせきたててくるイキイキした笑顔につられて笑おうとするものの、若干引きつり気味なのはどうしようもなかった。
 この時撮影した画像が出回って一騒動起こるのは、また別のお話。

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 いきなり頭の沸いた内容ですいません。シチュエーションは書けてもストーリーは書けない私が煮詰まるとこういうものをでっちあげてしまいます。ちゃんとした『物語』はやっぱり大変だし難しいです。それでも書きますけど。

 一応先日アップした『ぼくときみのたからものをラノベ風にリライト』に出てくる漫研の設定で書きました。シリーズタイトルが思いつかないのでこんな仮タイトルです。この漫研を舞台にしたお話は、こうやって色んな形の『たからもの』を増やしていくシリーズなのでそれにちなんだ名前にしようかとかあれこれ考えたんですが、良いものは出ず。最初に『問答無用のたからもの』ってのが浮かんだんですが、これ、20年前に読んだ本のタイトルでした。

 ネーミングセンスって何で磨いたらいいんでしょうか…。
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今さらですが非公開に変更
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読書、創作活動(文章のみ)、野球観戦、旅行、食べ歩き
自己紹介:
三十路オタです。そろそろ三十路の残りのほうが少なくなってきました。そんな年齢なので言う事やる事古くさくてすいません。

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