関西コミティア73参加レポート
終活の一環として、という前置きがギャグとして通用するギリギリの年齢になったことでもあるし、意を決して関西コミティア73に申し込んだ。サークル名は住まいにちなんで城州文字工房と名付けた。
さて。長年書き続けてきたおかげでストックはあるものの。どれかひとつを選べとなったらまず間違いなく一番人気のものが候補となるのは自然の成り行き。
私の場合は公表から4年半を過ぎた今なお地道な伸びを続けている『援交少女に懐かれて』シリーズがそれだ。しかしタイトルが宣伝その他に支障をきたすかも知れないと判断し『家出少女に懐かれて』と改題して冊子化することに決定。
続いてはこれをどんな本にしようかという段取りになるのだが、これは明確な青写真があった。その昔アダルトアニメの嚆矢となったくりぃむレモンシリーズのノベライズが存在し、私はこれを夢中になってむさぼり読んでいた。今回冊子化するにあたり、デザイン面ではそれを目指したものにしたかった。そこで拙ブログで延々感想を書かせていただいている『ここだけの話』シリーズの作者沖田葦織さんにかなりの無理を言ってお願いし、表紙裏表紙と挿絵も描いていただけることになった。
この表紙裏表紙は大変ありがたいことにしおりやポスターなどにも使用させていただき、それらは現地では来場者の目を惹き関心を呼んでくれたのであるから、どれほど感謝してもしきれない。
このように制作を進めていく中でこの1冊が良いものになればなるほどこれのみを持って参加するのは流石にスペースの面積的に心もとないと思い至った。
そのため急遽短編集も作成することにしたのだが、こちらは流石にありものだけではいかにも弱すぎると判断して大急ぎで1編を新規に書き下ろした。この短編集は表紙や挿絵をどなたかに依頼するいとまもなかったため表紙メーカーを利用させていただいて無事完成した。
そうして迎えた25日の朝。前日に猛威を揮った雨雲が空にまだ居残っていた。そこで荷物一式を詰め込んでいたスポーツバッグから紙袋に移し替え、そこに上から45リットルのごみ袋をかぶせる。これが上と横からの雨にはかなりの防御力を発揮し、中身は一切濡れることがなかったがこれによりボールペンとブックスタンドを置き忘れるという痛恨のミスが発生してしまった。
愛車を駆って我が家最寄りのインターから高速に乗り、一路会場であるインテックス大阪を目指す。
隣の島で大阪・関西万博を開催しているため参加を申し込んだ当初は渋滞を警戒していたのだが、万博が始まってから毎日渋滞情報をチェックしていたところさしたる混雑はなかった。どうやら自家用車の駐車場を島外に分散させていることが功を奏したようである。この日も行く手を阻むほどの車列には出くわさなかった。
問題だったのは雨である。京都大阪の府境を越えるあたりで徐々に雨量が増え、ついに視界が悪化するに至ったためいつもよりぐっとスピードを落として走る羽目になった。時間には余裕があったが、この強い雨が屋上駐車場からの荷運びを不安にさせた。
しかし。ありがたいことに阪神高速16号線を走るころにはそれもだいぶおとなしくなり、咲洲入りした頃にはほぼ止んでくれた。
南港北というややこしい名前のインターで高速を降り、そこから走ること5分ほどでインテックス大阪のビルが見えてくる。駐車場入口で係員さんに「コミケですか?」と聞かれ思わず苦笑い。
万博来場者が利用することを警戒してか参加証明を取らないと駐車料金が1万円になる云々の説明を受け、その旨がしっかりと書かれた証明書用紙をもらってから屋上駐車場へ。
到着したのが大体9時半くらいで、11時からのイベントなのにちょっと早く着きすぎたかと思ったが。参加証明のハンコをもらってから会場である2号館に行ってみると既に各所で設営が始まっていた。
私も取り急ぎ設営を開始する。初参加ながらそこはそれ、門前の小僧は習わぬ経を読めるもので迷いもなく数分程で無事完了。
通路に出て眺めてみると、大小2つ用意したポスターのおかげで見栄えが非常に良いことに頬が緩んだ。
右隣のサークルさんにご挨拶などをし、左隣のブースが空席のまま11時を迎えて拍手と共に関西コミティア73が開始。
正直なところ告知もそこまでしっかりやれたわけでもないし、1部でも売れれば万々歳という腹づもりでいたところ、開始15分ほどで早くも1部お買い上げいただけた。非常に良い幸先。
続いてやってきた男性は着ている白いカッターシャツに学校の刺繍が入っていた。
「これ、成人向けですか?」「はい」「あー、じゃあダメですよね」「残念ですが。ちなみにその服、コスプレじゃないですよね」「本物です」
という会話の末にフリーペーパーだけお持ち帰りいただくこととなった。「18歳になったらまた来てください」というお声がけも忘れなかった。
その後、しばしの空白期を経て「見本誌読んで買いに来ました!」という方が現れた。最高の一言がとても嬉しく。強く大きな自信になった。
3部目4部目はいずれもじっくりと目の前で見本をご覧いただいて「お願いします」と言っていただけた。4部目の方は短編集も一緒に。
その後はぱったりと動かなくなり。撤収するサークルさんもちらほら出はじめ、もう終わりかな、と思った14時過ぎ。目の前で足を止めた男性が手に取ってくださり、挿絵とあとがきを丹念にチェックしてから「お願いします」と言ってくださった。
これは往年のラノベ購読者定番のスタイルでもあり、そういう方に選んでいただけたのはかつて抱いていた野望が少しだけ成就したようで実に嬉しく、またどこか面映くもあった。
そんなこんなで終了時間まで粘っての最終結果は『家出少女に懐かれて』が5部、『短編集 あの夜のこと』が1部と初参加としては望外の大戦果だった。
その大戦果を元手に「同人誌の売上で焼肉」という実績も解除してしまおうかとも思ったが。想定以上に気力体力を消耗しており、それどころではなかった。お片付けの手伝いもする気満々で軍手も持参していたのだが愛車の運転席まで自身の体と荷物を引きずっていくだけで精一杯。
とはいえ昼食を抜いて自身のスペースにずっと座っていたので空腹でもあり、帰途阪神高速の朝潮橋パーキングエリアで豚丼を平らげ、セットのホットコーヒーを祝杯とした。
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