忍者ブログ

ふさ千明のおたネタ日記

漫画、アニメその他諸々の感想がメインのブログです。現在は「ここだけの話」シリーズについての感想を中心に運営しております。毎日15時の更新は終了し、現在は再び不定期更新に戻っております。

偽物語の第八話の予告が

 予想外すぎる人選で噴きました。

 まぁ、私がここでしたり顔でネタバラシをするのも台無しですので、こちらをぜひご覧下さい。

 昨今のとあるモノの傾向について一家言あり、物申しているところはなかなかカッコ良かったです。

 あと、カットの方もかなり愉快でした。素敵オチ。最近すっかりしおらしくなっちゃったあの方が久々に荒くれたところを拝見して嬉しかった私がおります。

拍手[0回]

PR

偽物語第七話「かれんビー其ノ漆話」を見たあとの感想

 この文章は視聴後数日後にほぼ記憶だけを頼りに書いているものですので、明らかな誤謬等あると思いますので、あらかじめご承知おき下さい。
 あと、「オマエやっぱり書いちゃったのか、これの感想」と自分で自分にツッコんでおきます。


 さて。
 今回は『かれんビー其ノ漆話』と銘打ってはありますが、この回は『ひたぎクラブ其ノ四』(もちろん其ノ参は化の十二話です)、だった気がしてなりません。それこそ、オープニングが『二言目』でもよかったくらいに。
 それは、今回はガハラさんがどうしても踏み出しきれなかった一歩を踏み出すためにはどうしても必要だったお話だったと思うからです。貝木との関係性について、阿良々木君の前で暴露されてもしっかり踏みとどまり、自ら引導を渡したところは今までとは方向性の違う強さの現れでした。あの時『だから連れて来たくなかった』と思ったのかどうか考察するだけでもじっくり楽しめそうです。
 でも、対決が終わったあとの消耗しつくしたところは『当初の予定どおりひとりで来てたらどうするつもりだったんだろう。阿良々木君に救援要請したのかな』といらない気を廻してしまいました。
 にしても「今夜は眠れなくなるかも知れない」というのがああいう意味だったとは…。もっとも、「優しくしなさい」なんて言われたらそれだけで十分眠れなくなりそうですが。


 また。貝木との対決シーンですが、私は賛否で言うと賛でございます。これまでとは違って派手な戦闘にはならなかった挙句(むしろ派手な戦闘は前半部分で妹とやっていました)、貝木の退き方がやや肩透かし気味に感じられた方もおられるかも知れませんが、むしろあの退き方こそ、己を知り敵を知る者、そして本物ではないと自らを言う者の姿だったと思います。詐欺師は退場シーンまで詐欺的なんですね。

 貝木が本物を知る偽物だったからこそ本物の怪異である吸血鬼を察知してあっけなく退いたのか、それとも他に別の思惑があるのか、原作未読なので続刊の展開をご存知の方からすれば分かりきった事を大仰に考察しているところは滑稽なのかも知れませんが、こういう作業そのものが結構楽しい私からすればこれで完全に原作の先を読まない覚悟をしてしましました。

 今回こういう視点だったので、火憐との戦闘は手のかかる頑固な妹を説得するために苦労しているなぁ、という風に感じてました。バス停と同化したりとリアルではなくギャグ基調の演出も、その一環かなぁ、と。

 なんにせよ、第八話以降に始まる「つきひフェニックス」も楽しみです。


 こういう文章は割とすらすらと出てくるのに、なんで小説を書こうとすると…。やっぱり私の中の吸収→消化→内面化→表現の作業工程を担う部分のどこかがおかしいんでしょうか。

拍手[0回]


出張と言えば

 出張先でオタ街周りをするのが定番でございます。まぁ、私の現在の職務管轄範囲はめったに出張しないんですけども。

 今回出張する事になった先である仙台は私が小学2年から5年まで住んでいた土地でもございまして。本来でしたらその頃の思い出の地を巡る等しても良かったんでしょうけれども、京都から仙台、しかも小型機での移動のダメージが思いのほかでかかったのと、夕暮れ時に目つきの悪い見慣れぬおっさんが小学校近辺をうろつくのはあまりにも危険な行為なのでやめておきました。

 で、代わりと言っては何ですが、オタ街周りしてまいりました。仙台は駅西口を出て、近い方からとらのあな、らしんばん、ゲーマーズ、メロンブックス、アニメイトとあるわけですが(他にもあったかも知れませんが、すいませんこれしか把握しておりません)、まずアニメイトへ。

 仙台朝市という通りに面したビルの2階にありまして。私、北は札幌から南は鹿児島までアニメイトに行った経験を持つのですが、入るまでに魚の匂いがするアニメイトはここが初めてでした。

 まぁ、元々買う予定の入っていた新刊が置いてあったら買っておこうか、くらいに考えていたんですが、なぜか『佰物語』を手にとっておりました。ついつい買ってしまいました。



 100本の小ネタの切れ味が実に素敵なのでこれ書きながら聞いていますが、楽しいですねぇ。小気味のいい会話。素晴らしい。でもこれ、100本分の感想全部1つずつ書けって言われたらさすがにキツいですねぇ。

 で、結局これの出費が予定外過ぎてまわっただけで終わってしまいましたが。

 そもそも住んでいた頃にはこういう店もなかったので、記憶の中にわずかに残った光景に見慣れたオタ的存在がドーンと入っているのは何とも不思議な感覚ですなぁ。

拍手[0回]


後藤沙緒里のいろはにほへと第178回「男の子、いいんじゃない?」感想

・本日は実は出張でして。移動の合間合間に作業をしていたらこんな時間で書き上がってしまいました。
・「2月も後半になってきてしまいました」「まだまだ寒い季節ですし、乾燥する時期ですね」「あたし、今年ヒドいです」「昨年末から、ヒドいです」「砂漠ってこういう事を言うんだ」「あたしのお顔が砂漠なんだって」そんなに乾いてるんですか。想像できない。
・「そういうお年頃なのかなってすっごいショックだった」さおりん…。それはきっと東京だからだよ。今年の気象条件が過酷だからだよ。きっとそうだよ。うん。
・「いかがですか?女子」「『パックして寝たのに、朝、効いてる気がしない』」「だから砂漠なんですって」盛り上がるガールズトーク。
・「妹に指摘されて、すっごいショックで」「『お前もう砂漠なんだよ』みたいな」「そんなに冷たいの?ねぇねぇ」妹さんがステキにドSです。
・「呪文を唱えながら鏡の前で努力している」「努力してるんですよ。かわいくないですか?」「あたし、もっと綺麗になるようにがんばる…なにこれ」この番組恒例の素敵な小芝居です。
・「悩みの続く時期だと思いますが、男子も女子も、乾燥対策気をつけて」「あと、インフルエンザ?そっかもう、そういう時期ですか」「ニュースとか見てると、学級閉鎖とかそういう事が起こる時期ですよね」「風邪の方も皆さん気をつけて過ごしていただきたいなって」私、昔は冬の方が好きな季節だったんですけどねぇ…。
・「みなさんからいただいたメールをご紹介していきたいと思います」「僕はまだ声優ファン初心者なので、テレビを見ていても、どのキャラをどの声優さんが演じているのか分かりません」「先日もさおりんの声が?とおもったら松来未祐さんでした」どのアニメのどの役の親方なんだろう。ああ、絶望放送がまだ続いてたら絶対ネタにしたのに!
・「さおりんは声優さんの聞き分けで来ますか?」「あたし、意外と聞き分けます」「聞き分けられてきますね、やっぱり」お仕事で関わってますからね。モロに。
・「女子は出来ない。女子、分かんないんですよね」「男子の方が意外と、『誰さんかな』とか当ててしまっていますね」関わってても感覚的なものなので必ず出来る訳ではないようです。
・「『あのCM沙緒里だよね』って言われた事があって、『違うっすけど』」なんか物凄くありそう。声優あるあるというかなんというか。
・「アニメ見てるときはね、そのストーリーを、もっともっと集中して「あと、お芝居とか聞いて欲しいなって思うんですよ。作り手側は」すいません。色んな事ばっかり考えちゃってすいません。あまつさえ勝手に色々考えて余計な事を書いたりしてすいません。
・「さおりんは坊っちゃんにめろめろなんですね」「坊っちゃんって言うのはわたしのお友達の第一子なんですけど」「もしさおりんだったら、男の子と女の子どっちがいいですか?」「ちなみに僕は男の子とキャッチボールをしたりしたいので男の子です」いいですねぇ。私は無事に生まれて来てくれたらそれだけでいいです。
・「あたしは断然男の子です」「男の子、優しいって言います」「分かんないよね」その傾向が強いとは思います。勿論例外はたくさんあるでしょうけれども。
・「女子はどうですか?」「『デパートの子供服売り場へ行くと、女の子のが可愛過ぎてそればっかり見ちゃって』」この辺は分かんないんですよねぇ。私ひとりで子供服売り場に行く訳にいきませんし、妻と2人ではもっと行けません。
・「私も、弟の事を思い出すとやっぱり男の子がいいなって思いますね」「自分とは違うから可愛いと言うか」いい弟さんなんですね。我が家は断絶しているので正直羨ましいです。
・「旦那様と息子がキャッチボールしてたら超萌えると思うんですよ」「ま、旦那と娘がいちゃいちゃしてるのも萌えると思うんですけど」「いいですね、こういう妄想」さおりんの妄想は概ね微笑ましい。概ね。
・「あたしもなかなかしちゃいますけど」「お友達の様子を見ていても、男の子可愛いんだなって」「あたしも最初は男の子がいいなっていう妄想をひとりで繰り広げております」「まだまだでしょうけど」声優さんは大変ですよねぇ、この辺。いやまぁ、声優さんだけじゃないですけど。

拍手[1回]


これも忍様のお導き

 化とか偽とか見ていますとどうしてもミスタードーナツのゴールデンチョコレートが食べたくなりまして。

 買いに出たついでに古本屋によったところ『狼と香辛料ノ全テ』を入手してしまいました。525円という非常にお買い得価格でした。



 これからゴールデンチョコレートを食べながら堪能したいと思います。



 

拍手[0回]


あのあと

 予定どおり『偽物語』の第七話を視聴してから就寝しました。相変わらず忍様萌え継続中です。出番はわずかでもキッチリおいしいところを持っていってくれました。まぁ、今回は流石にガハラさんの過去との訣別にエールを送りましたが。

 で、起きてからは怖れていたとおりに『ゼロの使い魔』を見始めてしまいました。しかも2期から。現在3期の第3話でございます。見つつ、改めて書き手の好みをうまく料理して読者を楽しませる事の重要性を学んでおります。そういう意味では大変勉強になります。

拍手[0回]



今週のアニオタ活動レポート

 今週は感想関係でアップしていないものとしては『森薫拾遺集』を購入しました。また、ニコニコアニメチャンネルで『らきすた』の第10〜第13話を視聴しております。

 さらに金曜の夜には近所のレンタル屋で『化物語』のするがモンキー、なでこスネイク、つばさキャット(上)(下)と『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱&にょろーんちゅるやさん』の5本を借りて来ました。

 化物語に関してはキャラクターコメンタリーが面白過ぎました。すでに何周もしております。止まりません。私も会話で楽しませるタイプの文章を得意としているつもりでしたが、やっぱりプロにはかなわない事を思い知らされました。一番のお気に入りは最終話の暦&翼組です。

 『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱&にょろーんちゅるやさん』は大本の『涼宮ハルヒの憂鬱』をちゃんと見ていないのに物凄く楽しめてしまいました。多分来週はこの続きを借りていると思います。

 一方、ニコニコアニメチャンネルでさらに手を広げるべくチェックしていて『ゼロの使い魔』にぶち当たりました。1話無料なので1期と2期のをそれぞれ見てみました。まだ課金はしてませんが、かなりの確率で今後手を出しそうな気がしています。もしかすると2期から手を出しているかも知れません。

 あと、同じくニコニコアニメチャンネルでは1990年代のところで『ゲンジ通信あげだま』を見つけたのでこれについてもそのうち『昭和生まれの平成懐古話』で取り上げるつもりです。


 この後はニコニコ生放送で偽物語第6話を見て、そのまま毎日放送で第7話を連続して視聴するつもりです。それまでの時間は先程アップしたばかりのラノベ風アレンジ版『ぼくときみのたからもの』の手直しをするつもりです。アップしてから手直しって大いに間違ってますが、なぜかその方がアラがよく分かるのでやってしまいます。たぶんアップした瞬間から書く側の目ではなく読む側の目で見る事が出来るんでしょうね。


 最後に。来週は珍しく泊まりがけの出張などというものが入ってしまったのですが、その出張先を舞台にしたアニメを借りられなかったのが地味に痛いです。ニコニコアニメチャンネルで見ようかとも思ったんですが、全話パックで2000円越えはちょっときつい…。

拍手[0回]


習作「ぼくときみのたからもの」をラノベ風にリライト ver1.1

『♪いつもどおりのある日の事~ 君は突然立ち上がり言った~』
漫研の夏恒例行事、視聴覚室を占領してのアニメ鑑賞マラソンは間もなく『化物語』の第十二話が終わろうとしていた。この日はコミケ終了の翌々日ということもあってか、事前に参加表明をしていた何名かの姿がない。
『♪いつからだろう~ 君の事を~』
「いい最終回だったな~」
「もうええっちゅうの。何度めだよそのボケは。これ見るたびに言ってんじゃん」
凸凹コンビな細身と太身のやりとりは、いつ見ても漫才師のようだ、と東瀬(あずせ)幸彦は思った。あいつらは漫画研究会じゃなくて漫才研究会だ、と評した者が居るのもむべなるかな。
 この2人、成本誠と河本明は高校の入学式で出会って意気投合して以来のコンビなので結成から半年も経っていないはずなのだが、とてもそうは思えない。ちなみに大きい方が明で小さい方が誠である。
「あなたたち、余韻台無し」
と、冷たく静かに、だがしっかりと響く声がした。
『♪どうかお願い~驚かないで~聞いてよ~』
「あ、すんません部長。あと3回分ありますけどキリがいいからここで休憩にしていいですか?」
『火憐だぜ!』『月火だよ!』
「そうね、一旦止めて頂戴」
部長こと早川美都(みさと)が眼鏡位置を直しながらそう言うと、すばやく動いてリモコンを構える幸彦。
『予告編クイズ!』しかし、まだ止めない。タイミングを見計らうように画面を見据えている。
「にしても、あっちぃなぁ~」
「しょうがねーじゃん。節電節電」
凸凹コンビ、成本誠と河本明はそう言いながら扇子を動かす手を休めない。
『次回!つばさキャット 其ノ参!』『其ノ参とそもさんって似てる』ここで一時停止ボタンを押す。凸凹コンビによって手早くカーテンが開けられ、光とともにわずかだが室内に風が通った。臨海部特有の、潮の匂いを含んだ風だ。
「部長がいなかったら今年はこうやって視聴覚室を使わせてもらえなかったかも知れなかったんだから、感謝し」
「宝物、かぁ」
それまで沈黙を保っていた茜浜和美が、急に口を開いて幸彦の話をぶった切った。しかし、切れ長の眼に宿る強い光を見ると抗議をする気にはなれない。
「見せてあげたい宝物…ねぇ」
おもむろに美都の方を向くなり
「部長はそういうのってなんかありますか?」
とたずねる。
「そうね。相手がドン引きしないって誓約するなら見せてあげてもいい秘蔵のハードBLコレクションとかはあるけど」
「やめてください。てかそういうことじゃなくって」
心底げんなりした顔ですがるように。おそらく、内容を想像してしまったのだろう。
「分かってるわ」
聞くんじゃなかった、と小さく口の中だけでつぶやく。
「そういうお前はどうなんだ?茜浜」
「あたし、あるわよ」
幸彦の問いに、即答が返ってきた。正直なところ想定外だったので、せっかく放られたうまくボールを投げ返す事が出来ない。
「へぇ」
と言うのが精一杯だった。
「……何よ」
「いや、茜浜が、ねぇ…」
「あたしがそういうロマンチシズムとは無縁だと?」
口の端だけで笑う仕草が良くない予兆であることは、この1年半弱で存分に思い知っているため、素直に引くことにする。
「すまん。失言だった」
「見たい?」
しかし、和美はそれ以上深追いしてこなかった。
「へ?」
その反応と言葉の内容とに、二重に意表をつかれ、思わずほうけた顔になる。
「見てみたいかって聞いてるの」
「……正直興味は、あるな」
「ほほぅ」
ニヤニヤという音が聞こえて来そうないたずらっぽい笑顔に心底を見透かされたようでうっかり目をそらしてしまう。
 それが和美のニヤニヤを余計に助長することになるのだが。
「茜浜さん、私も見せてもらってもいいかしら?」
「もちろんです」
「で、あんたたちはどうする?」
この場にいる残りの2人にも声を掛ける。
「あ。俺、この後はバイトッス」
「同じく」
オタクをするにも金がかかるから。そう言って彼等は勤労青少年の顔つきになる。
「じゃあ2人だけね」
「いや、俺まだ行くかどうか答えてないけど」
「行くんでしょ?」
「はい、行きます」
我ながら無駄な抵抗だったな、と苦笑する。
「今が2時半で…あと3話ね。ちょうどいいわ。化を全部見たら行きましょう」
「じゃ、休憩は終わりってことで続きに行きましょうか。東瀬くん、お願い」
「はいはい。了解です」
幸彦は手元のリモコンを再度構えた。


   ☆


「ここって、野球場じゃないか!」
「そうよ。海風と鴎のスタジアム」
このあたりは埋め立て地であるためか、他ではあまり見られなくなりつつある震災の爪痕を歩道のあちこちに残しており、さらには夕暮れ時ということもあって若干歩きづらい。
「ここに、あたしの宝物があるの」
「へぇ~」
感心するようなそうでないような、曖昧な感嘆。
「嫌なら別にいいのよ?」
「別に嫌じゃない。野球自体は、昔割と見てたし。せっかく来たんだから、久々に見てみたい」
素っ気なく言われてしまうと、幸彦は自分でもビックリするくらい早口で返した。
「部長はどうしますか?」
「私も別に異存はないわ」
「じゃあ3枚用意してきますから、ここで待っててください」
言うなり、肩まである髪をゆらして駆け出して行く和美。混雑しているのに、巧みにすり抜けていくからかそのスピードはほとんど落ちない。
「なんか、意外ですね」
「あら、そう?」
「部長は意外じゃないんですか?」
「だって、どこかなんて想像もできなかったんだもの。どこだって予想外になるから、意外という言葉には当たらないわ」
「ああ、なるほど」
静かにそう言われてしまうと、どう言葉を継いでいいのか分からず、幸彦はやや気まずく沈黙する。
 美都はそれを見ると、カバンから本を取り出して、ページをめくる。
 手持ち無沙汰な幸彦は特にすることも無いので、何とはなしに周囲を見渡してみると、自分の知っている球場の光景とはだいぶ異なることに気がついた。屋台だか出店だかがたくさん出ているのはまぁいいとして。関係者入口みたいなところの真ん前にはなぜか舞台がしつらえられていて、その上で歌ったり踊ったりしている一団がいる。右手には2階建てとおぼしき建物があって、どうやらグッズショップらしいのだがなぜか『ミュージアム』と書いてあるのが謎だった。
「そう言や、野球場に来るのなんて、何年ぶりだろう」
誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやく。思い返せば、昔はそこそこ見ていた方だったはずだ。ただ、徐々に興味が漫画やアニメにシフトして行き、そちらに意識が向かなくなったというだけのことで、それはある種自然なことだと思っていた。
「宝物、ねぇ…」
今ひとつ意味を掴みかね、口の中だけでそっと言葉にしたとき、和美が切符売り場から駆けて来るのが見えた。
「お待たせ!」
美都は素早く本をしまい
「お疲れさま。茜浜さん、いくらなの?」
とたずねる。
「いいんです。これ、実はタダ券使ったんです」
言いながら、内野自由席のチケットを見せる。
「お父さんがファンクラブに入ってて、特典でもらえるんです。でもお父さんは『俺は内野じゃ見ないから』ってあたしにくれて。で、もらったものの、あたしもずっと使う機会がなくて財布の中でほったらかしにしてたんです。だから気にしないでください」
「でも、それに甘えるのも悪いから、なんかおごるよ」
「言ったね?」
和美の瞳がキラリと光ったような気がした。


  ☆


 階段を昇って昇って、一番上まで。ようやくたどり着いた席からは、スコアボードがちょうど真っ正面に見えた。ライトスタンドやその近くの内野席はみっちりと満員だったが、この辺は若干ゆとりがある。3人分くらいの空きはすぐに見つかり、腰をおろすことができた。
 美都、和美の順に座り、両手に食べ物を大量に抱えた幸彦が通路側に陣取った。ここに上がって来るまで、和美は3つの店で買い物をした挙句「野球観戦って、お腹が空くのよねぇ」と言っていたので追加のご用命がくだることに備えた為だ。
 まずは袋からあれこれと取り出して各人希望のものを配る。
「あ。あたしそのカツサンドね」
「はいはい。部長はどれでしたっけ?」
「コーヒーとパエリアを」
幸彦は2人に手渡した後、自分のカレーライスを取り出す。
 ひととおり行き渡ると、改めて眼下に広がる光景を見渡す余裕ができる。緑色のグラウンドでは、ホームチームの選手達が練習をしている。それがサークルライン照明によって浮かび上がると、日常から切り離された空間のようで幻想的ですらある。
「確かにいい眺めではあるな」
「そうね。ちょっと新鮮」
2人がそういうと、和美はやや照れくさそうに
「別に、そんなに熱心なファンって訳じゃないの。受験の年にちょうどチーム自体もごたごたしちゃってたりしてて、今はちょっと離れてる感じかな」
と言い、少しの間を空けてから言葉を継いだ。
「でも、今日あのシーンを見て思い出したの」
「知ってる?このチーム、何年か前に無くなりかけたことがあるの」
「えーと。アレか。合併騒動だかなにか」
小学生の頃の話なので、幸彦は若干あやふやな記憶を掘り起こすことになった。
「そう。うちはお父さんが熱心なファンでね。小さい頃からここによく連れてこられたの。あのニュースが流れた時は、もう大変だったわ。お父さんが家で大騒ぎしちゃって」
和美が若干目を細めた。
「あの時は、最初関西のチーム同士が合併するって話だったのに、そのあとチーム数がどうとかで、このチームが九州のチームと合併して移転だとか、1リーグ制に変更とか、言葉の意味はその時のあたしにはよく分からなかったんだけど、私、そのとき生まれて初めて見たの。お父さんが、と言うより、大の大人が大声で泣くところを」
そう言う和美の瞳も若干潤んでいたように、幸彦には見えた。
「あたしはそのとき、お父さん泣かないでって一生懸命に言う事しかできなかったんだけど、色々あって結局ここのチームは残ったの」
「残って、その次の年にチームが優勝してね。どうやってチケットをとったのか日本シリーズにも家族みんなでここに来て、そのときに、和美、お前のおかげだって、お父さんが言ったの。おかしいよね。あたし、別に何にもしてないのにね」
「でも、この場所でお父さんに肩車されながらそう言われたら、なんだかこの眺めがとっても大切なものに思えて来て」
「以来、この場所とこの景色はあたしの宝物なのだ」

   ☆


 帰り道。球場前の歩道橋を越えると、ようやく人ごみもまばらになってきた。3人は長蛇の列になっていたバスをあきらめて、駅を目指して歩いている。
「どうだった?」
「いや、面白かったよ。ホントに」
幸彦が珍しく大真面目な顔で言うものだから、和美は思わず噴き出しかけた。
「そうね。今度はもっと近くで見てみようかしら」
「え?部長、野球に興味が?」
「野球に、というか、あの選手達。ああいう動きと肉体を脳裏に刻んでおくことは創作活動にきっとプラスになるわ」
若干、げんなりした顔になる幸彦と和美と。特に『肉体』というフレーズで何かを悟ってしまったために。
「まぁ、そういうジャンルで描いてる人達もいるみたいですけどねぇ」
ちょうど終わったばかりのコミケのカタログに、そんなジャンルのページがあったことを思い出してしまう。つくづく、人間はいらない記憶を選択して消去できない不便な生き物である。
「特に、私達の席から一番遠くに居た選手、あの人面白かったわ。まるでそこにボールが来るのが分かってるみたいに走り出して、当たり前みたいにジャンプしてボールを掴むところ、それこそまるでアニメか特撮みたいだった」
言いつつ、眼鏡をクイッと直す。
「ピッチャーでもなくバッターでもなく外野手が一番インパクトがあったってのもあの席ならではだったかもな」
「プレーそのものだったらまだいいのだけど、『応援が一番面白かった』なんて言われることだって珍しくないから」
「ま、確かにアレはインパクトあったな」
人の声が100メートル以上離れたところから押し寄せてきたことは強烈な印象として刻まれていた。耳に残るというより、脳に残る光景だった。
 2つめの歩道橋を過ぎると、鉄道の高架橋が見えてくる。
「そうそう。東瀬くん?」
「ん?なんだ?」
「あなたの宝物、もし良かったら教えてくれる?」
「……俺は至ってつまらん人間なので特に何もないんだけど」
一旦言葉を切って、空を見上げる。
「そうだな。今日のことが、きっと何年かしたら宝物になってるような気がするよ」


                             終わり

拍手[0回]


ただ今作業中なのですが

 それを中断して敢えて書きます。
 作業用BGVとしてレンタルして来た化物語のDVDをキャラクターコメンタリーバージョンでずっとながしていたのですが、最後の最後、阿良々木暦&羽川翼コンビのコメンタリーが楽し過ぎてそれまで快調に私の感想書きをサポートしてくれていたはずのこのDVDが副音声から主音声に代わってしまいました。いやぁ、このためだけに借りて来て本当に良かった。

 というわけで作業に戻ります。現在二百七十六話まで完了しておりますので、後2時間くらいしたら17日23時59分付けで絶望先生二八集の感想がアップできると思います。それが終わって余力があったら一次創作に入る予定です。正確には一次創作になるのかどうか微妙な事をやってますが…。

拍手[1回]