忍者ブログ

ふさ千明のおたネタ日記

漫画、アニメその他諸々の感想がメインのブログです。現在は「ここだけの話」シリーズについての感想を中心に運営しております。毎日15時の更新は終了し、現在は再び不定期更新に戻っております。

先日ふと浮かんで頭から離れなくなった

 猫物語(黒)の第一巻はコメンタリーが八九寺真宵と神原駿河、そして第二巻は影縫余弦と斧乃木余接となっておりますが。

 どうにも先日から「阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎコンビによる2本連続オーディオコメンタリーで阿良々木暦生き地獄」というネタが頭から離れません。さぞや愉しいことになること請け合い。いや、さすがに二次創作する余裕とか自信とかは皆無ですけど、ガハラさん今回出番無かった分コメンタリーで無双していただきたかったな、と。ただそれだけです。

「吸血鬼の治癒力を以てしても回復が間に合わない早さで胃に穴が!」
「穴が開くのは胃だけでいいのかしら?」

こんな感じで。


……どうしても我慢できなくなったら書くかも知れませんが、以前真似してみてどれほどハードな作業か心底思い知りましたので多分やらないと思います。

拍手[2回]

PR

絶望先生SS 日塔奈美の日記 その27(最終回)

○月○日
先生との結婚が決まった。と言っても、私は1/12の存在だけど。年に1度、一ヶ月だけの夫婦だけれど。

それでも。

嬉しいと思った。
だから。
今のこの気持ちを日記に残しておこうと思う。これから、みんなと一緒に暮らす時間の中で、もしかしたら忘れてしまうかもしれないから。そうした時に、これを読むことで思い出せるかもしれないから。

みんなで先生と暮らす。もちろん、可符香ちゃんも一緒に。むしろ、この計画は可符香ちゃんが主役で、私達は脇役に過ぎないのかも知れない。
私だけでなく、まといちゃんも加賀ちゃんもあびるちゃんも藤吉さんもカエレちゃんも三珠ちゃんも千里ちゃんも霧ちゃんもマリアちゃんも芽留ちゃんも。みんな、主人公になれないまま生きていくのかも知れない。

それでも。
そうすることが、みんなで決めたことだから。
そうしたいと、みんなで願ったことだから。
糸色望という男性と、みんなで一緒に居る。みんなと一緒に生きる。

私達の幸せの形は、きっと不思議な十二角形をしているのだから。

だから。

明日、私達は船に乗ります。

何年かして、私が今のこの気持ちを忘れてしまったときに、これを読んで、思い出してくれることを願って。


このページは、日塔奈美から糸色奈美への、最初で最後の贈りものです。


(第三十集「一つの可能性としての第30X話」より)

拍手[1回]


二次創作関係のお知らせ

 何をどうトチ狂ったのか、ふとした思いつきから書きあがってしまった文章をpixivにアップしました。タイトルは「忍ラブリー」です。アニメ版偽物語のSS(二次創作)となっております。毎度お馴染み18禁な文章なのでレギュレーションの問題からこちらにはアップ出来ませんので、もうひとつのほうのブログにパスワードをかけてアップしてみました。もし読んでみたいと思われた方はこちらへお願いします。
 ログインを行なう際はニックネームのところに何でもいいので適宜文字を入れていただき、パスワードはhusachiakiと入れていただければご覧いただけるようになっております。

 お手数をお掛けする程の文章ではないのですが、現在万人に公開出来て私が自由に編集出来る場所というのが限られておりますゆえの措置ということでご寛恕いただければ幸いです。

拍手[1回]


二次創作関係のお知らせ

 個人的に大変強い思い入れがある「GS美神極楽大作戦」の二次創作最新作を現在作成しておりまして、出だしの部分までをZEROSIGHT様の掲示板に投稿させていただきましたのでこちらでお知らせさせていただきます。個人的にずっと追いかけ続けてきた横島とおキヌのカップリングのラストエピソードとして位置づけたお話です。

 一応全体のスジは出来上がっているのであとは書くだけなのですが、それだといつ完成までこぎつけられるのか分からないので、順次キリのいいところまで書きあがったら先方掲示板へ投稿させていただきたいと思います。

 また。内容はR−18となっておりますのでご注意ください。

拍手[0回]



お知らせ

 pixivに18禁男性向け小説の物凄く短い奴をアップしましたのでお知らせさせていただきます(私のpixivページにはブログに貼ったリンクをクリックしていただければ飛べます)。ド直球な内容のためここにアップするのがいささかためらわれますので……。

 pixivのアカウントをお持ちでない方で、読んでみたいと思ってくださる方のためにも何らかの方法をとりたいと思いますが、うっかりと睡眠時間をごりごり削ってしまったのでしばしお待ちください。

 にしても、タグやらタイトルやらにRー18って入れるだけでこんなに閲覧数が増えるとは。やはり大事なのはエロスですかそうですか。ちなみに、習作をステップにして書いているのもやっぱりRー18ネタですので多分ここにはアップ出来ないモノになると思います。



 一応、これでも最終着陸目標は一般向けなんですけども。
(追記:追加でもうちょっと長いヤツも別にアップしました。同じくご覧いただけましたら幸いです)

拍手[0回]


落語「メイド寿司屋」

 以前、じょしらじの感想でちょろっと書きました「メイド寿司屋を舞台にした落語」が完成しましたのでこちらにアップいたします。

 もしかしたら似たようなお話が存在するかも知れませんが、一応オリジナルです。経緯を少しばかりお話させていただきますと、この噺は最初じょしらじの『おーぷにんぐこばなし』投稿用で書いていましたが、聞いているうちに「これは有名な噺をパロった内容の方が良いんだな」と感じ、それまで書いていたものを一旦止め、改めてその方向性で探ったものの形になる前にじょしらじが終了してしまいまして。

 まぁ、せっかく手を付けたんだから書き上げてしまおうと思い直して最初に思いついたメイド寿司屋の噺に再び取りかかり、なんとか完成にこぎ着けました。

 現在創作リハビリ中の身、大変つたない内容ではございますが、御笑読いただけましたら幸いでございます。


   メイド寿司屋

一席、おつきあいをお願い申し上げます。
えー、今や世の中にすっかり「メイド」というものが定着してございまして。初めはメイド喫茶くらいだったものがメイドマッサージやメイド耳かき、挙句はメイドトレインなんてものも実在するようになりまして、存在しないものをでっち上げようという者にはなんとも油断のならぬご時世でございます。

また、このメイド産業、アキバくらいだったものが、大阪ニッポンバシ、名古屋は大須、博多は天神と日本各地で見られるようになりまして…。みなさまも気がつくとご自宅のほど近くにそんなお店が出来ていたりする、そんな油断も隙もないご時世となっております。



ドンドン。
「おう、オタ吉、いるかい?」
「オタ五郎かい。知ってるだろう。俺が部屋に居ないのはトイレに行く時だけだよ」
「そう言うなよ。せっかく飯でも食いに行こうと声をかけに来たんだぜ」
「飯?飯ならさっき密林から届いたコロッケソバがあるからそれでパパッと済ませるつもりだった」
「おめぇのこったからそんなことだろうと思ったぜ。コイツを見な」
「なんだい、このいかにもなちらしは…メイド寿司?」
「そうよ。この街にもできたらしくってな。これなら普段引きこもりっぱなしのおめぇも外に出る気になるんじゃねーのかい?」
「おごりかい?」
「あたぼうよ!と言いたいところだが、まわらねぇ寿司だからなぁ」
「ちょっと待っててくれ。おっかさんにこづかいねだってくらぁ」
「お、行っちまいやがった。…なんだかあいつをダシにして俺がタカッてるみたいでどうにもかっこわりいな」
「おっかさん、外に飯食いに行くっつったら涙流して喜んで小遣いくれた」
「おめぇの普段が忍ばれるねぇ……さ、行こうか」
「おう」
というわけでオタ吉とオタ五郎、連れ立ってメイド寿司屋へと参ります。
「お、ここだここだ。思いっきり『メイド寿司』って看板が出てるな」
「というか、まんまなんだな店名」
「中へ入ろうぜ」
がらりと戸を開けますと、中はごくありふれた、回らない方の寿司屋の内装ですが、そこに立っている店員は全員が全員エプロンドレスを身にまとったメイドさんという、どうにも摩訶不思議な光景。
「おかえりなさいませー」「おかえりなさいませー」「おかえりなさいませー」
「2人だけど、いいかい?」
「どうぞこちらへ」
「お、おれ、回らない寿司もメイドさんの居るお店も初めてだ」
「そのふたつが並列ってのもどうなんだ」
「お茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「何になさいますか?」
「そうだなぁ……」とふたりが壁にかけられた品書きをサッと眺めますと、どうにも見たことの無い名前ばかり。いえ、正確にはオタ吉もオタ五郎も、その名前そのものを見たことはございますが、寿司屋ではついぞ見かけぬ名前ばかり。
「あのー、あそこの『若本』って言うのは?」
「はい。所謂アナゴのことでございますご主人様」
「……………ああ」
「そういうことか」
「お分かりかも知れませんが、ご説明させていただきますと、普通にメイドが寿司を握るだけではいささかインパクトに欠けると思いまして、お出しするネタ全部をその方面の名前で置き換えさせていただきました」
「……オタ五郎、どうする?なんだかちょっと思ってたのと違うよ?」
「どうもこうもあるかい。俺もお前もイッパシのオタクなんだから、こういう趣向はおあつらえ向きじゃねえか。楽しませてもらうとしようぜ。おう、せっかくだ。その、若本の握りを2貫頼むぜ」
「かしこまりましたご主人様」
「大丈夫かな?」
「まずかったら適当に頼んでとっとと引き上げてそれこそコロッケソバでもたぐりゃいいさ」
「お待たせいたしました。若本2貫でございます」
「おお、回転寿司と違ってちゃんと煮ツメが塗ってあるな。どれどれ」
「んぐんぐんぐ……これ、うまいよオタ五郎」
「こいつぁ驚いた。久しく食べたことがねぇ」
「お次は何になさいますかご主人様」
「そうだな。握り寿司と言えばマグロが定番だが、このメニュー表だとどれになるんだ?」
「オタ五郎、分かるかい?」
「おめぇもちっとは考えろ」
「あの『豊作』ってのは違うかい?」
「豊作?ほうさく…あれか、サーモン豊作か!」
「はい、ご名答でございますご主人様」
「なんだか正解しても負けた気がするが、せっかくだ。マグロの前にサーモンも行っとくか。豊作2貫!」
「かしこまりましたご主人様」
「あそこの、『チエちゃんの友達』ってのはなんだろうね」
「そりゃお前、ヒラメだろ」
「『三平』はカッパだね」
「これはサービス問題だな」
とまぁ、あれこれ類推していると、次から次からそのネタが「お待たせしましたご主人様」と、彼らの前に置かれます。
「注文してないけど、返すのも悪いしなぁ」
と、ふたりが食べていると、あれよあれよという間に腹一杯になってしまいました。
「ああ、もう限界だ。これ以上は食えねぇ」
「えい、降参だ。メイドさん、マグロは結局どれだったんだい?」
「あちらのモザイクがかかった札(ふだ)がマグロでございます、ご主人様」
「なんだってモザイクなんかかけてるんだ?」
「ネタも値段も大人向けですので」
おあとがよろしいようで。

拍手[2回]


さよなら絶望先生SS(二次創作) 「絶望仕事人」プロローグ

   絶望仕事人プロローグ

「八千石の大身旗本、糸色家の子弟たる身でありながらこのような裏長屋で寺子屋を開いて糊口を凌いでおられるとは…なんということでしょう。お兄様かっこ悪い!」
島田髷を結い、絹ごしらえの小袖姿で高々と笑うは旗本糸色家の息女、倫。
「この糸色望。寺子屋稼業とは言え市井に身を置き我と我が身を養うに、なんら恥じるところはありません!」
「聞けば、寺子屋と言いながら通うてくるは若いおなごばかりとか」
「ど、どこでそれを!」
「ちなみに江戸では『こや』という名前が嫌われ、実際は寺子屋ではなく手習指南所などと呼ばれたそうですわ、お兄様」
「そんな通りの悪い名前だと読者が混乱するじゃないですか!学術論文じゃなくて時代劇なんだから寺子屋で良いんです!」
表の顔は冴えぬ寺子屋のあるじ。そしてその裏は、金にて晴らせぬ恨みを晴らす絶望仕事人の元締。

   ☆


「でもなんで絶望仕事人なんですか?」
「日塔…いえいえ、お奈美さん、金で殺人を請け負うこと以上に絶望の理由がありますか?」
無表情のまま、シレッとした声で答える。
「いえ、そっちではなく、なんで初代の『仕掛人』じゃないのかなーと思いまして」
「それも知名度の問題です!初っぱなからメタなツッコミの連発はやめていただきたい!」
「絶望した!のっけからこんな展開なことに絶望した!」
「はいはい、お約束お約束」
「ええ、ひととおり儀式も済んだことですし、そろそろ本日の依頼人とお会いしましょうか」
静かに立ち上がると、待たせていた別室へと赴く。
「お待たせしました」
部屋で待っていたのは頭巾で顔を隠した小太りの男だった。室内が薄暗いことと相まって、年齢は判然としない。
「私も天下りたいのです!」
望が彼の正面に座るや否や、開口一番、男は叫んだ。
「奴を始末すれば!奴が亡き者となれば枠が空いて私が…そうすれば念願の!」
そこまで言った時、背後から白い細帯のようなものが彼の首に巻き付いた。
「ぐっ」
ひとつ呻いて、がっくりとうなだれた。
「すいませんねぇ、生憎と先方から既にご依頼をいただいていたもので」
シュルルと音を立てて、仕掛の的だった男から、絡まっていたものが解ける。
「あびる殿、ご苦労でした」
「先生……いえ、元締。雑作も無いことです」
半身を繃帯で巻かれた少女がにこりともせずに応じた。
「これは取り分です。収めておいてください」
「ありがとうございます」




と、まぁ。こんな感じです。一次創作がなかなか進まないので創作リハビリの一環として書いてみました。あの面々を必殺仕事人の世界に放り込むと面白んじゃないか?という思いつきから生まれたものですが、せっかくなのでシリーズ化できればいいなぁ、と思ってます。とりあえず書きあがったらこちらとpixivのほうにアップする予定です。


 リハビリなので出来の方は正直自信がありませんが、お付き合いいただけましたら幸いに存じます。

拍手[3回]


2013年 年始旅行記(4日目&5日目)

 この日も起床は定刻。昨夜入った風呂が心地よかったのでこの日も朝風呂へ。昨夜は混雑していたのだが、朝はほどんど人影もなくゆっくり楽しめた。

 風呂の後は食事である。ここの宿のバイキング形式な朝食もかなり魅力あるものだったが、我々にはひとつアテがあった。

 昨夜、船で戻ってくる時に使った桟橋のすぐ近くにある唐戸市場である。市場でありながらイートイン機能を有している店もあるため、寿司唐揚げ雑炊等のふぐ料理各種を手軽かつ格安に味わえる。

 以前フェリーを使って0泊2日で強行軍をしてまで食べに来たことがあるくらい、ここは魅力的な場所である。

 ホテルから唐戸市場までは車でほんのすぐの距離。昨日、船を降りてからタクシーで移動した道を逆にたどれば数分で到着する。

 早めに出発したことが功を奏してか、駐車場は余裕がある状態だった。場所を選んで好位置に車を止め、いざ市場へ。

 まだ時間が早すぎたため準備中の場所も多く、雑炊等も絶賛仕込み中だったので場内を2周ほどして我が家用土産の目星を付けておく。せっかくなので2階にも上がって生け簀を眺めたりもする。











 9時半になってイートインがオープンしたため、いざ突撃。寒かったこともあり、2人揃って雑炊にする。昨夜こってりしたものばかり食べたためだろうか、それとも久しぶりだからだろうか、さっぱりとした雑炊の味がこれまで以上に美味く感じた。

 妻は雑炊で打ち止めにしていたが、私はさらに寿司と唐揚げを追加。ふぐのみが持つ白身の魅力をみっちり堪能させていただいた。

 さて。腹を満たした後は買い物タイムである。ここにはふぐと名のつくものはトラフグ、マフグ、サバフグと揃っているので、大きさと値段とを見て選ぶことが出来る。
 質量共に豊富にあるからじっくり選ぼうと思っていたら、次々と売れていってしまうので慌てて購入。

 お店から自宅用に1つと、両方の実家用にそれぞれ1つ。計3箱発送する。

 ちなみに我が家用にはマフグを1匹まるまる鍋用に捌いたものを、食べ盛りの甥っ子がいる妻の実家方面には冷凍のふぐ唐揚げをたんまりと、老夫婦2人の我が実家にはトラフグの刺身と湯引きを少量。

 後で食べる用に寿司の追加購入をして、買い物終了。

 車に戻るべく外へ出ると、どう見ても野良という猫様がこちらに向かってくる。どうやらこの近辺に住み着いていて、人間にエサをもらい慣れているようでこれまで見たこともないような念のいった媚の売り方をしてくる。
 猫好きにかけては人後に落ちない我々はエサを献上したい強烈な欲求と戦うことになったが、理性が勝ってどうにか振り切る。

 入場待ちで長蛇の列が出来ている駐車場から車を出し、下関インターチェンジへ。このとき、途中で山口県警察高速道路交通警察隊下関分駐隊所属のパトカーが道を譲ってもらえず困っていたので入れてあげたところ、お礼のハザードを点滅された。割と譲った経験が多いつもりだが、警察車両からハザード出されたのは初めてである。

 どこまで一緒に行くのかと思えば、インターチェンジの入口に下関分駐隊の基地があるようで、そちらへ向かっていった。我々は当然、そのまま料金所を通って中国道に入る。

 入って間もなく、妻が
「ヘッドホンが…」
と言い出した。
 どうやら愛用のヘッドホンをどこかで落としてしまったらしい。記憶を辿ってみるとホテルで見たのが最後とのことなので、車中から電話で確認させる。フロントが預かってくれているそうで、次の小月インターチェンジで降り、引き返す。
 早く気づいたのが不幸中の幸い。渋滞も無かったので、大したロスにもならずに戻ることが出来た。
 ホテルの前に車を停め、妻に取りに行かせる。ものの5分ほどで無事に回収完了。金文字で『和』と入っている魔改造仕様で非常に人目を惹いたのもこの時はプラスに働いたようだ。

 さて。仕切り直して再出発する。ちなみに私も台湾で買ってきた洗顔フォームを忘れてたりするのでついでに聞いてもらったのだが、こちらのほうは発見されなかった。茶成分入りで大変肌に優しく、気に入ってたので残念だが、まぁ仕方ない。

 再び下関インターチェンジから中国道へ。この後一気にフェリー乗り場まで駆け抜けることにしたので、入ってすぐの王司パーキングエリアでトイレに行っておく。ここの売店で、今回入手し損ねていた東雲堂のにわかせんぺいが買えたのは大変ラッキー。

 用足しも休憩も買い物も済んで、あとはひたすら目的地に向かってひた走るのみ。

 下関ジャンクションを過ぎ、美祢の山々をくぐり抜け、山口ジャンクションから山陽道へ。
 時間に余裕があれば徳山東で降りて瀬戸内海と山陽本線に挟まれた私好みの国道188号線を走ってみようとかも算段していたのだが、出掛けのちょっとしたアクシデントで行程にちょっと不安が出たため又の機会に。

 その2つ先、玖珂インターチェンジで降り、インターチェンジのちょっと先にあるコンビニの駐車場でちょっとルート確認。ここからフェリー乗り場まで、カーナビは県道70号〜7号〜70号線のオール県道使用コース(実際は最後にちょっとだけ国道188号線を通る)を主張する。プロ野球オタでもある私としては広島東洋カープ由宇練習場の横を通ることが出来る国道437号線を使いたかったのだが、やはりここはフェリーの予約を優先し、泣く泣くカーナビの指示に従う。

 山道の県道ということで悪路に継ぐ悪路を覚悟していたのだが、思ったほどではなく、むしろインパクトに強く残ったのは道中なんどか目にしたラブホの広告看板である。
「多いな」
「こんな山間部で…どんな需要が?」
「今んところ、こんな時間から『満室』になってなかったか?」
「……見なかったことにしよう」
考えてみれば京都大阪でも高速道路のインターチェンジ付近には多いので、まぁ、山陽道の接続道路ということからするとごく自然なのかも知れないが…。玖珂インターから結構離れてからもまだ存在していたのでちょっと気になった次第である。

 それはさておき。

 勾配の急な山道をひた走ること約30分。立体交差で山陽本線の上を通り過ぎると、ようやく車窓は山から海へと転ずる。
 ここからは国道188号線。工業地帯やら柳井市民球場やらを駆け抜けて、柳井港フェリーターミナルに到着する。

 毎度のことではあるが、今回も係員の方の誘導に従い、車を止める。そして同じく毎度の流れで窓口へ。

 それなりにお金はかかるのだが、この柳井港〜松山三津浜港というショートカットがなかったらこのあと広島県をほぼ丸々横断した上にしまなみ海道を踏破して東予港までたどり着かなければならず、疲労度は比較にならない。ありがたい存在である。
 手続きを済ませると、出港時間までは温かな陽光に誘われて港内を散策する。こんなほのぼのした状況なのに段差に妻がすっこけて足を痛めるアクシデントがあったりするから油断ならない。

 捻ったり挫いたりしなかったのでまだ良かったが、一時はどうなることかと青くなった。

 足を痛めたので、散策中止。車中待機に切り替える。本来ならここでたんまりあるDVDの出番なのだろうが、思いのほか早く船内への移動が始まるようだったので、雑談でもして時間をつぶす。この時の主な話題はこれから乗る防予フェリーの船の名前。おれんじぐれいす、おれんじまーきゅりー、おれんじじゅぴたー、という3隻を見て「どうせなら『ぐれいす』じゃなくて『まーず』とか『ゔぃーなす』とか」「それだとタキシード着て仮面つけた男から出港のたびに薔薇を投げつけられる儀式とか発生しそうでいかがなものか」とか、そんな感じで。

 決して窓を開けられないこんな会話をしているうちに乗船開始。船内に停めるのもぼちぼち慣れてきて、初回よりだいぶ落ち着いて出来るようになった。

 さて。船内はカーペット席と椅子席とが存在していたが、カーペット席は子供が走り回ることが予想されたため陽当たりの良い最上階の椅子席にて仮眠をとることとする。

 唐戸市場で買い込んでおいた寿司でお腹を満たすと、後はもう眠りの世界へ。

 噂によると『ザ!鉄腕DASH!!』のDASH島として絶賛開拓中の島が、航路の近くにある由利島らしいが、その辺を探したりする余力も無く、2時間半のほとんどを睡眠に廻す。

 ぐっすり休めたおかげで、船を降りたときには快調そのものだった。

 降りてまず目指すは道後温泉…ではなく、我が思い出のうどん屋、大黒屋。

 学生時代、やはり正月に四国旅行をしたことがあるのだが、その時に松山駅の観光案内所に「正月でもやっている、美味しいお店はありませんか?」とたずねたところ、場所を丁寧に教えてもらっただけでなくオススメメニューまで教えてもらって訪れたのがこの大黒屋さん。実際に行ってみたところ、それまで蕎麦至上主義者だった私がうどんのうまさに開眼したという、個人史的エポックメーキングな店なのである。
 前回松山に来た時は諸事情あってパスする羽目になってしまったのだが、今回は妻のリクエストである「鯛飯」もばっちりメニューにあることから再訪が決まった。

 カーナビにちゃんとお店の情報が入っていたので、三津浜港から特に迷うこともなく、しかし既に夕暮れ時だったので割と緊張しつつの運転。ただ、ひとつ困ったのは店の駐車場に右折入庫となってしまったことくらい。これも、優しい松山のドライバーさんが道を譲ってくれて、事なきを得た。
 お店は混雑していたが、2名という少人数が功を奏してあまり待つ事も無く席に着く。

 注文は2人揃って鯛釜飯御膳。これなら釜飯以外にもうどんも茶碗蒸しも天ぷらも味わえるので、欲張りな我々向きである。

 ちなみに実食中はほぼ無言。それほど空腹だったわけでもないのに、ひたすら食べて食べて食べて。ようやく口を食事以外に使ったのは「ごちそうさま」の時だった。

 鯛の身の柔らかさと甘さが云々と長々書こうと思ったが、何を書いても言葉足らずになるのでやめておく。

 会計を済ませる際に、レジ前にあった冷凍釜飯セットを買って帰ろうかでかなり悩んだが、食べに来る甲斐ある味ということで断念。代わりに半生うどんを買ってしまうところは我ながら言行不一致と言うか未練たらしいと言うか。

 まぁ、割と本気でそのためだけに松山に来てしまいそうなくらいあの釜飯は見事だった。

 満ち足りたお腹を抱えて、次に向かったのは道後温泉。神話にも出てくるこの古き良き温泉は、どっしりとした和風建築で有名な本館ともうひとつ、椿の湯という共同湯も存在しており、我々はもっぱら混雑を避けてこちらを利用する。こちらも利用すれば駐車場の割引が効くし、お湯質は本館と変わりないのでゆったり入れる分こちらのが好みなのである。

 外観も内装も昭和のたたずまいを今に伝える椿の湯。湯の温度はやや熱めだが、これが気持ち良い。旅の疲れがじわじわ溶けていくようだ。割と早風呂なことが多い私でも長湯したくなる。

 自分としてはじっくりつかったつもりだったが、それでも妻はまだあがって来ていなかった。「待たせてたらどうしよう」とか思っていたのでそうならなくて何より。

 投入するのが10円玉という、これまた昭和なマッサージ機にほぐされていると後方から「お待たせ」の声がする。
 言われるほど待っていないのだが、むしろ私の方がマッサージ終了まで待たせる羽目になったのだが、ともあれ柳井港で痛めた足がだいぶ楽になったそうで、重畳。

 外に出ても寒くない!ということに心底感心しつつ。慌てて車に逃げ込まなくても良くなったため、坊っちゃん団子などを買い込んでみる。

 そう言えばここまで散々『水曜どうでしょう』ついて触れて来たが、記念すべき初っぱな企画『サイコロ1』で最初に訪れたのがこの松山道後温泉。何処かの店に写真があるとか聞いていたので探してみたが、見つけられなかった。

 日程に余裕があればここにもう1泊しても良かったくらい、松山道後はいいところだったが、さすがにもう財布も職場も許してくれない。
 道後温泉を後にして、松山道へ。道後温泉から松山インターチェンジまでが思ったより遠かったり、そのインターが工事中で入口が分かりにくかったりもしたが、乗ってしまえば東予港までは大して時間もかからない。高速道路も、それを降りてからもひたすら道が暗かったくらいはもうどうということもない。

 カーナビの案内に従って順調にフェリーターミナルに到着したのだが。窓口で支払う段になってクレジットカード不可なことを知って慌てることとなる。今回の旅行のフェリーに関する支払いは妻に一括で委任していたのだが、ここまでオールカード払いで来ていたため、ここでもいけるだろうと思っていたようで、手持ちが足らないとのこと。

 私の財布もあれこれの支払いでだいぶ軽くなっており、確保出来たのが特別室だったことも災いして2人分を引っ掻き集めても必要額には不足していた。

「よろしい!ならばコンビニだ!」

と。意を決して車を発進させる。カーナビで検索したところ、フェリーターミナルからの最寄りが1キロ程離れたところにあるローソンということが判明したため、一目散に走り出す。広い駐車場にやや慌て気味に停めてATMめがけて飛び出す。千葉銀行のキャッシュカードを入れて恐る恐るキーをタッチするとちゃんとお金が引き出せた。21世紀万歳。

 ローソンから取って返して、再びフェリーターミナルへ。もう乗船が始まっていたので、車を停め、支払い済ませたらそそくさと移動する。
 駐車スペースからキャビンへはエスカレーターが設置されており、これはむしろエレベーターよりもいいかもなぁ、なんて話をしていたら、キャビン部分にはエレベーターもエスカレーターもなく、エントランスがある3階から我々が目指す4階へは階段を上がっていかなければならなかったため足が万全ではない妻にはちょっとキツかった模様。

 ただ、部屋は良かった。私もフェリーなのにサンルームが備わっている部屋には初めて泊まる。冷蔵庫が無かったものの、乗船時間もそれほど長くないので大して問題にはならない。



 ちなみに、この船も大阪南港着が6時10分と早朝なので8時まで滞在出来る手続きも抜かり無く済ませてある。

 道後で入浴して来ているのでさすがに風呂に入る気にはならなかったが、ここまでの旅の無事を祝してレストランで夜食をつつく。この夜は酒には手を出さず、じゃこ天うどんとおでんを楽しむのみとした。

 翌日はもはや1日分として取り扱うほどのネタが無いのでこの稿にてこのまま続けさせていただくと、この夜は瀬戸内の穏やかな波と広々した寝心地の良いベッドのおかげでたっぷり熟睡し、気づけばもう大阪南港に入港した後だった。

 せっかくのサンルームなので朝風呂に入った後の水分補給をここでしてみたりする。朝の光に照らされる大型船とコンテナに満ち溢れた商工業港湾の眺めは人を選ぶとは思うが、工業地帯萌えや船オタならば一度は是非お試しいただきたいところである。

 船内放送に促され、荷物を抱えて車へと移動する。南港から我が家までの道のりは最早『旅路』という言葉が似つかわしくない。
 なので、この旅行記は大阪南港を出発する時に口にした、私のいつもの言葉で締めくくらせていただこう。

「さぁ、次はどこへ行こうか」

拍手[0回]


2013年 年始旅行記(3日目)

 1月4日。仕事始めの日だが、休みをいただいているので、職場から1000キロも離れたこの場所で目覚めることが出来ている。ありがたいことである。

 そしてやっぱりいつもどおり6時に起床してしまう。しかし、この日は悲しみを憶えたりはしない。寝坊すると『朝飯か朝風呂か』という身を裂かれるような二者択一を迫られる羽目になるからだ。

 妻はまだ寝ていたので、起こさぬよう注意して風呂仕度を整え、部屋を出る。

 風呂は空いていた。宿自体はほぼ満室に近い状態だったはずなので、みなさんまだゆっくりお休み中な模様。おかげで東雲から日の出までの時間を大浴場でのんびりと過ごさせてもらえた。

 ほっこりして部屋に戻る。まだ妻は起きてこないので、起こさぬように…と思ったがそろそろ起こさないとそれこそ『朝飯か朝風呂か』を選ばないといけなくなる。意を決して目を覚まさせる。この『意を決して』と言うのはレトリックでもなんでもない。寝起きの悪い妻を起こすにはそれなりの覚悟が必要なのである。

 この日は幸いにしておむずかりが発生することも無く、時短バージョンで朝風呂へ向かう。その間、私は職場への土産物を買いに売店へ。
 鹿児島土産数々有れど、職場での好評度で言うとかるかんがこれまでトップであった。だもので今回もそうしようと思っていたのだが。

 売店にあった『指宿のたまて箱 さつまの焼きドーナツ』に目を惹かれた。特急『指宿のたまて箱』号には前回の指宿旅行で乗ったのだが、こんな関連商品があるとは知らなかった。
 基本的に自分が食べたことのないものは他人様の土産にしないのだが、今回鉄道を使わない旅行をしていることに鉄オタとして忸怩たるものを感じていたこともあり、土産として購入決定。幸いにして職場では好評を博したので次回以降もこれにしようと思う。

 事のついでと自分用に地元頴娃茶のペットボトルなども購入し部屋に戻った。さて。無事に土産が手に入ったことでもあるし、と荷造りをしていると妻が戻って来た。

 若干せわしないが、そのまま朝食をとるべく会場へ向かった。ちょうど込み合う直前に滑り込めたのは実に幸いだった。海が見える場所に席を取り、バイキング形式で並べられた各種料理にアタックをかける。
 いつもは和洋折衷という感じで無造作に美味そうなものをチョイスしていたのだが、今年は期せずして和オンリーに。特に今回は味噌汁が異様に美味く感じて、これのみおかわりをしてしまったほど。
 また、ここでの朝食でお馴染みのことなのだが、売店販売商品の試食という形で各テーブルにかつおチリメンふりかけが置いてあり、これがご飯に大変よく合う。毎回買って帰りたくなるのだが、ここに来る楽しみのひとつということで敢えて買って帰らないことにしている。

 妻は妻でいつも生野菜たっぷりにパンの組み合わせなのだが、今回は粥に惹かれたようで、おかずもそれに合うものものばかりを選んでいた。

 ともあれ、家に居る時はこうやってふたりで朝食をとる機会もあまり無いので、こうやって朝から食卓を囲んであれこれと話すのは私の旅の楽しみのひとつにもなっている。

 とりとめのない話題に今日の予定のことも混ぜておく。この日は指宿から一気に下関まで駆け上る行程なので、途中の休憩ポイントのみならず、渋滞しやすいエリアについても話しておき、事前に腹をくくっておいてもらう。

 食べ終えて部屋に戻ると、もう9時を回っていた。しばし食休みをとってから身仕度と荷造りをし、チェックアウトへ。居心地の良いところなので、帰りのフェリーが新門司港発で予約できていればもう1泊したかったところだが…。ままならないものである。

 さて。チェックアウトして真っ先に向かったのは100mと離れていない砂むし会館『砂楽』という公共の砂むし施設である。「またか!」と思われるだろうが、「また」なのである。

 誘導係の方の指示に従って車を駐車場へ止め、いざ砂楽へ。

 にしても。今まで誘導係の姿を見たことが無かったのだが、今回は正月で書き入れ時だからなのだろうか。

 2階で受付を済ませ、更衣室で着替えを済ませ、浴衣姿で外へ向かうと従業員の方にショールを勧められる。これも前来た時には無かったサービスだったと記憶している。色々充実してくるのは年に1回しか来れない身ながら嬉しいものだ。
 しかし、砂蒸しの醍醐味のひとつとして向かう時の肌寒さと、終えて戻る時の寒さを寄せ付けない体温の高さを比べる楽しみがあるので低調にお断りする。

 砂むし場は砂浜にあるのだが、冬場は寒さ対策で囲いに被われており、残念ながら海を眺めながら蒸されることは出来ない。まぁ、眼鏡を外しているのでもし囲いが無くてもあんまり恩恵にはあずかれないのだが。

 まぁ、なんだかんだ言っても蒸される威力が全てである。気持ちよさにうとうととしたりして、存分に堪能する。

 そして、終わったあとの温泉がまた最適のコンボとしてヒットする。

 さっぱりして2階の休憩ホールへ。妻を待つ間に水分補給しつつ特産品コーナーを一回りすると、ここの砂を使った『砂蒸し気分』という健康グッズを発見。説明を読むと『指宿海岸の砂から不純物を取り除き、もういちど温泉水に漬け込み、乾燥させて、じょうぶな保温パックに封入しています。』とのこと。なんとも手間ひまのかかった話だ。
 もしコレを使って自宅でも砂むしに少しでも近い効果が得られるのであれば、ということで、妻と合流後合議の上でお試しとして腰用を購入。

 帰宅後使用したところ血行不良に効果大だったので、次回訪問時に追加購入することが決定した。

 さてと時計を見れば既に11時を回っていた。ここで昼食をとって出発するにはいささかまだ早いが、かと言って鹿児島市内のどこかで食べてから北上するルートだと夕食が危うくなる。
 九州道のサービスエリアのどこかで食べようという結論に到り、外へ出る。ここでとっとと出発すればいいのだろうが、向かいにある酒屋であれこれと買い物をしてしまうあたりが未練たらしい。
 最初は道中に飲むための飲み物を買うだけのはずだったのだが、我々2人とも酒は弱いが酒のつまみになるような食べものは大好きなので、山川漬とか豚みその缶詰とか色々買い込んでしまう。特に豚みその缶詰は指宿市内にある県立山川高校の生徒さん達が実習で作っているものだとのことで価格帯が一般のものよりも安く、2つ買う。

 思いのほか時間がかかってしまった買い物をようやく済ませて駐車場へ戻り、いよいよ指宿ともお別れである。

 スタートの音楽はやっぱり『1/6の夢旅人 2002』。イントロ部分を聞くだけで心が弾み、ワクワクが止まらなくなる。

 今日の行程は9割がたが来た道を戻ることになるのだが、それでもなおこういう気持ちになれるのは何故だろう。実際は来た道を戻る+αで、そのおまけの部分のハードルが意外に高いからか。

 この日も鹿児島の空はよく晴れていた。ただそれだけのことで、来たときとは道の印象がまったく違った。シラス台地特有の畑作オンリーな田園風景も、日暮れ後の往路と明るい空の下の現在とでは、まるで別物だ。昨夜は暗い&狭い道&未知という三大要素もあって緊張感溢れる光景だったのに、今はちょっとしたリゾート気分になっている。

 鹿児島の市街地まで出ず、指宿スカイラインという有料道路に谷山インターチェンジから乗る。この道路、名前に指宿と付いてはいるが南九州市の頴娃までしか伸びていないためこういう使用方法になってしまう。

 それでも、これがあるおかげで鹿児島の市街地を迂回して九州道に乗ることが出来る。

 途中の山田料金所がETC設備を持っていないため、駐車場の出口のようにお金を払って通過。このとき、窓を開けるに際して流れている音楽を止めたりする配慮に抜かりは無い。

 鹿児島インターチェンジからは九州道。昨日は薩摩吉田で降りてしまったので、コレで晴れて全線制覇出来る。………こういう発想はやっぱり鉄オタだからなのだろうか。鉄道であれば何々線全線乗り潰し、なんていう話はよくあるのだが、車に関しては何々道全線制覇云々ということを言う人を寡聞にして聞いたことが無い。

 まぁ、こういう時のために『業』と書いてカルマと読む便利な言葉がある。この便利さをフル活用して心の棚に片付けてしまおう。

 新年早々訳の分からない話題で盛り上がってしまう車中。今年も我が家はこれが平常運転な模様。

 そういう我々なので、昨日も立ち寄った緑川パーキングエリアをこの日の昼食場所として選定してしまうのもむべなるかな。

 時間的にちょうど良かったとか、ここで好物の日奈久ちくわが買える、とか動機は他にも色々あるのだが。ちなみに、手前の宮原サービスエリアでもその辺はクリアできるレベルだったことはここだけの話だ。

 ということで、緑川パーキングエリアにて熊本ラーメンをいただく。

 食べて思うのは、こういう場所でもちゃんと美味しいものがいただける有難味。今年度になってからお仕事のアレコレでサービスエリアやパーキングエリアで昼食をとる機会が増えたのだが、どこに行っても外したことがない。

 食べ終えて、売店で日奈久ちくわを買い込む。下り線には置いてなかったのにこちらには割と種類豊富に揃っていたので、ひととおり比較検討。結果、一番たくさん入っている10本入りに決定。

 車のテールゲートを開けて、後部座席のさらに後ろに、隠し金庫のように備わっているカーゴフロアボックスにちくわをしまう。

 食後休憩もバッチリ取ってあとは一路下関を目指して北上するのみ。しかし。ここに来て新たな問題が持ち上がった。

 渋滞である。

 熊本県を抜けるまでは割と好調だったのだが、久留米を過ぎるあたりから唐突に流れが悪化。前方の長い長い車列が視界に入ったためハザードをつけつつゆっくりブレーキを踏む。

 妻に携帯の道路交通情報サイトで確認してもらうと、渋滞距離は10km。しかもどうやら事故渋滞の模様。このあたりがもともと渋滞しやすい区間であることは事前に調べがついていたのだが、事故か…。

 渋滞が無ければ九州道名物とも言える基山パーキングエリアに立ち寄ってみてもよかったのだが、この状況下ではいかんともしがたく、あえなく断念。

「まだ外が明るい時間帯だからマシだけど、慣れない土地で、暗くなってからの渋滞はしんどいからなぁ」

等と言っていたら、うっかりフラグを立ててしまったようで今度は日が沈みかけたあたりでまた渋滞につかまってしまう。ちなみに今度も事故渋滞で、現場を通り過ぎた時に確認出来た状況を見るかぎりでは、どちらも側壁への自損だった。この辺は以て他山の石としたい。

 福岡県内だけでかなり消耗したが、それを抜けた先にはご褒美が待っていた。門司と下関の間にかかる関門橋。正確にはこの橋とその周辺は独立した高速道路で関門自動車道というらしいが、その橋がまばゆい光に包まれていた。
「すげぇ!」
「ライトアップ?」
全長1068mもある光りの橋を自らの運転で渡るのはちょっとした感動があった。
「頑張って運転して来た甲斐があったわ」
ひとりで運転したので達成感も大きい。これは口に出すと運転していない妻が気にするので心の中でひっそりつぶやくことにしたが。
 代わりに
「運転するのでいっぱいいっぱいだから、車窓を見といて」
と依頼する。大型船舶が航行する関門海峡に架かっているため、桁下から海面まではなんと61mもある。門司も下関も一望のもとにひろがっており、かなり見応えがあったことと思われる。
 橋を渡りきると、水曜どうでしょう『サイコロ2』で白眉の名場面の舞台壇ノ浦パーキングエリアに通りかかるが、ここは下り線のみ利用が出来るので、泣く泣く立ち寄り断念。
 無念を抱えつつ下関インターチェンジで高速を降り、本日の宿であるドーミーインプレミアム下関へと向かった。
 ぶっちゃけると、壇ノ浦パーキングエリアがあるところにインターチェンジがあればそのまま国道9号線に出られて至便だったのだが、そこから1キロ以上北上したため、県道57号線から市街地へ向かうことになる。カーナビがあるとは言え初めての道を真っ暗な中走るのでちょっとばかり手間取ったり戸惑ったりしつつも、どうにかこうにか無事にたどりつけたのは僥倖だった。
 ホテルの人の丁寧な誘導で立体機械式駐車場にも無事入庫完了。

 チェックインを済ませ、部屋へ。今回ツインが取れなかったので2部屋に分かれてしまったが、温泉付きのここに投宿できるだけでも良しとしたい。

 部屋に荷物を置いて、夕食を取るべく外へ。
 下関には春帆楼を初めふぐ料理の名店が数々あるのだが、諸事情によりふぐは翌朝に廻して門司港へと向かった。今回の旅行で初めて電車を利用して。
 わずかな距離でも電車に乗れることにウキウキしながら下関駅で発車を待っていると、観光列車みすゞ潮騒号が入線してくる幸運に恵まれる。
 デジカメを抱えてホームに降り、短い時間ながらも巡って来た撮影タイムにほっこりする。



 つい小一時間ほど前に渡って来た関門海峡をトンネルで潜り、下関駅から隣の門司駅へ。そこで乗り換えて2駅の門司港駅で下車。

 門司港レトロ地区。ここにある門司港地ビール工房。夕食はここで食べる。そして勿論地ビール工房なので飲みもする。

 普段滅多にお酒を飲まないくせに、旅行中は毎日かっくらっているのはどうしたものか。

 しばらく来ていない間に『門司港驛ビール』なるものが出来ていた。国の重要文化財である門司港駅舎の工事応援企画と銘打たれており、1も2もなく注文決定。

 あとはつまみだが、いつもながらアレも食べたいコレも食べたいで夫婦間討議を重ねる。その結果、小フグの唐揚げ、ごちそうサラダ、窯焼きピッツァのサルシッチャ、ジャーマンソーセージ盛り合わせ、牛肉の赤ワイン煮込みを選択。そして締めに食べる門司港名物の焼きカレーも時間がかかるため先に頼んでおく。

 うやうやしく運ばれて来たグラスを受け取り、門司港レトロ地区の夜景を楽しみながら乾杯。
 なんというか、我ながら似合わないことをしているな、という自覚はあったが、せっかくなので次々に運ばれてくる料理と合わせて堪能しておいた。




 いずれの皿も美味だったが、特筆すべきは牛肉のワイン煮である。どんな料理家と言えば、その名のとおり牛肉をワインベースのソースでじっくり煮込んだ料理で、『もやしもん』でマリーが作っていたものとほぼ同じものと思っていただいて構わないだろう。

 口の中でとろける牛肉の、その魅力を最大限に引き出すソースの味。美味いとしか表現できない己の語彙の乏しさが恨めしい。機会があれば一度食べていただきたい、としか言えない。

 調子に乗って2杯目のビールを頼み、間もなく運ばれて来た焼きカレーと共に味わう口福の時。この幸せは筆舌に尽くし難い。

 全てを綺麗に平らげて、大満足で店を出る。

 ビール2杯ながらすっかり酔っぱらっていたため門司駅での乗り換えが面倒になり、下関唐戸桟橋行きの船に乗って戻る。

拍手[0回]