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帰国日。毎度のことながら自由時間となる午前中の使い方に迷うのが寂しく難しく、そして楽しい。

 予定を決めるにあたっていつもネックになるのが荷物の預け先。パズルゲームの苦手な私がどうにかこうにか苦心して詰め込んだ茶葉やらドライフルーツやら菓子やらで20キロオーバーになっているスーツケースは持ったままどこかに行くには大きすぎ、重すぎる。普通のコインロッカーでは手に負えない。

 台北市内、コインロッカーの数は増えているものの、日本の大都市と比べるとまだまだ少ない。当てにして行ったはいいがフルブックでした、となれば貴重な時間を無駄にしてしまう。

 そこで確実さを優先するため、宿から程近いところにある松山空港で預けることにした。ここならコインロッカーが埋まっていても手荷物預かり所があるのでなんとかなる。

 というわけで、チェックアウトするとそのままホテルの前に停まっていたタクシーで松山空港へ。

 数年前まで台湾国内専用空港だったが、最近国際化が進んでおり羽田便は定期で飛んでいる。金を惜しまず時間を惜しむが旅行のモットー(乗り鉄旅を除く)なので関西発着便があればここから出入国したいところなのだが。

 残念ながらこういう使い方しかできないのである。
 幸い大型ロッカーに空きがあり、そこに二人分の荷物をぶち込んで身軽になった。

 この日、残り時間の活用先に選んだのは行義路温泉街の川湯温泉。
 当初、この行き先はすんなり決定されたのだが。決定後、私がある情報を入手してしまったことでいささか話がこじれてしまった。

 単刀直入に言えば、『ガールズアンドパンツァー 劇場版』(台湾版のタイトル『劇場版 少女與戰車』)を上映しているのを発見してしまったのである。しかも上映しているのはホテルから1キロと離れていない信義威秀影城という映画館。
 しかもどうやら4DX版らしい。観たい。これは観たい。
 散々ごねてどうにかこうにか妻から「じゃあ一人で行けば」と諦めの許諾を獲得したのだが、よくよく調べてみると上映開始時間が昼から。2時間の映画なので、これを観てから高速バスに乗り空港に駆けつけるとなるとちょっとリスキー。それを乗り越えるだけの値打ちがあることは重々承知だったが、さすがに飛行機に乗り遅れるのだけはシャレにならない。
 結果、泣く泣く諦めて当初の予定どおり温泉行きと相成った次第である。

 松山空港からはMRTを使うと大回りになるのでタクシーで直行する。

 名前と住所を書いたメモを運ちゃんに渡すと、小さく頷き車を発進させた。基隆河を渡り、士林夜市の横を過ぎ、高級住宅街で知られる天母を通り抜けると見覚えのある交差点に出た。
 ここからは急傾斜の坂を登って5分ほど。川湯温泉に到着する。料金は300元弱だったように記憶している。1000円かからずたどり着けたわけで、ショートカット作戦としては申し分ない。

 平日は入浴のみでオッケーなので、受付で入湯券を購入し、中へ。日本のように番台でお金払って中へ入るシステムではないのは、防犯対策なのかな、とちょっと穿って考えてみたりする。

 平日の昼間なのでさすがに空いていて、数名の老人が命の洗濯をしている程度だ。
 お邪魔します、と中へ進みサッと身体を洗って湯船につかる。良い。
 昼間なので外の様子もよく分かる。壁の向こうは川が流れており、この川湯温泉という名前に初めて合点が行く。何しろここに来るときはいつも夜なので、眺めもなにもなく、ひたすらお湯を楽しむのみであった。
 何しろ暑いので敬遠していたのだが、川の流れを見ながら入れる昼風呂もなかなかに良いものだ。

 のぼせない程度に湯と景色を楽しんで、あがる。
 
 風呂上がりにバタバタするのは好きではないのだが、ぼちぼち空港に戻らねばならない。バスの時間を調べてみると、もうすぐにもやって来るようなのでとりあえずバスで駅まで出て、そこでタクシーを拾おうということになる。
 長い階段と坂をえっちらおっちら上がり、バス停にたどり着くとバスはすぐやってきた。
 椅子に座って車窓に目を向ければ、平日の昼間だというのに我々のような温泉好きで一帯はなかなか賑わっている。ふと車内を見渡せば、我々以外にも明らかに風呂あがりという人は少なくない。

 これならば「昼は客が来ないので開けるのやめます」ということにもならないだろうし、昼風呂を帰国日の楽しみ方とするのは継続的にやれそうだ。

 右に左に揺られながら山を下り、石牌駅で下車。タクシーで松山空港へ。荷物を拾い上げて桃園空港行きのバスに乗り込む。

 2タミでバスを降りてカウンターへ。時間が早かったおかげか行列もなくスムーズに手続き完了。これまた混雑を避けて早めに手荷物検査と出国審査をクリア。
 4階へあがってまずはマッサージを受ける。国の玄関口だけあって、ここの腕前はまさにトップクラス。このあと関空から自宅まで1時間半のドライブをしなければならない私にとっては強力なアシストとなった。
 たっぷり1時間ほぐされ、増した食欲を抱えて台湾料理の名店『青葉』へ。旅立ちを前にして、台湾の名残を惜しむ台湾料理の昼食。

 台北での滞在時間を短めに切り詰めて早めに空港入りしたのは、このふたつをゆっくり楽しむためと言っても過言ではない。

 これでやるべきことは全てやりきった感がある。あとは出発までのロスタイムをおまけとして味わうのみ…なのだが。出発案内の掲示板を見ると軒並み遅れている。現在桃園空港は3つめのターミナルを建設中で、その余波により遅延することはしょっちゅうなのだが。この日も例に漏れず1時間の遅れが見込まれるとのこと。
 とはいえこれを最初っから織り込み済みにすることは国際線の飛行機なので難しい。

 やむなく、空いている喫茶店を探してそこを拠点とし、交代で買い物に出た。と言っても目当てがあってのことではないので、とりたてての成果はなかった。
 そうこうするうちに搭乗ゲートが開放されたのでそちらに拠点を移し、ひたすら待つ。

 楽しかった旅を惜しむに惜しめないこの微妙な時間を毎年恨めしく感じるのだが、あまりにも定番化しすぎて「あ、これでもう旅も終わりなんだな」と心身ともに諦める風物詩となってしまった。
 そのことを苦く噛み締めていうるうち、空の向こうから機影がゆっくりと近づいてきた。

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今さらですが非公開に変更
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